新たな客
お帰りなさいませ、甘々製造機なハーレムマスター様。待ってたよ! 甘いのはよ!
(は!? 帰ってくるなり言われたこともない変な称号で呼ばれる上に、何訳の分からない催促ってどうい……何この状況?)
この状況とは……一応? フローラの誕生パーティだというのに、
(一応じゃねえ。フローレンシアの大事な誕生日よ)
主役がマル君の介抱から帰って来てみれば、そこはまるでお通夜のような雰囲気だった。良かったね! 中身の人には凄くピッタリな光景よ!
(ピッタリってなんだ……。普通は自分のお通夜なんて見れねえよ。それより説明!)
ベティ暴走、鬼将軍ズ、諭すも微妙に失敗。
(うわぁ、短すぎるって怒鳴るまでもない位、目に浮かんだわぁ。どうせベティが軍属になるって聞かなかったんでしょ)
それにプラス、思想がやばかったから方向修正して、ギリオッケーレベルになった。
(ギリなの!? どのレベル!?)
ベティが士官になる勉強を始める事を決意しました。
(はぁ!? どこをどうやっていじったら……)
で、はわはわマルチ君は?
(……そこへ行くのぉ!? って、聞・け・よ!? こいつは本当にもう……。
つか、はわはわって何さ? マル君は無事よ。しつこく深呼吸させたのが良かったのかしら)
ああ、正解の対処法だな。昔は紙袋で息をさせることだったらしいが……。
(知ってた所でここにあるわけないじゃない。ビニールもないしね……なんで紙袋?)
そんなことよりミリーをいじってくれ。塩っぱい激辛はもう飽きた。
(今日はあんたとまるで会話が成り立ってない気がするわぁ!?)
そんな俺の思いが通じてか、
(私とは意思疎通できない……いや、しようとしないのにね)
ミリーが向こうから駆け寄ってくる。やったね! テンパイだ!
(テンパイって何!?)
「ああ……! 良かったですわ! 私何だか生きた心地がしませんでした……!」
「はいはい、ごめんね? うちの怖い人達が」
「「怖い人達……」」
鬼将軍ずに痛恨の一撃! 真っ白に燃え尽きたぜ!
(混ぜるな。そして後ろのはそのテンションで言われると違和感が半端ねえな!?)
「いえ、違うのですわ……。ベティとは仲良くなったつもりで、まったく分かっていなかったのが分かり……。私ったら、なんと友達甲斐のない事かと自責の念に駆られていたのですわ」
「あー……メイリア?」
「……聞きたいことは分かるけど一応。なぁに?」
「ベティの……」
「知らなかったし、始めて知ることも多かった。……私もびっくりなの」
「そうでしたの!?」
「んで、ベティ?」
「………………」
呼ばれたベティは無言でミリーの側に寄る。お? リーチか? リーチなのか? いや、まだ待つんだ俺!
(あんたが何言ってるのか分かんないわ……)
「ベティ?」
「………………」
そしてミリーもベティを呼ぶが、ミリーは目を合わさず無言で
「(ギュッ)」
「え? え??」
「あー、これはあれだな。いじけるっていうか、ごめんなさいが素直にできないで、ただ甘えてる状態だと思う」
「(プクー)」
「そ、そうなんですの??」
「この状態のベティは子供っぽくなるから。ほらベティ? 言いたいことあるんでしょ?」
「む、むー。ミリー?」
「な、何ですの?」
「えっと、あの、その……ごめん?」
「怒ってなんていなくてよ?」
「そうなの?」
「自分自身を不甲斐ないと思っただけですわ」
「でもその原因は……」
「私にありますわ」
「………………」
「ベティは大事で大好きな友達ですわ。そして友達であるならどんなベティでも受け入れて、間違っていれば正し、迷っていれば手を差し伸べるものですわ。……ですが物を知らぬ私はそのどちらもできなかった。それが悔しいのですわ!」
すげー……。ミリーすげー……。
(語彙力落ちてんぞー。でもまぁ本当に凄い子ね。私はそこまでに思える友達ってこっちに来てからしかいないから、素直に尊敬するわぁ)
流石中身、わっつらーさんだ。
(わっつらー? ……うわっつらか!? 酷くね!? 暇な時、一緒に遊ぶ程度の友達と、気の置けない友達はレベルが違うだろ??)
友達をレベル分けってどんだけだよ……。友達甲斐の無いってのは喪女さんにこそふさわしい称号っす。そもそも気の置けないレベルの友達なんて居なかったくせに。
(レベル分けなんて普通ですー。ってか居ないって決めつけなの!?)
膨らむ中身の喪女さんは置いといて、次こそ来る気がする! リーチ!
(ハリセンボンじゃねえよ!? っつか、誰と麻雀してるの!?)
ミリーの答えを聞いたベティが更にギューしてる。ミリーは困惑してるが、顔を赤らめて嬉しそうだ。
(これはアレだな)
「はいはい、混ぜて混ぜて」
「あ、ちょっとフローラ……」
メイリアは巻き込まれた! しかしその視線は男子ーずに注がれている! 今回はちゃんと理解してるようだ! しかし他二名は気付いていない! またしても気付けば羞恥の刑だった! 流石鬼畜喪女!
そして俺はリー即ツモキタコレ! 待ってた甘い展開!
(うっさいなぁ。最後のはイミフだし……)
そしてひとしきりきゃっきゃうふふと女子団子を楽しむと
(女子団子って何さ!?)
フローラさんは気付いていない二名を、男子ーずの方へと視線を誘導する。
ボボフンッ!!
効果は抜群だ! 二人同時に茹で上がった!
「んもー! んもー! フローラさんってば!」
「むー! むー!」
ポカポカ
ミリーはぷりぷり怒り、ベティはぽかぽかフローラを叩いている。
「あはは、いたいいたい、ベティ止めてってば」
「む―――――!」
ベティにとっても流されて甘えたシーンだったならともかく、自発的に甘える無防備なシーンを見られたのは相当堪えたらしい。流石ハーレムクイーン喪女さんだ! 数え役満だよ!
(だから何その称号! ……ってこれか! 別にお前を喜ばすためにやっとんとちゃうわ! そして何を役にしてんの!?)
役は甘々の度合いかな? でもぉ……お楽しみだったんでしょう?
(お高いんでしょう? みたいな言い方すな! あと、モテないのかモテてるのかどっちなんだその名前!?)
同性にモテて異性にモテない。
(ピッタシだな!? ……じゃねえわ! ああいやどっちだ!?)
風呂オラは混乱した!
(こんちくしょーめ、黙ってろぉ……)
ふはは、久しぶりに堪能させてもらったぜ!
(だ・か・ら、黙ってろ!?)
………
……
…
一方、鬼将軍ズ+嫁ーず。
「「……怖い人達」」
「そう言われるのも当たり前でしょう? ミリーさんなんか怯えちゃって、暫くの間は凄く震えてたのだから」
「う……。ごめん」
「謝る相手が違いますわよ?」
「儂は抑えておったろう? 何故これとひと括りにされるのだ?」
「義父上、これ呼ばわりは酷いです……」
「お父様? 何自分は関係ないみたいな事仰ってるんです? フローラの大事なお友達を戦場に送るつもりですか? ……こういうことは本当に頼りにならないんだから」
「あいや、しかしな? 儂だってがん……」
「貴方? 儂だって……何ですか? 貴方がついていながら若いお嬢さん一人、戦場から遠ざけられないなんてどういうことなの?」
「う、あ、いや、その」
「「二人共、暫くの間、反省してなさい」」
「「……はい」」
嫁ーずは、超・強かった。
………
……
…
一方の男子ーず。
「なぁ、バモン君」
「なんでしょうか?」
「アレが見れるから惚れた訳ではないよね?」
「……何時もなら『見てて良いのだろうか』と聞いてくるのに、今日は違うんですね」
「で? どうなんだい?」
「……少し楽しみになってきてはいますが、それ以前の話です」
「やっぱりきんて……」
「違いますからね!? ……俺のことも家のことも何も知らないただの異性が始めてだった、んでしょうね。割とグラジアス家は狂犬一族として有名ですから。実際、マリオ様が同級生としてあのクラスに居なかったら、有象無象に囲まれていたと思います。
一方、あいつは俺や家のことを知らなかったどころか、知った後でも態度が変わらなかったんですよね。そんなの、男女含めてもあいつが始めてでした」
「まぁお姉様方の存在を聞いたら普通は引くね。よっぽど情報収集能力の低いお馬鹿でない限り」
「その中でも過激派筆頭であるメアラ姉が、上には更に権力持った姉達が居ると直接脅してます。でも、その存在をちらつかされてなお、あのままですからね。……びっくりですよ」
「それは確かにびっく……」
「あらぁ、バミィ? 何の、筆頭、なのぉ?」
「メアラ嬢!?」「メアラ姉!?」
お姉様ず、襲来!