魔木周辺と北の森の現状
管理補佐を大量補充してから少し経ったある日。れいは久しぶりに魔木と会話をしていた。
会話の内容は、前回からの間の話。れいはそれなりに色々としてはいるが、基本的に同じことの繰り返しなので、そこまで長々と話すようなこともない。管理補佐が増えたとか、どこそこの国が滅びたとかを長々と話してもあまり面白くないだろう。
魔木の話は、北の森の話が中心になる。最近は老木の魔木周辺に植わっている若い魔木辺りまではそこそこ人が来るようになっているらしいが、それより奥には入って来られないらしい。何故なら、老木周辺は魔木の密集地というだけではなく、魔物の住処としても人気で大量の魔物がうろついているからだとか。
「この森はとても豊かな森ですが、この辺りは特に自然に恵まれていますから」
その理由について、老木の魔木はそう語った。実際、管理補佐を除くと北の森の頂点に君臨している老木の魔木が居を構えるほどの場所である。そこが最もこの森で栄養豊富で過ごしやすい場所なのは間違いないだろう。
魔木も一定の範囲内に入りさえしなければ無闇に襲ったりしないので、そこを弁えれば共存は可能だった。
老木の魔木もその場所を独占するつもりはないようなので、魔物達に人気のスポットとなったらしい。それに、魔木が周辺を護ってくれるので、魔物としても身を護りやすいというのも大きい。
そういうわけで、老木の魔木周辺は中々突破が困難な場所となっていた。山側からは更に難所になっているので、そちら側から来られるのであれば、森側からでも問題なく来られるだろう。
上空に関しては今のところ来る者は居ないらしいが、備えだけは万全らしい。
今までに外周部の若木から魔木の実が幾つか採取されたらしいが、斃された魔木は居ないとか。逆に魔木に挑んで返り討ちにあった者は多いらしい。
そういう話をした後、現在の人の能力や装備の質について、れいは魔木から話を聞く。れいも情報収集をしてはいるが、あまり積極的ではないので、魔木の情報の方が確実だった。
そうして情報を収集しながら、魔木の実も貰う。長いこと空けていたので、お土産が大量だった。
雑談をしつつ、老木の魔木周辺以外の北の森の話も聞いていく。
今でも近くの国では北の森を聖なる地としているので、そこまで荒らされてはいないらしい。それでも確実ではなく、秘密裏に伐採する者も居るようだ。といっても、多少なら国や周辺の魔物に対処を任せているが、量が多くなるようならフォレナーレかフォレナルが対処しているようなので、あまり酷い状況にはなっていないらしい。
他には、北の森のごく浅い部分には、フォレナーレの許可を取って、北の森を警備する兵士が詰める兵舎が建設されたとか。結構警備が厳重なので、大半はそこで捕まっているという。
「………………大変そうですね」
そんな話を聞いたれいは、他人事のようにそう感想を零す。まぁ、管理をフォレナーレとフォレナルに任せた時点で、れいにとっては他人事ではあるが。
「そういう不逞の輩はそこまで多くはないので、そこまで大変というほどではないようですよ。やはりここがれい様の創造された管理補佐様が直接管理している地というのが大きいようですね。ここに対して何か良からぬことをした者達は、それを知られれば住む場所を失いますから。もっとも、だからこそ欲しいという者も居るのですが」
「………………なるほど。人というのは業が深い」
「左様ですな。後はそれ故に、ここの警備は人気と申しますか、名誉な仕事となっているようです」
「………………ふむ。なるほど。それはそれで面白いですね。であれば、ここの警備を行っている間だけは、多少身体能力を向上させてあげてもいいかもしれませんね」
「御随意に。ですが、それを行うのでしたら、事前に通知しておくとより効果的かもしれませんね」
「………………ふむふむ。それは確かにそうかもしれませんね。後ほどそうするとしましょう」
魔木のアドバイスを受けて、れいはそのようにすることにした。もっとも、その前に窓口になっているフォレナーレにでも話を通すつもりだが。
その後も雑談をしながら情報交換をすると、れいは報告を受けるのと先程魔木と話したことについて相談するために、フォレナーレの許に向かうことにしたのだった。