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布とポルーナとウンジョウ街 その2

「ではお気を付けてですです~」
 手を振るエレエの横で、籠に乗り込んだ僕は教えられた通りに魔法火力機のスイッチを全開にしました。
 すると火炎魔石から発している炎が一気にでっかくなりました。
 すると、気球……じゃなかった、ポルーナはゆっくりと上昇をはじめました。
「うわぁ! パパすごいです! 飛んでます!」
「すおい!」
「うきゃ!」
 パラナミオが歓声をあげると、僕の横に立っているリョータと、スアの背中におんぶ紐で固定されているアルトも歓声をあげていきました。
 なお、スアにフロントで固定されているムツキだけは絶賛睡眠中です。
 僕達を乗せたポルーナは、一気に上昇していきます。
 あっという間にエレエが豆粒みたいになってしまいました。
「この上昇力すごいな……」
 僕は思わず感動しきりな声をあげました。
 おっと、そんなにのんびりしてちゃいけないな。
「え~っと、雲の近くまで上昇したら停止して北を確認するんだったな」
 僕は上空を見上げながら雲が近づいてくるのを待ちました。

 ……が

「うおおおおおおおおおおおお……さ、寒いぃ!?」
 僕は、思わず自分で自分の体を抱きしめていきました。
 えぇ、油断してました。
 冬とはいえ、割と温暖なこの世界です。
 とはいえ、上空まで同じ気温なわけないですよね……
 上昇するにつれて、どんどん寒くなる気温を前に僕は思わず震え出しました。

 が

 それも一瞬でした。
「あれ? なんか急に温かくなったような……」 
 そんな気がして振り向くと、スアが魔法の杖を掲げていました。
 どうやら、スアが籠を魔法の壁で囲ってくれて、その中を暖めてくれたようです。
「いやぁ、スア助かったよ」
 僕は鼻をすすりながらスアにお礼を言いました。
 するとスアは
「……ごめんなさい。子供達が大丈夫そうだったから、旦那様も大丈夫かと……」
「へ?」
 スアの言葉に、僕は思わず目が点になりました。
 え? こ、こんなに寒かったのに子供達は大丈夫だったの?
「はい、パラナミオは皮膚が硬いですから熱いのも寒いのもへっちゃらです!」
 パラナミオはそう言ってニッコリ笑いました。
 で、他の子供達なんですが……スアによりますと、三人とも自分で魔法を展開して自分の周囲の気温を適温に保っていたんだとか……えぇ、熟睡中のムツキまで……

 なんかですね……魔法使えない僕がちょっと仲間はずれみたいですよね……

 僕がそんな事を考えていると、スアが慌てて僕に抱きついて来ました。
「……旦那様も仲間、よ、大事、よ」
 スアってば、冗談で思った僕の言葉に過剰反応しちゃったらしく、目に涙まで溜めています。
「あ~、ごめんごめん、今のは冗談だから、大丈夫だよ」
 僕は、スアの頭を撫でながら笑顔を向けていきました。 
 そんな僕の笑顔を見たスアも、ようやく安堵したらしく僕に笑顔を返してくれました。

 そんなやりとりをしていると、雲がすぐ目の前に迫ってきました。
「さて、そろそろ北にあるっていう頭を雲の上にだしてる山を探さないと……」
 そう思って周囲をぐるっと見回した僕の視線はとある一箇所で制止しました。

 はい、すぐにわかりました。

 北の方角にですね、ありました。
 頭を雲の上に出している物体が……

 え? 山だろって?

 いえ……あの、どう言えばいいんですかね、それ、僕が知ってる山とはちょっと違うんですよ……
 どっちかというと……塔とでも言いましょうか……
 もし、高層ビルが雲の上まで延びていたらこんな感じなんじゃないのかな~っていった感じの、太くて丸い棒みたいな物体がずど~んと雲の上まで突き抜けているんですよ……
「あれが山なのか、おい……」
 僕は思わずそう呟きました。
 するとスアがですね、僕の方を見つめながら言いました。
「……北のね、ギアナコンベってとこの山はこんな感じよ、全部」
「まじか!?」
 ただ、そのギアナコンベってとこの山も、ここまでは高くはないそうなんですけどね。

 で、まぁ、その塔みたいな山に向かって目を凝らしているんですけど……その周囲には道はなさそうです。
 そりゃそうですよね、こんな切り立った崖みたいな側面に道なんて出来るわけがありません。

 ここで僕は、エレエが言っていた言葉の意味がわかったような気がしました。

 以下回想
『「はい、すべての祭りに何人かの人は参加してます。でも都市としては参加してませんってことですです~」』

 そりゃそうですよね。
 こんなに切り立った山の上にある都市から山の下にある辺境都市にまで販売するための荷物を抱えて大挙して訪れる事なんて出来るはずがありません。
 その逆もまた然りだからこそ、このルシクコンベでは季節の祭りが開催されていないのでしょう。
 で、何人かの人が参加しているっていうのは、恐らく今の僕達みたいにポルーナを使用出来る人達がいて、辺境都市まで降りてきているんじゃないかな、と思ったわけです。

「さて、じゃあ僕達はあの山に向かって行くとしようか」
 僕はエレエに教わった通りにポルーナを操作していきました。
 すると、それまでまっすぐに上昇していたポルーナは、真横に移動し始めました。

 その時でした。

「パパ、何か飛んできます!」
 パラナミオが声をあげました。
 山の方を指さしています。
 僕は慌ててパラナミオが指さしている方句へ視線を向けました。
 すると、そこには鳥が飛んでいました。

 ……ん? いやまてよ……

 よく見ると、あれは鳥ではありません。
 手は鳥ですが、体は人です。
 鳥人とでも言うべきですね。

 えっと……モ●娘のパ●?
 ト●喫茶の店員さん?

 とにかくまぁ、そんな感じの鳥人がですね、どんどん僕達のポルーナに近づいているんです。
 その鳥人は、ポルーナの周囲を飛び回りながら、籠の中の僕達の様子を眺めています。
 しばらくするとその鳥人は、籠の脇に跳び乗ってきました。
「お客様っぴ?」
 その鳥人は、青い長い髪の毛をしている女の子でした。
 上空で寒い中のはずですけど、ヘソ出しのミニスカ姿という、僕が思わず震え上がりそうな格好をしています。 で、その女の子にですね、パラナミオが笑顔で手を振りました。
「はい、ルシクコンベのお客様です!」
 パラナミオが元気な声でそういうと、その女の子はパラナミオに向かってニッコリ笑うと、パラナミオの手に自分の羽を添えて嬉しそうにぴょんぴょん跳び跳ね始めました。
 当然、パラナミオも笑顔で一緒に跳びはねています。
「私はパラナミオです!」
「私はピルピナっぴ」
 二人は名乗りあうと、嬉しそうに笑い合いながらピョンピョン跳び跳ね続けています。

 しばらくパラナミオと一緒に跳びはね合っていたピルピナは、
「お客様、ピルピナが案内するっぴ」
 そう言うと、再び空に飛び上がっていきました。
 僕は、そんなピルピナの後ついていくようにポルーナを操作していきます。
 ほどなくして、雲の上に出たポルーナは、ピルピナに導かれながら水平になっている山の頂上の一角に向かっていきました

 この世界は、やはり僕が元いた世界とはかなり違うようです。
 雲の上なのですが空気が非常に濃い感じです。
 着地して降り立っても息苦しい感じは全然しません。
 だからこそ、さっきのピルピナも飛ぶことが出来るのでしょう。

 僕達は着陸したポルーナの籠から地面に降り立ちました。
 すると、そんな僕達の周囲に鳥人達がどんどんやってきました。
「……どうやら、このルシクコンベって、鳥人さん達が住んでいる都市みたいだね」
 僕がそう言うと、スアも頷いています。
 そんな僕達の前に、他の鳥人達よりも二回りくらい体の大きな鳥人が近寄ってきました。
「こんな街にお客様なぞ何年ぶりかのぉ……ぷひぃ」
 七色の羽を持っているその老婆な鳥人はニコニコ笑いながら僕の方へ歩み寄って来ました。

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