第七十九話
***************
次の日、事務所の朝礼が終わった後、俺は昨日の3人を呼び止めた。
「すみません。昨日の件で、ちょっと話したいことがあるんですが、2階に上がってきてもらえませんか?」
「えー! もしかしてまだやんの? あんなことがあったのに——」
「……お願いします」
頭を下げた俺に、流石に広瀬も目を丸くしていた。
泉に至っては、口が開きっぱなしだ。
「…………でもよっ——」
愚痴る広瀬を制したのは、俺に張り手を食らわせた牧野だった。
挑戦的な瞳でこちらを見下ろしている。
「いいよ。今のあんたなら聞いてあげる」
俺達は昨日と同じセットが置かれた場所へやってきた。
「早くしてくれよー? こっちはまだ休憩時間なんだから」
こたつテーブルに座り、広瀬が挑発している。
「……3人とも、昨日は酷いことを言ってすみませんでした。
……昨日、牧野さんに言われたように、私はまだまだこの業界では下っ端だ。よく知らないことも多い。
……だが決して、AVを馬鹿にしているわけじゃないこと、あなた達を蔑んでいるわけじゃないことを、どうか分かって欲しいんです。
それに十分な設備の調っていない環境で、3人共本当によくやってくれています」