第十五話
電光掲示板で光に溢れ、夜も眠らない街。
雑踏の中に彼女がいないか探すが、こんな当てのないやり方では見つかるはずもない。
そう分かっているのだが、やはり目が彼女を求めて彷徨ってしまう。
(彼女のことは霧に包まれたまま。手掛かりは出会った時の記憶だけ、か。……全く雲を掴むような話だ)
一体彼女は何者なんだろうか。
どこで何をしているのだろうか。
まだ誰なのかすら判明していないのに、勝手に頭の中でインタビューが始まっている。
少し頭を冷やそうと自動販売機のコーヒーを買い、近くにあるベンチに座った。
喉に流れるコーヒーの冷たさが、少し火照った体に心地良い。
「あっ……!」
右の方から声がして、反射的に横を向く。
忘れもしない、この清純な瞳の美しさを。
「っ……! もしかして、この間の方ですか?」
怪しまれないように疑問形で尋ねる。
毎日探していた彼女と偶然にも出会えるとは!
「はい……。あの…………この間は逃げてしまってすみませんでした」
前と同じ黒い着物を着た彼女はすぐ隣のベンチに座っていたらしいが、全く気配を感じなかった。
「あなたを探していたんです」と言われ、予想外の言葉に胸が高鳴る。