第七話 呂布奉先、ローマを治める <序>
丘の上では伯がそうするように少年が村を見下ろしていた。
後ろから近づいてくる2人の足音を聞いても少年は振り返らない。
伯と季蝉は何も言わず少年の横に並び村を眺めた。
いつもと変わらない平和な景色だった。
まだ朝早いせいか村に見える人影はまばらである。
暫くの時が経った。
だが少年はやはり面白くもなさそうに村を見ている。
敏捷そうな体つきである。年は10を超えたばかりだろう。背は伯よりも頭一つ低い。
細くきつい目をした横顔は若々しい鷹を思わせる。髪は伯と同じように後ろで束ねていた。
「可比能よ」
伯は少年の名を呼んだ。
「伯にい」
やっと少年は口をひらくと伯の方を向いた。