74.初めて勝負下着でキメてみました!
橘の説明によると、インターネットショッピングモールが年一回開催するプレゼンテーションパーティで、MVPを取った店舗を表彰するという。
「中杢さんの功績なんだから、表彰状とトロフィー受け取ってきてよ」
「ええ! そんな大役、無理……それに、ひとりでやり遂げたことじゃないもの。全員で行けないの?」
「ゾロゾロ行くほうがヘンでしょう」
ちひろはどうしたものかと悩み、逢坂の前まで行くと、こう頼み込んだ。
「逢坂社長。一緒にプレゼンテーションに行ってください。今回MVPを受けられたのは、みなさん、そして逢坂社長のおかげです」
すると再び盛大な拍手がわき上がる。
ひとりで行けと返されるかと思ったが――
「わかった。みんなを代表して一緒に出よう」
優しくそう告げられ、ちひろの胸にたとえのようない幸福感がこみ上げてくる。
見ると不貞腐れた顔をしながらも高木も一緒に拍手してくれたし、悠木も嬉しそうに笑っていた。
有吉も、すみのほうで拍手をしてくれている。
「ありがとうございます。本当に……ありがとうございました」
めげなくてよかった。頑張ってよかった。
途中でやめなくて本当によかった。
一生懸命ひとつのことに取り組んだら、ちゃんと結果が出るのだとちひろは知った。
目に熱い滴が滝のように流れ、顔中を濡らす。
それでもちひろは嬉し泣きを止めることなどできない。
優しい拍手に包まれ、ちひろは初めての達成感でいっぱいになった。
§§§
プレゼンテーション当日――
ちひろは、せいいっぱいに可愛く装って出勤した。
大手インターネットショッピングモールのプレゼンテーションパーティは、都心にある高級ホテルで行われる。
十時から受け付け開始、十一時にはMVPが発表され、そのまま懇親会というスケジュールだ。
逢坂とともに九時頃会社を出発し、タクシーで会場に向かうとのことで、通常通りちひろは出勤した。
ちひろは可愛い花や葉の刺繍がされたフェミニンなピンクカラーのワンピースと、白のパンプスといった勝負服に身をかためていた。
「へへ……逢坂社長に、可愛いとか言われたりするかな?」
それだけではない。
実は初めての勝負下着をいうものも身につけている。
(こんな特別な日くらい、ちょっぴりエッチなインナーにしてもいいよね)
何を期待しているというわけではないが、逢坂と一緒にでかけられるこの機会が嬉しくて、見えないところまで頑張ったのである。
もちろん、穿いているのは例のシームレスレースショーツ。
お揃いのブラジャーも生産されたので、上下セットで社員販売割引を利用し購入したのだ。
少々……いや尻部分が半分ほど覆われていないので気になるといえば気になるが、裾がめくれたり、ちひろがこけたりしない限り大丈夫だろう。