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第十一話

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俺は自宅に戻るなりパソコンを開くと、ありとあらゆる言葉を打ち込んで彼女を探し始めた。


黒い着物。黒髪の女性。都内。美麗。



SNSでも検索をかけるが、どれも彼女のことはヒットしない。


発泡酒を飲むのも忘れひたすら検索するが、それらしき人物をネットで見つけることができない。




険しい顔で画面を睨み続けること3時間。


肩が痛くなり一旦ソファから立ち上がった。


ベッド脇のデジタル時計を見ると、もう夜中の12時をまわっている。


お腹が鳴る音でまだ食事を取っていなかったのを思い出し、棚にあったカップ麺にケトルで湯を注ぐ。


寝食を忘れて調べ物に没頭したのはいつぶりか。


彼女は一体何者なんだろう。


熱々に出来上がったラーメンをすする。


値段の割に、妙に癖になるスープが麺と絡んで美味い。




俺の人生において、仕事とは命の次に大事なものだ。


仮に恋人がいたとしても、俺は迷わず仕事と答えるだろう。


まぁ、女を好きになったこともない俺が言うのもなんだが。


とにかく仕事は、もっと言うとプロデューサーの仕事は、俺の全てだった。


プライベートを捨ててのめり込むほどに、俺の生き甲斐だった。


しかしそんな俺が、これ程までの高揚感を覚えたことはかつて一度もない。


仕事よりも大事だとは思わない。


だが、心臓を素手で掴まれる感覚を体験すれば、誰だってその正体が知りたくなるのではないのか。


俺の中で、報道局で活躍していた頃の情熱が一気に燃え上がるのを感じた。


真夜中なのに、眠気は一切ない。


——俺はついに見つけたのかもしれない。

カメラに収めるべき被写体を。


「……必ず見つけ出してやる」

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