4大家の真実
ちゃちゃちゃちゃ、ちゃちゃちゃちゃ、ずんちゃちゃ。
(まだやってたのか)
やっててたって良いじゃないの。鉄板って素敵。
「どういう事だ! サイモン!」
「殿下、落ち着いて下さい」
んで現実に話を戻すと、もんもんこと頭脳明晰なサイモンが読み解いた1000年近く前の碑文の内容に、納得がいかないのか俺様皇子、ディレクが噛みついていた。この皇子は今の所、元ゲーの様なデレが見られてないから、何時までも愛称であったはずのデレクと呼べない。
(対象であるジュリエッタ様の中身の乙女様、何時頃見られるのでしょうね?)
(『まだもう少しかかるわねぇ』)
「聖女の血を引く! それこそ我々4大家たらしめんとする根幹なのだぞ! それが根底から覆されるかも知れないのに、これが落ち着いていられるか!」
「ディー……黙って……」
「うっ……!? ジュリ……エッタ」
唐突に元々の乙女様が入る前の、元々のジュリエッタの口調に戻った事に、ディレクが驚愕する。
(え? ジュリエッタ様なの? また起きた?)
(『え・ん・ぎ♪』)
(ああ、そういう……)
でぃーちゃん、かーわいそ♪
(おま……そういう事はほんと嬉しそうに言うよね)
「サイモン? 話を続けて」
「はい。4大家は聖女の血を引いていません。それぞれの祖は、余り明文化はされてませんが聖女の高弟達である様な事が読み取れます」
「………………」
「聖女は、表向きの歴史では勇者を喪ってから塞ぎ込んでいたと伝えられています。ですが碑文によると、実際には勇者の後を追うために何かされていたようです。以前接触した魔王、いえ勇者様のお話によりますと、勇者様は魔族になっていたらしい……のですよね? であれば、ここで後を追うために何かするというのは、聖女様も魔族になる、或いはそれ以外の別の手立てを講じたと考えられます」
「その話と4大家がどう絡むのだ!?」
「でぃー?」
「うっ……つ、続けろ」
ディーが割り込んだ! しかしジュリエッタに却下されてしまった! 勇者の話だけに!
(逃走シーンをよくもまぁ言い換えやがったな、この野郎)
「その際、勇者も聖女も居なくなった祖国のことを考え、自らの魔力の全てを4大家の祖に託した。そう碑文には書かれていました」
「サイモン? ちょっと良いかい?」
「!? な、何かな? グレイス」
もんもんキョドり過ぎ。
(わぁ、ピンク色。エリさんのハンカチは真っ赤っか)
「その高弟とやらの詳細は書かれていないのかい?」
「……ああ、あったね。これが正しければ、先程の僕の解読は誤りがあったようだ。高弟ではなく、正しくは聖女の姉妹達らしい」
「姉妹!? ……であるなら我等4大家は無縁というわけではないのだな?」
「血縁があるのは間違いないでしょう。そもそも聖女に縁のある血に因って発動する宝具も、幾つかあるのですから」
「そ、そうか。そう言えばそうだったな。……すまん、取り乱した」
(そんなのあんの?)そんなのあんの?
(『ふふ、一応あるわよ? まぁ血だなんていうと、誰も感知できないレベルの末端まで反応されても困るから、代々の当主が登録したりしてるわ。そもそも私は勇者様から、4大家の祖は聖女の姉妹って聞いてるから知ってたけどね』)
(そうなんだ)そうなんだ。
「んじゃここが聖女様のお墓なのは確かなんですね? 演習の際、聖女様のご遺体が損傷を受けるのを止めようとしたのね? 偉いねぇ、ガイア」
「ぐるっ」
「えっ? 違うの?」
「……その白虎は本当に聖女の守護獣だったのだな。聖女の遺骸でないとすれば、彼女が守っていたのは恐らくこの石碑そのものだろう」
「がうっ」
「そうなんだ。でもどうして墓そのものじゃなくて石碑なんです?」
「ここに聖女の遺骸は納められていないからだ。そうだな? ガイア」
「がうっっ!」
「えっ、そうなの!?」
「ああそう……ぶわっぷ、おい、お前、いきなり頭突きをしてくる奴があるか! ああおいこら!」
「……おお、ガイアが自主的に愛想振りまきに行った。初めてじゃないかしら?」
「はぁ……可愛い」
グレイスがガイアにじゃれられて困惑するもんもんで悶々。また真っ赤っかハンカチが量産されそうだな。
(まぁもんもんも嫌がってないしねぇ。あれかな? 理解者が現れた喜びみたいな?)
「分かった! 分かったから! ……ふう。(ナデナデ……)話を続けるが……」
(ぶっ……エリさんに続いてこっちも鼻血噴きそうだったわ。何アレ? テラカワユス。興味無いふりして、メッチャ撫でとるがな)
ベルが少しそわそわしてるけどな。
(紹介もされてない外様に仲良くされたら立つ瀬が無いからか? それか混じりたいのかどっちかね)
「聖女は、どうしても勇者に会わんと、詳細は分からないが何かをしていた。その副産物としてできたのが4大家という事らしい」
「待て待て待て! またなにか話がおかしくなってきたぞ!」
「ディー? そろそろ黙ってようよ」
「エル兄まで……!?」
爽やかイケメン、エリオットにまで黙ってろと言われて絶句する皇子。
(もっと言ったげて下さい。皇子が反発しない人少ないから貴重な戦力!)
「聖女がその『何か』を成すには光魔法が邪魔だったとあります。こう言うと不敬かも知れませんが、彼女にとって不要な光魔法の受け皿として4姉妹、後の4大家があったようです」
「………………」
「サイモン、解読有難う。ディー? この話が本当でも嘘でも、私達のやる事は変わらないわ。それにわざわざ公表する必要のある事でも無いし」
「ジュリエッタ……そうは言うが、国を導く立場の者達が不要な物の寄せ集め等と嘲笑われるのだぞ?」
「だから?」
「だから……って、お前……」
「言わせたい者には言わせておけば良い。今までやってきた事はその程度で揺るぐことはない。過去のあれこれをあげつらって、今の私達を築き上げてきてくれた努力を、笑ったり詰ったりする非建設的な輩の何が気になるの?」
「うぉ……ぉう」
「少なくともここ1000年、この国を支えてきたのは4大家であり、その側近も含めた別格貴族であり、更に体制に賛同し支えてきてくれた沢山の貴族達であり、私達と共に歩んできてくれた民達よ」
「う……そ、そうだな」
「ついでに良いですか?」
「うぬ? なんだフローラ嬢、今大事な……」
「どうぞ、フローラ」
「………………」
ディレク、絶句。
「まぁ帝国のお陰でここ1000年、魔王が復活することはなかったし、魔王が滅びたわけでもないから次が生まれることも無かった。だから帝国はもう要らねんじゃね? って軽んじられ始めたんでしょう? でも何かにつけてバカにしてくる国には、次魔王が現れた時は貴国こそが矢面に立たれたら良いって言ってあげれば良いと思います」
「あら良いわね? 後はこうかしら? 帝国の光魔法による浄化という恩恵や色々な援助を受けておきながら、弓引くつもりなら一切の援助を切る、と。そもそも外面だけ仲良くしてますよアピールしておいて裏で色々せびったり、援助は受けつつさもそんな負い目なんて無いかの様に堂々と弓引く厚顔無恥な連中に差し伸べる手は無いわよね」
「ま、待て待て待て! 魔王が生まれなくなったとは言っても、世界にはまだ魔物化に晒される人々が居るのだぞ!? 弱き者の命を天秤にかけるつもりか!?」
「頼る以外に選択肢が無い癖に、手を借りるだけ借りといて盗っ人猛々しく他に金や領土まで分捕ろうって奴等に何を慮るんですか? それに救わないなんて言ってませんよ? 礼節を持って応対する国に限定するだけで。そもそも、相手の喉元に剣を突きつけながら握手を迫る様なアホの親玉を掲げてる国が悪いんです。色々取れる選択肢はあるんですから」
「………………それは国家転覆を薦めるかのような言い草だな、フローラ嬢。皇家としては看過できん発言だぞ?」
「ダメな親玉も、それを担いでるアホな国民も同罪だって話です。国を出るのも一つの選択肢ですからね」
「転覆の次は分裂の推奨か? ……ジュリエッタ。俺はフローラをどうすれば良いのだ?」
「アシュカノン帝国の事ではないのだから、問題無いのでは?」
「そうだね。フローラ嬢は帝国に思う所は無いのだろう?」
「ありませんよ、エリオット様。と言うかここ、かなり理想的な王政築いてますもん」
「そ、そうか? ……そうか。俺が考え過ぎ、なのか」
王政ってかアシュカノン帝国の帝政の有り様を、ほぼ全肯定されて気分を持ち直したディレクだった。
(何か抱えてるっぽいなぁ)
(『しょうがないのよ。彼、魔力こそは高いけど、それ以外の能力が低いから。そもそもの皇位継承権からして無いのよね。皇帝陛下は、より高い魔力を持つジュリエッタを許嫁にする事を决めたの。継承権を奪われた上での公爵家への婿入りだから、かなり鬱屈したものもあったでしょうね。まぁジュリエッタの事は一目惚れに近かったらしいから? 後は釣り合うように頑張りたいらしいのだけど、見ての通り空回ってるの』)
駄レクなんですね。
(やめて? そういうの定着すると、ぽろっとやりそうで怖いのよ)
かーらーの?
(え? いや、この流れで何に乗っかればいいの……?)
ちぇっ、残念喪女さんだ……ざんねんもじょさん、ざんねんもじょ3? ……ザンモッジョ3!
(お前マジブッコロ。つか無理やり過ぎだし、そもそもゴロもあってねえじゃん)
つか何で喪女さんは元ネタ知ってんのよ? 生まれてないんじゃね?
(一時期CSでロボット大特集してた。ちなみに日輪の〜がお気に入り)
渋いなw