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平民聖女、別れの挨拶をする

 自分の部屋に戻って来た私は早速荷物をバッグに詰め込んだ。
「アマリア、どうしたの?」
 同室の聖女仲間が声をかけてきた。
「私、今日で聖女クビになったから」
「え、えぇっ!?」
「王都にも入るな、だって。だからみんなと会うのは今日で最後」
「嘘でしょっ!? アマリアは私達平民聖女の中で唯一の希望だったのにっ!?」
「もしかして私達もいずれは······」
「あのね、私は問題を起こしたからクビになったの。みんなは起こしてないから追放になる事は無いよ」
「でも、アマリアみたいに強い力を持ってないよ、直接女神様の声を聞けるのはアマリアだけだったし」
 そう言って不安がる仲間達。
 みんな、私の事を過大評価している。
 聖女と言っても世界に1人と言う訳ではなく数十人はいる。
 その中で最も優秀なのが『大聖女』と呼ばれる存在。
 大聖女は世界を平穏にする力を持っていて何百年かに1人現れる、と言う聖女の憧れの存在。
 で、聖女の中にも派閥があって私達平民出身の聖女と貴族出身の聖女とある。
 この2組ハッキリ言って仲が悪い、と言うか貴族聖女が一方的に私達を見下したり嫌がらせをしたりしてくる。
 その防波堤になっていたのが私だ。
 私は曲がった事が大嫌いな性分で貴族だろうが王族なんだろうが関係ない。
 喧嘩を売ってくれば買うし10倍にやり返す。
 まぁ、こんな私だから聖女に選ばれたのも何らかの間違いだろうし、大聖女なんてなれもしない。
 だから、追放されるのも覚悟はしていた。
「教会側は厄介者がいなくなって精々してるんじゃないの?」
「でも、これからどうすれば······」
「はい、コレ」
 私は仲間に一冊のノートを手渡した。
「何コレ?」
「私が見た教会の悪事の一覧。これを世に出せば間違いなく教会は潰れるから」
「えっ!? いつの間にっ!?」
「ある方からのリークでね、あくまで最終兵器だからね」
 その、ある方って実は女神様なんだよね······。
「それじゃあ、みんな元気でね」
 私はみんなに別れを告げて教会を出た。
「ん~、これで自由だぁ······、さて、何しようかなぁ?」 

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