第23話 僕が守る
夜明けの光に目が覚めると、隣には僕が愛を自覚したミーアがシーツ1枚に包まり静かに寝息を立てていた。妖艶で可愛く、それでいて無邪気なミーアに僕はノックアウトされてしまった。これがお義母さんが伝えた成果なのだろう。僕だけのため、そう思うと未だに顔が熱くなるのを感じる。
この可愛らしい寝顔をずっと見ていたい気持ちはあったけれど、ミーアの頬にキスを落として、ベッドから出た。身支度を整え今後のことを考える。聖都から騎士団が到着するのはおそらくは3日後、なんとなくではあるけれど、スタンピードには間に合わない気がする。覚悟を決める必要があるのかもしれない。
ベッドからミーアが起きだした気配がする。僕はお茶を入れてリビングで待つことにした。
「おはよう、ミーア」
「おはよう、フェイ」
僕は、少し気だるげなミーアをイスに座らせ、お茶をすすめる。そして顔を見合わせ
「すごかった。あれが先人の智慧」
ミーアは、僕の言葉に耳まで真っ赤になりながら
「そ、そんな言い方しないで。あたしもあんなになるなんて思わなかったもの」
「ミーアの新しい素顔が見られて僕は嬉しかったけどな」
「そ、それより。朝ごはん作るね」
そう言って真っ赤な顔のままミーアはキッチンに行ってしまった。
こんな優しく温かい生活を守りたい。僕はあらためてそう思った。
朝食後、昨日回収した矢を選別して折れたり歪んだりしている矢から矢じりを取り外し、村の鍛冶場で追加で作ってもらえた矢じりと合わせて矢を補充していく。全部使い切る余裕は逆に無いかもしれないけれど、足りなくなるよりずっといい。朝食の後片付けを終わらせたミーアも作業を手伝ってくれ始めた。
「こんなに矢を消費するとは思わなかったな。まあ、考えてみれば当たり前なんだけどさ」
「そうね。あたしたち狩人はそんなに大量に狩ることって普通はないものね」
「まだ大きな群れが襲ってきているってだけの状態だから弓でなんとかなってるけど、スタンピードが起きたら、弓では押し切れないと思う」
「うん、そうね」
ミーアもなんとなく予想はしているようだ。
「だから、スタンピードに騎士団が間に合わなかったら、ミーア、君に僕の背中を任せる。最後まで一緒に戦ってくれるかい」
そう言うとミーアは、何かホッとした顔で嬉しそうに答えてくれた。
「うん、絶対離れない。実を言うとあたしだけ逃げろって言われるんじゃないかって、そんな悲しいこと言われたらどう言って拒否しようかって考えてた」
「そんなこと言うわけ無いだろ。やっと本当の意味で一緒になれたのに別でなんて、それに僕のいないところでミーアが魔獣に襲われるなんて嫌だからね。僕が生きている限りミーアは僕が守る。その立場は誰にも渡さない」