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「あの、すみません」
通りがかった二人組の女子高生を俺は呼び止めた。不意を突かれて互いを見やる一人はカメラを手に持っている。更に俺は勇気をふり絞った。
「記念撮影したいんですけど、一枚、撮ってもらえませんか」
うち一人が引き気味だったのに対し、カメラ女子は「いいですよ」と俺が差し出したスマートフォンを受け取って快く引き受けてくれた。
「背景、海でいいですか」
「ええ、そのままで結構です」
「じゃあ、撮りますね」
せっせと進める女子高生に御幸はたじろいでいた。投げかけてきた視線に笑みを添えると、不服なのか、恥ずかしいのか左腕に両手を絡めて顔を隠す。
右手でサムズアップのポーズをして、ひとたびのフラッシュが辺りを包んだ。
「これでいいですか」
スマートフォンを返して、写真の出来を見た俺は「ありがとう」と笑顔で一礼した。不思議そうに見つめてくるカメラ女子の腕をもうひとりが引っ張ると、そそくさと立ち去っていく。
「あのさ、凌輔」
「わかってる。背を向けて目を閉じろ」
腕を離した御幸に俺は背を向けた。