いろいろな敵と出会う
階段を上ると風景は様変わりした。壁、床などは菌を付着させたかのような状態。靴、靴下を履いていたとしても感染するリスクは充分にある。
サクサクと進もうかなと思っていると、戦闘画面に切り替わることとなった。
「2070年に流行した死滅ウイルスを持つ人間」3体と遭遇した。
「死滅ウイルス」ってなんだよ。未知の病気を持ってくるあたり、プレイヤーを本気であの世に送ろうとしているのが伝わってくる。
「死滅ウイルス」は硫黄ガスのような臭いを発していた。早めに倒さないと、意識を失ってしまいかねないほどの臭さだった。
画面には「敵に先制攻撃を受けた」と表示されていた。危険なウイルスを持つ敵に先制攻撃を受けるなんて、運があまりにもなさすぎる。
死滅ウイルスを発症した人間は、コナロンウイルスを発症した女性とは異なり、見るからに性格の悪そうな顔をしていた。ある意味で暴力団よりもいかつい。
死滅ウイルスを持った人間はどのような攻撃を繰り出すのか。注視していると、素早い動きでこちらに向かってきた。リミッターの外れた暴走機関車さながらだった。
「死滅ウイルスを持った人間1は膝にかみついた。20のダメージを受けた」
菌を体内で繁殖させようということか。プレイヤーの命を奪うために、理にかなった攻撃方法といえる。
敵は人間にもかかわらず、狂犬病にかかった犬のように感じてしまった。死滅ウイルスに感染すると犬みたいになってしまうのかな。
どうせ噛みつかれるのなら、さっきの女性たちのほうがよかったな。ウイルスにかかったとしても、美女なら許してもいいと思える。ブサイクな男だと殺意しか湧いてこない。次の攻撃で闇に葬ってやるから覚悟しとけよ。
40くらいの汚い顔をしたおっさんが近づいてきた。ご飯を与えられていないのか、クスリを肉と勘違いしているかのようだった。
「死滅ウイルスを持った人間2は腕にかみついた。30のダメージを受けた」
痛さよりも圧倒的に憎しみが勝っていた。攻撃ターンになったら、速攻であの世に送ってやるから覚悟しておけ。
成人したばかりのイケメン男子が接近してきた。若くして命を絶たれるなんて、かわいそうな男だ。生命を全うしていたら、美人にちやほやされただろうに。
「死滅ウイルスを持った人間3は首筋にかみついた。60のダメージを受けた」
3体ともかみついたことから、狂犬病のようにかみついたときに発症するのかな。未知のウイルスだけあって、どのような展開になるのかわからない。
体内にウイルスが入り込んだのか、気怠さを感じた。足はわずかながらに震えていた。
クスリは「しゅりけん」を使用した。「死滅ウイルスを持った人間1」に命中し、男は完全に息絶えた。
「死滅ウイルスを持った人間」たちは、再び攻撃を仕掛けてくることはなかった。体内に回ったウイルスにより、あの世に旅立ってしまった。
戦闘に勝利したものの、腑に落ちない表情をしていた。腕にかみついた男だけは、自分の手で消したかった。プライドを傷つけた代償は命で償わせなければ気はすまない。
「おなかメーター」が65まで減ったので、「非常用の肉」でお腹を満たすことにした。
体内に毒を入れてしまったからか、これまでで一番まずかった。はきだしそうになるも、どうにかこうにか胃袋に詰め込んだ。
深呼吸をしたのち、ゾーンを進むことにする。前に進まなくては、ゲームをクリアすることはできない。
泥沼のような場所において、敵と遭遇することになった。
「2130年に流行した、殺人ウイルスを持った敵が現れた」
「殺人ウイルス」、人を殺めるウイルスと表記されていることから、相当な威力を持っていると思われる。死滅ウイルスよりは確実に強いと思われる。
幸いにも敵からの先制攻撃を受けることはなかった。「しゅりけん」を投げつけると、血しぶきを上げて絶命した。クスリはなんなく、「殺人ウイルス」を持った敵を退けた。
安堵したのも束の間。数秒後に戦闘画面に切り替わった。
「殺人ウイルスを持った敵が3体現れた」
死滅ウイルスに続き、殺人ウイルスも体内に取り込むことが確定的になった。二つの強力な菌を体内に入れたら、どのようになってしまうのだろうか。
殺人ウイルスに侵されているからか、敵は動くことはなかった。ウイルスを発症すると、動けなくなるのかなと思った。
膠着状態が続くのかなと思っていると、殺人ウイルスを持った敵はおならをする。アンモニア、硫黄ガス、煙、うんこの臭いを全部マッチングしたかのような、異臭が立ち込めることとなった。この世のものとは思えないほど、きつい臭いだった。
鼻の機能を失うのではないかというくらいの悪臭の中、クスリは「しゅりけん」を投げつけることにした。
「殺人ウイルスを持った敵1を倒した」
殺人ウイルスを持った敵は残り2体。こいつらを倒すまで、正気でいられるのだろうか。敵と戦闘しないまま、あの世送りになる可能性はおおいにある。
「殺人ウイルスを持った敵2」は、しょんべんを床にまき散らしていた。おならの悪臭とマッチングして、さらなる臭みを演出することとなった。
「殺人ウイルスを持った敵3」は、大きな咳をする。これは大丈夫かなと思っていると、ガスがこちらに向かってくるではないか。くしゃみで飛ばされてしまうほど、風邪の影響を受けやすいのかな
クスリは気絶しそうになるも、すんでのところで立ち止まった。
「殺人ウイルスを持った敵2」に「しゅりけん」を投げつける。視界は定まっていなかったものの、命中させることはできた。
「殺人ウイルスを持った敵2を撃破した」
残るはあと一体だけ。こいつを早く処理して、闇さながらの世界から脱出したい。
「殺人ウイルスを持った敵3」はアクションを起こさない。一刻も早く脱出する必要に迫られているときに、こういうことをされるのはきつい。
「殺人ウイルスを持った敵3」はじっとしていたのかが嘘のように、俊敏な動きでこちらに近づいてきた。直後にお尻を向けて、すかしっぺを食らわせてきた。
「クスリは380のダメージを受けた」
突然の大ダメージに腰を抜かしそうになった。ウイルスゾーンで大きなダメージを受けるのを想定していなかった。
「ハイドラッグ」でHPを回復したいところだけど、悪臭から一刻も早く脱出したい。クスリは残りの一体に「しゅりけん」を投げつけることにした。
「殺人ウイルスを持った敵3を倒した」
10000の経験値を得て、レベルは40まで上昇。HPの最大値は800となっている。「こうげき」、「ぼうぎょ」などのステータスも大幅に上昇した。
悪臭から解放されたことで、正常なメンタルを取り戻す。あの場所に居続けていたら、気がおかしくなって自害していたかもしれない。
クスリは建物内にある宝箱を発見した(中身は万能薬ですべての異常状態を無効にし、強力な耐性をつけることができる)。このゲームはどういうわけか取りにくいところに配置している。
電流ゾーンで鬼のようなトラップを、仕掛けられていた残像は強く残っている。クスリは目もくれずに、前進することにした。
一瞬の判断ミスが今後に大きな災いをもたらすことになろうとは、プレイヤーは知る由もなかった。