15.とりあえずお仕事を紹介してもらえたようです?
「私、明日から……どう生きればいいんでしょうか? もうすぐ家賃の引き落としもあるんです……」
この二週間は、節約すればなんとかなった。
だが貯金はじょじょに底をついてくるし、家賃は節約のしようがない。
愕然とするちひろの目の前に、長谷川が一枚の紙を差し出した。
「これは……?」
問いかけると、長谷川の眼鏡の奥がキラリと光る。
「ハローワークの本来の業務は、お仕事の紹介ですよ? ちょうど先ほど、あなたに合いそうな仕事が入りました。紹介状を書くので、ぜひ面接を受けてください」
長谷川はにっこりと笑うと、テーブルの上に数枚の紙を差し出した。
「これは業務内容をまとめたプリントです。よく読んでおいてください。早く決まるといいですね」
ちひろは紹介状の入った封筒と一枚の紙を渡され、トートバッグの中にしまい込む。
「面接、頑張ってください」
「はい。頑張ります。ありがとうございました!」
こんなに早く仕事を紹介されるなんて思ってみなかったちひろは、長谷川が救いの神のように見えた。
嬉しくなったちひろは、勢いよく返事をした。
「はい! ありがとうございます」
心にのしかかっていた重石が取り払われたような気持ちになり、ちひろは軽い足取りでアパートへと戻る。
(失業保険が貰えないと聞いたときは、目の前が真っ暗になりかけたけど、すぐにお仕事を紹介してもらえてよかった。長谷川さんのおかげだわ)
§§§
一刻でも早く働きたいちひろは、早速紹介された会社に電話をし、面接の約束を取りつけた。
元同僚たちも続々次の就職先を決めているらしい。
そして失業保険をかけてもらってない元社員は、約半数と判明した。
【目端の利く社員にはちゃんとかけていたみたいなの。気づかなさそうとか、文句を言わなさそうな社員には……】
つまり、ちひろは社長に裏切られていたということになる。
無知とお人好しは紙一重なのだろうか。
さすがのちひろも悔しいという気持ちが沸く。
いや、悔しいというより、悲しいといったほうがいい。
ちひろは最後まで、社長を信じていたから――
ちひろは現状の報告をするため、田舎の母親へと電話することにした。
「お母さん。実は……」
勤めていた会社が計画倒産になったとは言えず、ちひろは言葉を濁す。
「業績がよくなくて会社が縮小になっちゃったの。それで辞めることになったの」
『大丈夫? 就職活動はしているの?』
母が不安そうに、そう訊いてくる。