第十三話
集計されていない資料を大量に俺のデスクに置くと、「お疲れさん」と上機嫌に事務所を出て行った。
久保田の姿が見えなくなるのを確認し、俺は悪臭放つピザの箱をゴミ箱へ投げ捨てた。
まだ食べかけのピザが残っていたが、そんなもの俺の知ったことではない。
「やっと居なくなったか。さて、人払いも済んだ。調べさせてもらうとしよう」
預かった資料をほっぽりだして検索を始めたのは、芸能人の情報だった。
ネットには載っていない現住所や両親の名前、交際ステータス等の機密情報が、事務所内にあるパソコンのデータベースからアクセスできる。
事務所では社長しか入れないのだが、俺の素晴らしい実績を鑑みて社長が権限を与えてくれたのだ。
こればかりは豆煎餅を食べてばかりの社長に感謝している。全く社長さまさまだ。
「小倉真理子……いや、もっと口は小さかったな。
立花アメリ……これも彼女ではない。あの顔立ち、クオーターかハーフか?
…………あれほど周囲を引き付ける容姿なら、どこかの芸能事務所に所属しているのかと思ったが、このデータベースにすら載っていないとなるとその線は消えるな……」