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やはりというか、そう簡単に気持ちは変えられなかったというべきか。
七回忌以降も、あいつの命日のたびに俺は有給をとって須磨海岸に足を運んでいた。律儀なことにあいつは一度も姿も見せず、声も送ってこなかった。
ひとり海岸を歩き、夜のメリケンパークを寂しくひとりで過ごす。それを繰り返しているうちに、最初は会えない辛さが上回っていたけど、次第にこう思うようになった。きっと御幸の願いは叶ったのだと。
六年経った昨日、十三回忌をもってしても御幸は姿を現わさなかった。宗教的にはあと二十年かかって弔い上げらしいけど、あのとき見せた御幸の笑顔はそれを望んでいなかったように思える。次のステップに無事進んだんだ。そう自分に言い聞かせる。
ただ、現状の俺を見たら御幸は怒りだすかもしれない。
地位と年収だけが少し上がっただけで、あいつの言う幸せの形とやらは一向に見いだせていないからだ。クリスマスは目前だというのに今日も学部生の卒業論文に付き合っている。これが終われば無駄に拘束時間の長い会議に付き合わされ、家に帰って年内最後の講義準備が待っている。
「先生……先生!ちょっと聞いてます?先生!」