第十二話
「ウィルソンさん、珍しいですね。今日も残業ですか?」
ピザを食べながら裸体の写真を眺めていた同僚が声を掛けてきた。
煩わしいと思いながら、表向き口元には柔らかな微笑を浮かべる。
「ええ。最近新しく入った女優の方の指導もしてますから、どうしても事務作業が残ってしまって」
勿論真っ赤な嘘だ。
演技指導は撮影中にさっさと済ませているし、会計などの処理も20分あれば終わる。
残業する必要など一切ないのだ。
「なかなか大変ですねぇ。でもウィルソンさんが来てくれてから、僕たちホント助かってますよ。
いやー、溜まってた伝票もちゃちゃっと片付けてくれるし、動画の売り上げも伸びるし! 感謝感謝ですわ。
……ところで女優の指導って言ってましたけど、さては個人指導ですか? 駄目ですよー、つまみ食いしちゃっ」
どこまでも妄想の止まらない男だ。
下品な発想しか出来ないクズめ。
「違いますよ。指導は撮影中に行ってますから……。それより、久保田さん。そちらの集計がまだなら、私がついでにやっておきますよ」
「えーいいんですかぁ!? いやー、ウィルソンさんは本当に素晴らしい人だ! それじゃ、遠慮なく甘えさせて頂きますっ」