バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第2話Part.3~君の力が必要だ~

「あなたは一体何者?」
「無能者だよ。君と同じ。」
「あんなスキルを使ったのに?」

 彼女は俺に疑問をぶつけてきた。俺は自分のスキルが略取というまだ未知のスキルであるということ、その力によって敵のスキルを奪ったことなどを説明した。彼女は実は無能者ではないのではと思わないでもなかったが、俺は彼女がそうだとは思えなかった。それならば彼女も救いたい。だから包み隠さず教えた。

「そんなことが……。私は物理防御無視のスキル。でも適用されるのは能力者相手だけ。」

 なるほど彼女があっさりと筋力強化の男の身体を貫けた訳が分かった。彼女が物凄く腕力があるという可能性も無いわけではなかったが、それならば無能者の烙印を捺されていないし、あの2人組に押さえ込まれる訳も無い。

「あなたは私と瓜二つの能力者を見たことある?」
「いや、無いな。」
「そう。」

 彼女は不意に俺にそんなことを尋ねてきた。だが俺が会ったのはアルキュラとこの少女、後は意思の疎通ができない壊れた不死者くらいか。そう答えると悲しそうな、でも少し安堵したような表情を見せる。

「その能力者がどうかしたのか?」
「……私の双子の妹。スキル判別するまでは一緒に過ごしてた。」
「そうなのか?」

 俺は彼女の問いが気になって尋ねてみると、自分には双子の妹が居るのだと言った。彼女と妹はスキルが判明する12歳まで一緒に育ったらしい。心なしか妹だと言った時の彼女の眼には光が戻った気がする。

「私はもう一度妹に、アイリスに会いたい。その為なら何があっても何をしても生きる。」
「もう何年になるんだ?離れて。」
「3年。」
「3年!?よく生き延びられたな。」
「…………女は抵抗しなければ大体殺されないから。」
「何故?」

 彼女は妹に会いたい一心でこの地獄の廃棄の森で3年も生き続けていたらしい。毎日毎日多数の能力者が無能者狩りをしているというのに不死者でもない彼女が生き続けていることに驚き、素直な感想を言ってみたが意味深な事を言う彼女。だがそれ以上は何も言いたくないようだ。

「妹さんがまだこの地獄に出ていないといいな。能力者にせよ無能者にせよ。」
「ええ。」

 無能者として廃棄の森に出されていれば待っているのは一方的な蹂躙。能力者として出ていれば最早人の皮を被ったバケモノに成り果てたモノになっているのと相違ない。まあそれは俺も同じ穴のムジナというやつだろうが。同じ無能者たちを救いたいと思っているのも偽善かもしれない。自分は研究所から出てくる能力者とは違うと思いたいだけなのかもしれない。でもそれでも俺は……。

「俺に手を貸してくれないか?」
「え?」
「俺は奴等に目に物を見せてやりたい。その為には君の力が必要だ。まだ妹さんが森に来ていないなら研究所に居るはず。メリットはあると思うんだが。」
「……分かった。私だけじゃ研究所に入る糸口なんて掴めないし。あなたの力ならあるいは。」
「ありがとう。」

 俺はこの復讐劇に彼女を勧誘した。今俺が持っているスキルは不死、引き寄せ、テレポーテーションだ。奇襲と離脱には向くが筋力強化の男相手の時のように純粋なフィジカルで圧倒されれば成す術がないのだ。
 だが彼女のスキルは能力者に対しては防御力を無視して攻撃を加えられる。俺のテレポーテーションと組み合わせればあの時のように抵抗もされなくなる。
 それに俺と同道させればたしかに危険ではあるのだが、かといってこのまま彼女を放っておけばまた妹を探して研究所の近くへ行って能力者に傷つけられるだろう。それならば俺が近くに居た方がまだマシだと思った。

「私の名前はアイシス。」
「俺はアムロスだ。これからよろしく頼む、アイシス。」

 そう言えば自己紹介をしていなかったことに彼女、アイシスの言葉を聞いて気づいた。俺も名を名乗ってアイシスと握手した。新たな仲間を得て、俺は復讐の道を行く。

しおり