一角の拡張と面倒な漂着物
漂着物を集めた一角の範囲を一気に拡張していく。そこに有り余っている海水を投入することで、海をかなり広くしていく。
その後は保護区や植物の楽園など動かしても問題ない大陸や島を動かして、他の大陸との間隔を拡げる。
「………………手狭というほどではありませんが、大陸や島を設置したことで、最近海が少し狭くなっていましたからね、これでちょうどいいでしょう。人や魔物が大陸間を行き来している場所は流石に変えることはしませんが、海流は多少変化するかもしれませんね」
それでも問題ないかとれいは思い直す。航海術や船も大分改良が進んだので、多少海の流れが変わったとしても直ぐに適応出来るだろう。
それに、最近は飛行艇も造られるようになってきた。まだまだ初期の段階ではあるが、それでもかなりの進展である。昔は人が手に翼を模した物を付けたりしていたのだから。
そうやって大陸間を移動する手段が他にも出始めたので、今後は益々大陸間の交流が盛んになっていくことだろう。近いうちに新しい大陸を造ってもいいかもしれない。漂着者には知識があると言っても、文明の発達には少し時間が掛かるのだから。
「………………その前に一度保管庫の中身を確認した方がいいかもしれませんね」
漂着したモノの中で配置出来ない、もしくはまだ配置先が未定のモノを保管しておく保管庫。れいだけではなくネメシスとエイビスも漂着物の整理をしているので、れいが放り込んでいないモノも中には含まれている。というより、漂着物の管理は主にネメシスとエイビスに任せているので、二人が保管庫に入れたモノの方が多い。特に森や海などの大きなモノはれいが配置をすることにしているので、そちらは全て保管庫行きになっている。
れいは一応全ての漂着物は把握しているが、問題がないか確認だけして情報は記録庫行きにしている場合が多い。れいは全能でありながら、つまらないからという理由だけで自ら能力に制限を設けていて、現在はほぼ万能程度まで能力を落としているので、それらを完全に把握はしていなかった。
そういうわけで、今一度保管庫の中身を確認していく。種類が豊富で膨大な量が保管されているが、れいにとっては一瞬で全てを把握出来る量でしかない。
そうして一瞬で全てを確認した後、新しい大陸をどうするかを考えていく。
「………………まず強さの面ではどうしても劣りますね。この辺りは保管庫で適応させてもいいかもしれません。しかしそうなると、保護区は不要になってしまいますね」
最初の問題を考えたところで、別の方へと話が逸れてしまう。ただ、そうすることで一角の整理が出来ることは間違いない。丁度保護区は移動させたばかりなので、それが無くなっても問題はなさそうではあった。
「………………さて、どうしましょうか。とりあえず保管庫の方はその方針で行くとしまして、保護区の方は現在保護している分で終わらせるとしますか。ああ、念のために人は今まで通りにしましょう。最初から適応していると、住民では抑えられないかもしれませんからね。狭い世界で社会を形成していると、こういう時に面倒ですね」
今後の方針を頭の中で組み立てつつ、次の問題を考える。
「………………文明の方は今まで通りでいいでしょう。法則は……色々流れ着いていますね。困ったものです」
最も面倒な漂着物であろうモノに、れいはどうしたものかと思案する。別世界の法則については、珍しいうえに流れ着く量はそれ程ではないが、それでも長年放置していれば結構な量になっているもの。保管庫を確認しただけでも、既に大陸三つで新しい法則を敷いてもまだ余るぐらいには量が溜まっていた。
「………………まずはこちらから考えないといけませんね」
ため息でも吐きそうな声音でそう口にしたれいは、早速どういった法則が出来そうかの検討から始めるのだった。