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革命軍『銀色の女神』{済}

 ここは、ブレグラン国の首都アザレア。

 そして、ここはアザレアの街の北西部にあるスラム街。

 このスラム街は、昔は治安や衛生面など最悪な状態で、強盗、殺人、病気、飢えなどがあたり前の出来事だった。

 その頃、国では間もなくおこなわれる新王の即位式があるため、各国の大使を招く準備をしていた。そう、国の権威を示すために盛大な即位式を開こうとしていたのだ。

 だがその即位式の成功には、どうしてもスラム街の存在が邪魔だった。

 そのため国は、間もなく開かれる即位式を前に、スラム街の住民の一斉掃討作戦を展開した。

 理不尽にも若者は国家反逆罪として汚名をきせられ、老人や女、子供までもが一斉の容赦なくその代償となってしまった。

 だがある日、このスラム街に英雄と称えられる者が現れる。

 その者はこのスラム街で育ち年を重ねるにつれ、スラムの現状や国の方針に絶望し一度は国を捨てた。

 そして色々な国をみてまわり自分が生まれ育ったスラム街が、いかに理不尽な理由で国から見放されているのかを理解する。

 その者は後にこのスラム街を統括し、治安をよくしていき衛生面も徹底した。

 そして、今もなお国と戦い続けている。

 その者の名は、ディオ=シュテルと言い。父親のハックは武器職人として働き、母親のレイが内職をし家計を助けていた。

 ディオがこのスラム街を出ていったあと父親のハックは、国のあまりにも理不尽な振るまいに耐えきれなくなり、仲間と革命軍を結成し国と戦い続けた。

 だがハックは、国の圧倒的な勢力の前に、志半ばにして傷つき倒れる。

 ディオがこの街にもどってきた時には、その戦いで既にハックは死んでいて、レイもその戦いに巻き込まれ大怪我を負い寝たきりになっていた。

 そしてディオは、なぜ自分はその場にいなかったのかと後悔した。その後、父親の意思を継ぎ、このスラム街のために立ちあがり国と対立する。

 そして、外で学んだあらゆる経験を活かし、以前よりも治安をよくし衛生面にも力を入れた。

 現在、ディオは六十歳になり、息子のルシルと娘のマリスがその意思を継いで国と戦い続けている。

 そして、その革命軍の名は『銀色の女神(シルバーゴッデス)』と言う。


 ここは、ディオの屋敷兼、革命軍のアジト。

 この屋敷兼、革命軍のアジトはスラム街の北西側にある。

 その建物のまわりには、屋敷を守るかのように無人の家々がたち並んでいる。

 屋敷の壁は綺麗とは言えず、数ヶ所すこし崩れかけていた。

 だが屋敷の中はひろく綺麗である。


 ルシルとマリスは、革命軍のメンバーと広間で話をしていた。

「みんな聞いて欲しい。耳寄りな情報が入ってきた」


 この青年は、ルシル=シュテル。現在の革命軍のリーダーであり、ディオの息子だ。

 年齢は二十五歳。父親のディオに似て頭の回転がはやく、物事を瞬時に理解し、すぐ行動に移すことができる。

 物を作ることが得意で、アイデアが浮かぶとすぐに設計図を描き始める。

 そして、徹夜してまで没頭し、完成したものが納得いくものでないと納得いくまで作りあげる。

 髪は細目の茶髪で、前髪は目が隠れるくらいの長さだ。だが母親ゆずりの癖毛が気にいらず、普段から愛用の黒のゴーグルで前髪をあげている。

 細く切長の目でみつめられた女性は、その場で釘づけになるぐらいの美形だ。だが、本人はそれに気づかないくらいの発明オタクである。

 身長は180ぐらいで、どちらかといえば前線で戦うよりも裏で作戦をねり頭をつかうのが得意だ。


「なになに?ルシル。耳寄りな情報って?」


 この女性はマリス=シュテル。ディオの娘で、主に革命軍の前線で指揮をとっている。

 年齢は二十二歳。ルシルとはちがい活発で行動派だ。

 何事に対してもめげず前進し、悩みがあるのか無いのか分からないくらいに明るい。

 母親ゆずりの銀色の髪で、風になびくミディアムヘアを左側だけ前髪と一緒にうえの方で束ねている。そして、前髪は右目がかるくかかる程度の長さだ。

 二重まぶたで、大きく若干つり目。普段は可愛い雰囲気なのだが、いざ前線にたつと父親に似てその眼光は鋭く、男と見間違うくらいにつよい。

 そして、ルシルが戦場の司令塔であるなら、マリスは戦場を駆け巡る銀色の戦女神といっても過言ではない。


 マリスがそう言うと、メンバー全員が身を乗りだしルシルの話に聞き耳をたてる。

「きのう、四天王のルナソルがもどってきた。それに、大勢の怪我人が城に運ばれていた」

「ふぁ〜、ん?ルシル。アイツ等、確かドラゴナードの討伐に向かったはずだよな?」


 この、いかにも眠そうにしている青年はクロフ=ロウ。革命軍のエースガンマンである。

 二丁の銃を瞬時にぬき、素早く的確に的を射ぬくほどの腕だ。

 そして戦場ではその状況にあわせ、あらゆる銃をつかいこなすほどの銃の使い手である。

 深紅の髪は腰まで長く、下の方でかるく縛っている。前髪は短めで癖毛なため、バラバラで纏まりがない。

 年齢は二十八歳。ルシルとマリスと同じくスラム街で育ち、二人のよき理解者でもある。

 普段は、眠そうな顔をしていてダラダラしている。

 だが、いざ前線に立つとその動きは俊敏で鷹が獲物をとらえるが如く鋭く、いついかなる時も冷静に物事をとらえることができる。

 ルシルとマリスはたまに冷静さを失う時があり、そんな時であってもクルフが瞬時に対処しカバーする。


「ああ、そのはずなんだけど。それと今日は、あのラザリオが早朝に早馬を走らせてもどってきたんだ」

「ちょっと待って?ラザリオがもどってきたってことは……。それって!」

「きのうはルナソル。今日は、ラザリオが朝はやく早馬でもどってきた。ってことは、まさかドラゴナードの討伐に失敗したのか?」

 それを聞きクロフは、眠たい目をこすりながら聞き返した。

「おそらく、そうだと思う。それで気になって城の様子を探りにいったら、ちょうど兵士たちが話をしてたんだけど」

 ルシルはその時、兵士たちが話していたことを思い出している。

「きのう大怪我で運ばれた者の中に、四天王のネフロスとラゴスがいたらしい」

「ねぇ、それは本当なの?あのネフロスとラゴスが、大怪我してもどってくるなんて信じられないんだけど」

「間違いない。俺はそう聞いた」

「……もし、それがホントなら誰がやった?」

 その話を聞きクロフは、完全に目を覚まし真剣な面持ちになり、さらに聞き返した。

「兵士たちの話だと、ルドバ付近の森で凍らされていたって言ってた」

「凍らされていた……。それってまさか!そんなことができるとしたら、ルトルシニアの四天王、魔氷剣のガディスしかいないんじゃ?」

「多分、そうだと思う。兵士たちも、そう言ってたしな」

「……なんかどうも、しっくりこねぇな。ガディス1人に、あの2人がやられたってのか?そうじゃねぇとすれば、他にも誰かいたってことも考えられるよな」

 クロフはそう言い、思考を巡らせている。

「ああ、そうだな。兵士たちの話だと、やはりルナソルとラザリオもそう思ったらしい。そのことで2人は、さっきルドバ付近の森に向かったみたいだ」

「なるほどな。だが、何でそこにガディスがいた?それにアイツ等は、ドラゴナードの討伐に向かったはずだ!なのに、ガディスに凍らされた。って、どういう事だ?」

 クロフは、不思議に思いルシルに問いかける。

「クロフの言う通り。それだと、どう考えても納得がいかないのよね」

 そう言いマリスは、首を傾げ考え始めた。

「確かにな。でもまちがいなく、ガディスがネフロスとラゴスを凍らせた。って、ことなんだと思うんだけど」

 そしてルシル達は、しばらくそのことを議論しながら話し合っていた。

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