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第17話 救援依頼

 騒がしくも楽しく幸せを感じた聖都への新婚旅行。その帰り道、僕とミーアは困惑していた。しかし、困惑しながらも続けざまに矢を射る。

 魔獣の群れを退け、探知によりとりあえずの安全を確認した僕たちは一息いれる。でも悪い予感が胸を去らない。
「昼間から、こんなに魔獣が街道に出るって、何か変だな」
「そうね、夜ならまだしもこんな時間に群れで出るなんて」
僕は少しだけ考えて
「休憩なしで一気に村まで帰ろう。村が心配だ」
「はい、フェイについていきます」
武装と最低限の荷物以外はすべて魔法の鞄に仕舞いこみ、僕たちは走った。歩けば普通の人なら3日、僕たちでも2日掛けて移動する距離を狩人の祝福を頼みに途中で襲ってくる魔獣を駆除しながら1日で駆け抜ける。
 何度か魔獣の群れが襲ってきたのだろう、村をぐるりと取り囲む柵の一部が壊れ、畑にも被害が出ている。それでも村は無事だった。まだ人は誰も傷ついていないようだ。僕とミーアはそのまま村長の家に向かった。
「村長。ただいま帰りました」
「おお、フェイ、ミーア戻ったか」
「状況を教えてください」
挨拶もそこそこに僕は村長に尋ねる。
「お前たちが、聖都に向かった8日後に最初の魔獣の襲撃があった。その時は襲ってきた群れも小さく特に問題なく退治できたのだが、さらに2日後数倍の魔獣が襲ってきた。その時もまだ低位の魔獣ばかりだったのでな、村の外の畑は多少荒らされたが撃退できた。その日から群れの大小はあれ毎日魔獣が襲ってくるようになった。今日は中層の魔獣もいたのでな、どうにか撃退こそしたものの、ついに一部柵を壊されてしまったのだよ」
村長も明確には言わないけれど、これはスタンピードの兆候なので
「聖都に応援依頼は」
僕の言葉に村長が力なく首を振った。
「今のままだと応援依頼に人を割けない。村の防衛力が不足しすぎる」
「今は僕もミーアもいます。自惚れているわけではないですが、魔獣相手なら僕とミーアのコンビならよほどの相手でも引けはとりません。むしろ今のうちに聖都に連絡を、少なくとも僕らの手に負えなくなる前に」
僕の言葉に村長も少し考え
「では誰に行かせるか。急がねばならんから足の速さがいる」
それに僕が加える
「聖都までの街道途中に低位ではありましたけど魔獣が出てましたので多少の戦闘力は必要です。少なくとも自分が離脱できるまで相手を足止めできる程度には」
「となると、ティアドか」
ミーアのお父さん、村で2番目の狩人。ティアドさんならまず間違いないだろう。
「お父さんを」
村長の人選にミーアが少し不安そうな顔をした。街道の状態からして単独で聖都まで往復できるのは村ではティアドさんか僕たちだけ。そして僕はこの状態でミーアのそばから離れるつもりはない。それにティアドさんなら街道を聖都まで往復というだけなら十分な実力がある。
「ティアドさんなら大丈夫。無事に聖都まで行ってくれるよ。僕たちはティアドさんが援軍を連れてくるまでなんとしても村を守るんだ。そしてそれができるのは僕たちだけ。ミーアなら分かってくれるよね」
そこまで話したところで僕たちは一度家に戻って荷物を置いて来ることにした。その上で帰村の挨拶を兼ねてティアドさんに声を掛けに行く。
「ただいまあ」
ミーアが元気に声を掛けると、ミーアの母親ラリサさんが迎えてくれた
「あら、お帰りなさい。聖都はどうだった。フェイにいっぱい甘えてきたのかしら」
ラリサさんの早速の揶揄いにミーアが顔を赤くしている。
「お義母さん、ただいま」
僕も照れながらお義母さんと呼んでみた。
「フェイおかえりなさい。さっそくお義母さんて呼んでくれて嬉しいわ」
僕に寄り添うミーアを嬉しそうにみながらラリサさんが続ける。
「二人とも玄関で立ち話もなんだし、入って入って」
ラリサさんの言葉に甘えて僕たちは、リビングでくつろがせてもらう。皮ソファーに僕にミーアが寄り添ってすわると、
「で、聖都はどうだったの」
ラリサさんは、お茶を出してくれ、優しい顔でたずねてきた。それに対してミーアが嬉しそうに幸せそうにこの10日程の新婚旅行についての思い出話を話す。僕としてはとても気恥ずかしい思いをしたけれど、二人ともうれしそうだし、何しろミーアが幸せそうに話すのを見て、このくらいの気恥ずかしさは何でもないなと感じていた。優しい時間をしばし過ごし、話を変える
「ところでお義父さんは、どちらに」
「今は、矢の補給をするっていって作業部屋にこもっているところよ」
「すみませんが、呼んでもらえますか」
「わかった、ちょっと待っててね」
ミーアの手を握りながら待っていると
「やあ、二人ともおかえり、聖都はどうだったね」
「ただいま。お義父さん。色々と珍しい体験ができましたよ」
「お父さん、ただいま」
「うん、フェイにお義父さんと呼ばれるのって気恥ずかしいけれど嬉しいね」
そして僕とミーアの手を見て
「それにずっと仲良くなったようで何よりだ。それで何か話があるのかい」
僕たちは村長と打ち合わせた内容を話し、予定を詰めていった。明日の朝早くに出てできれば夕方には聖都でギルドに報告、ギルド経由で救援依頼をすることになった。

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