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第3話~待ちわびた動き~

 アイシスを仲間に加えて以降はその他に意思の疎通が可能な無能者探しと並行して無能者を狩りに来た能力者を逆に狩り続けた。俺の略取のスキルの性質上、スキル狩りと研究所の兵力削減の一挙両得となる。それでいくつかのスキルも得たが仲間は見つからなかった。

「いつまで兵力狩りをしているの?」
「事は慎重に運ぶ必要がある。妹さんのことは気になるがここは抑えてくれ。」

 最近ではアイシスが露骨に不満を口にするようになってきた。まあ彼女は妹のアイリスともう一度再会したいがためにここまで地獄を生きてきた。そして光明らしきものが見えたのだから焦るのは仕方がないと思う。
 だが研究所に入る手段が無い。俺のテレポーテーションのスキルは頭でイメージした場所に飛ぶ能力。俺は研究所の一部分しか知らないしそれがどこの箇所だったのかも知らない。それ故に飛べないのだ。
 それに入ったところでどれだけの兵力が残っているのか、他の能力者のスキルがどんなものなのかも分からない。動くには何もかもが足りなさすぎる。

「アイシス。能力者だ。」
「ええ。」
「8、9、10人か。」
「あれだけ来るなんて。」
「仲間が戻らないのは分かってるだろうからな。力入れてきたってことだろう。」

 俺とアイシスはスキルが確認できる単眼鏡で奴等の様子を窺う。能力者は10人で来た。前の3人は壁役の不死者のようだ。まずは壁役を剥がそう。俺は不死者を1人引き寄せのスキルでこちらに引き寄せて首元に尖った爪を突き刺した。
 すると不死者はそのまま地に伏して動かなくなる。新たに得たスキル『毒手』の効果だ。毒手は体内で毒を生成して手から分泌できるもの。今回使用したのは相手を麻痺させる毒だ。なるべくこの不死者たちは殺したくない。俺はそう思いながら3枚の壁役を全て剥がしてしまった。

 残りは7人。次はスキルの筋力強化を持っている能力者。俺は短剣をその男に投げつける。スキル『百発百中』の効果で妨害されない限り必ず敵に当たる。短剣は筋力強化の男に突き刺さる。

「何!?次はなんだ!おい!大丈夫か!」
「あっ、ああ?あああああああああああああああッ。てめえ!死にやがれぇ!」
「ギャアアアアアッ。」
「おい!何のつもりだ!お前ぇッ!」
「うるせえ!てめえ今殺したはず、死ねェッ!」

 短剣が突き刺さった男は自身のスキルを最大限に発揮し、自分の味方に攻撃を仕掛けた。純粋な戦闘力なら今来ている10人の中では最強の男が何故か自分たちに攻撃してきて大混乱に陥る能力者たち。
 これは毒手のスキルで作った幻覚毒を短剣に塗りたくっておいたのだ。今は味方を敵だと勘違いして攻撃を仕掛けているというわけだ。

 大混乱に陥った能力者のパーティー。その後方に居る能力者に用がある。俺は背後から引き寄せのスキルを使用してこの男を引き寄せ、首元に麻痺毒を打ち込み、アイシスの元に戻り、もうこの辺りに居る意味も無いのでまたアルキュラの亡骸があるあの場所に3人で飛んだ。

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