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第四話

耳障りな喘ぎ声や、むやみな突き上げを連発したところで、本当のエロスは感じられない。


俺が求めているのは画面から叩き起こされるエロスではなく、画面へと誘われるエロスだ。


この職場に長く留まる気はないが、どんな仕事でもある程度の目標は持っていないと、人間腐ってしまうものだ。




と、理想を口にしたところで、現実が何か変わるわけでもない。


どいつもこいつも、毎度視聴者のことを考えていないような行動しかとれないため、何度も撮影を中止して罵声を飛ばすことが今では当たり前となっている。


いつか絶対に辞めてやると心に誓って暫く経つ。しかし決行するのは、一体いつになることやら。






事務所を出てから近くの喫煙所で煙草を吸い、苛々する気持ちを落ち着かせるように、煙を吐き出す。


動画編集時に見たあのAV女優は、芸能人としてのプライドが未だ捨てきれていない。


恥ずかしさを売りにする場合もあるが、彼女の場合はもっと大胆になってもらわなければならない。


明日きちんと言っておかねば……。


「フン。八百長同然のAVプロデューサーなど、金に困っていなければすぐにでも辞めてやる」

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