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地下大迷宮の見回り3

 扉が開いた先は、地上の神殿風の建物を思わせる荘厳な造りになっていた。
 壁や天井には窓が取り付けられており、色の付いたガラスがのようなものが嵌め込まれている。そこから現在地が地下ではなく何処かの地上の建物の中に居ると勘違いしそうなほど柔らかな光が入ってくる。色ガラスを通ることで、太陽光のようなその光にも様々な光が付いていた。
 その光が集中して射し込む場所、奥の方にそれは居た。
「………………少し見ない内に大分見た目が変わりましたね」
 以前は巨大なミミズのような姿をしていたダンジョンマスターだが、現在目の前に居るのは、どう見ても白い羽を生やした蜥蜴。おそらくドラゴンの姿でも目指しているのだろうが、現在の姿はドラゴンと呼ぶにはまだ早いというか、巨大な蜥蜴という以外に表現のしようがなかった。
 そんな姿だが、れいにはそれが以前ミミズの姿だったダンジョンマスターだと直ぐに分かった。最奥に居るからというわけではなく、存在そのものが他の魔物とは一線を画すので簡単に分かる。それは創造する側と創造される側の差とでも言えばいいか。
『お久し振りです。この世界の主よ』
 蜥蜴の姿では喋れないのか、ダンジョンマスターは念話で言葉を返す。巨大ミミズの頃からそれは変わらないが、支障なく会話出来るのであれば問題ないだろう。そもそも仮にドラゴンになっても、普通に声を出して会話出来るかどうかは微妙なところ。
「………………迷宮の運営は順調ですか?」
『来る者が少なく暇なので、色々と迷宮内を模様替え出来るぐらいには順調です』
「………………それはよかったです」
 地下大迷宮の目的は、帰還の門の死守。創造主が勝手に設置した帰還の門だが、れいはそれを使わせるつもりはなかった。既に創造主は代替わりしているので、ここでそれを破壊してもいいのだが、今のところ問題は全く無いのでそのままにしておくことにする。
「………………帰還の門の方はどうですか?」
『そちらも問題なく』
「………………そうですか。それでも一応様子はみてみましょう」
『こちらです。どうぞ』
 ダンジョンマスターの案内で、更に奥に移動する。そこは広い部屋ではあるが、巨大蜥蜴が戦闘するとなると狭い部屋だった。だからその前に自分用の部屋を創ったのだろう。一番は戦闘に巻き込まない為であろうが。
 帰還の門が在るこの部屋は、王墓の迷宮同様に実在の部屋である。ダンジョンマスターが斃されても部屋が消えないようにと、れいが地下迷宮を設置する前に創ったのだ。
 その部屋の中央よりやや奥の方にその門は設置されている。動かすことも可能だが、れい以外が不用意に触れないように、れいが周囲に障壁を展開している。といっても、ここまで自力で辿り着けたならば、その障壁は自動的に消える仕組みになっているので問題はない。
「………………問題なく稼働していますね。壊れていてもよかったのですが」
 つい、といった感じでそう零したれいだが、その門はそのままにしておく。
 ダンジョンマスターと共に帰還の門の前の部屋に戻ると、れいはダンジョンマスターから現在の地下大迷宮の状態について詳しく話を聞くことにした。

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