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エクセレントですわよね? えぇそうですわ その1

 保湿化粧液・化粧落としのクレンジングオイル・リンスインシャンプーを販売し始めたコンビニおもてなしですが、諸般の事情によりまして、最初の販売はほぼ4号店に集中せざるを得ない状態になっていました。
 で、その4号店にはですね、クローコさんのお友達の、ヤマンバメイクをしているダークエルフのお姉様方が連日押し寄せていまして、この3種の新製品が入荷する度に根こそぎ買って行かれているんですよ。
 ただ、4号店だけで販売し続けるのもあれなので、他の店でも少量ずつ扱っているわけです。
 とはいえ、この世界では馴染みのない品々ですからね、なかなか売れていかない……と、思っていたのですが……

 なんか、ですね

 本店で販売しているこの3種類なんですけど、これが売り切れる時間がだんだん早くなってきている気がするんですよ。
 気のせいかな……と思っていたんですけど、しばらくすると、お客さんの中にですね
「あの……りんすいんしゃんぷぅ……っていうの、もうないんですか?」
「けしょうえき……でしたっけ、あれが欲しいんですけど」 
 そんな感じで問い合わせをしてこられる方が増え始めてきたわけです。
 
 こりゃ、じわじわ来てる感じだなぁ

 そう思った僕は、コンビニおもてなし3号店があります魔法使い集落にいきまして、そこの裏山で栽培しているプラントの木を使って、保湿化粧液・化粧落としのクレンジングオイル・リンスインシャンプーの増産を始めました。
 この3号店の裏山の斜面ではですね、プラント魔法をかけた木を接ぎ木して栽培しているんです。
 で、それを使用して試験的に増産をしてみたんですけど、翌朝になると良い感じで実が出来ていました。
 ペリクドさんにお願いしているガラス容器もですね
「あぁ、かなり簡素化して作ってっから、今の倍くらいなら楽勝で作れるぜ」
 そう言ってもらえたので、どうにかなりそうです。

 そんなわけで、じわじわですけど、保湿化粧液・化粧落としのクレンジングオイル・リンスインシャンプーの3種類は売り上げをのばし続けているわけです、はい。

 どうにか増産の目処も立ったので、僕はクローコさんにそのことを伝えました。
 するとクローコさんは、すっごく喜びまして、そこらじゅうを跳びはねたかと思うと、
「店長ちゃん、マジパナイよ! 最高だよ! もうヤバすぎだって」
 って、言いながら僕に抱きついて、ブチュッとキッスを……

 ……どっぼ~~~~~~~~~ん

 しようとしたところで、転移魔法で出現したスアによって、裏の川にまたも放り投げられていったわけでして……

 で、おもてなし酒場に併設されているお風呂に入って落ちついたクローコさん。
 そんなクローコさんは、水に浸かったためにグチャッとなってしまったお化粧を、コンビニおもてなし製の化粧落としのクレンジングオイルで綺麗に落としてきていましてですね、ほぼすっぴん状態でお店の応接室へ入っていくと、室内の机の上に化粧品をずらっと広げて化粧を開始したんです。
「しかし、クローコさんってば、こんだけの化粧品、どうやって手に入れているんだい?」
 机の上を埋めつくしている化粧品を見ながら、僕は感心した声をあげました。
 すると、そんな僕にクローコさんはニッコリ笑うと、
「色々ね、色々。あの同族のみんなから分けてもらったりぃ、コネで仕入れたりぃ、こう見えてクローコってば、結構やるっしょ」
 そう言って、いつもの舌出し横ピースをしていきました。
 で、そんな化粧品の山を見ながら、僕はふと思ったわけです。
「クローコさん……こんだけ化粧品を手に入れることが出来るんなら、これ販売とか出来たりしないのかな?」
 僕がそう言うと、クローコさんはちょっと眉をしかめながら両手をヒラヒラさせていきます。
「店長ちゃん、以外とね、これ、むずいの。材料仕入れるのもタダじゃないしぃ、大量に入手するのって結構手間だしぃ……それにぃ、クローコ1人じゃ販売するほどの数を作れないしぃ、もう1人2人、お化粧に詳しい人がいてさ、手伝ってくれれば、出来なくなくもないかなと、クローコ、思うっしょ」
 そう言うクローコさんなんですが、僕とクローコさんがそんな話をしていると、
「仕入なら、お任せくださればすべて取り仕切って見せますわよ?」
 僕とクローコさんの後方に、ちょうど帳簿を持って来たおもてなし商会ティーケー海岸店のファラさんが立っていたんです。
「え?マジマジ、じゃあさぁ……これ、とかぁ、これ、とかぁ……」
 クローコさんは、そう言いながら、メモ帳を取り出してですね、それをファラさんに見せながらそこに書かれている化粧品の原材料らしい名前を指さしているんですけど、ファラさんはクローコさんの指先を見ながら
「あぁ、それなら入手出来ますよ。あ、それも扱っている商会を知っていますわ」
 と、ことごとくに対して頷いていったわけです、はい。

 そんなわけで、クローコさんの言っていた化粧品の原材料の仕入に関してはクリア出来そうです。
 となると、問題はあと1つ。
 クローコさんのお手伝いを出来る、お化粧に詳しい人を1人か2人、どうにかしないといけないわけなんですけど……はて? 気のせいでしょうか……そう言えば、最近、そんな化粧の濃い人をよく見ている気がしないでもないわけでして……

 ……あ

 思い出した!

 キョルンさんとミュカンさん!
 そう、最近ヤルメキスのスイーツ作成のお手伝いをしに来てくれているバイトのキョルンさんとミュカンさんです。
 あの2人、スイーツ作成作業中は、化粧を落としてすっぴんになり……で、その顔が見られないように、マスクを被って作業をしているんですけど、それ以外の時間は、いつも濃いめの化粧でばっちりきめているんです。
 あそこまで化粧が出来るのならクローコさんのお手伝いも難なくこなせるんじゃないかな、と思った僕はと、いうわけで、翌日、化粧を落とす前のキョルンさんとミュカンさんと、クローコさんを対面させたところ、
「店長ちゃん! この2人のお化粧、マジパナイよ! これならいけるっしょ!」
 興奮した様子でそう言いながら、その場でぴょんぴょん跳びはねていきました。
 で、そんなクローコさんの前で、キョルンさんとミュカンさんはですね、
「私達のテクニックで作成した化粧品をお客様に販売するのですって、ミュカンさん」
「そうですわね、キョルンお姉様。それはとても素敵なことだと、私思いますわ」
 そう言ってですね、化粧品作成のお手伝いをすることを快く承諾してくださったわけです、はい。

 と、言うわけで

 コンビニおもてなしでは、新たにクローコさんを中心にした化粧品作成チームが編成されました。
 リーダーはクローコさんで、スタッフとしてキョルンさんとミュカンさんが加わることになりました。
 化粧品作成作業は、コンビニおもてなしの営業が終了してからということになります。
 バイトのキョルンさんとミュカンさんは、
「時々、殿方と一緒にパーティに参加しなければならない日がありますのよね、ミュカンさん」
「えぇ、キョルンお姉様。その日は作業が出来ませんわね」
 とのことでして、要はまぁ、他のお約束がない限り協力してくれるということになりました。
 ただ、そうなりますと、今までおもてなし酒場の料理を担当してくれていたクローコさんがその役目から抜けざるをえないわけです。
 と、いうわけで、その後釜を探さないといけないわけですけど、まぁ、今はとにかくクローコさん達の化粧品作成を軌道にのせないといけないわけです。
 入れ物は、色々な形の物を準備する必要があるんですけど、今まではクローコさんがすべて木で手作りしていたそうなんですよね。
 と、いうわけで、この化粧品の入れ物の作成はルア工房にお願いすることにしました。
 で、ルアはですね、クローコさんが自作していた化粧品入れを確認しながら
「ぜひやらせてもらうよ!」
 って満面の笑みでした。

 そりゃそうですよね。
 ルア自身、クローコさんの化粧品の熱狂的な愛用者ですからねぇ。

 で、3人の作業場は、スアの巨木の家に巨大な実を作らせてですね、その中を作業所として使用してもらうことにしました。
 中に準備した机やイスなどの用品についても、おもてなし商会ティーケー海岸店のファラさんに購入・運び込みをすべてお願いした次第です。
 
◇◇

 順調に、化粧品の作成作業が進み始めたその夜ですが……

 僕は、スアと一緒にスアの研究室にいました。
 子供達を起こしてしまわないようにですね、最近の僕とスアは、この研究室の中にある簡易ベッドの上で、次の子作りに励んでいるわけです、はい。
 で、今日もその時間がやってきたわけなんですけど、スアにキスした僕は、あることに気がつきました。
「……スア、ひょっとして保湿化粧液使い始めたかい?」
 いえね、この化粧液なんですけど、わずかになんですけど独特な香りがするんです。
 で、その香りがスアの顔から漂ってきた気がしたわけなんですけど……
 それを伝えると、スアは大慌てしながら顔を左右に振ってですね、
「……違う、し……気のせいだ、し……お試しだ、し……ちょっと使ってみただけだ、し……」
 ……と、いうわけで、スアもこれを愛用し始めたみたいです、はい。
「……ち、違う、の!……愛用、ちがう、の……」
 さたに必死になってそう言うスアですけど、むしろその仕草をすればするほど肯定しているも同然なわけでして……
 で、まぁ……僕的な意見を言わせていただけばですね、
「スアは可愛いから、化粧をしていてもしていなくても可愛いじゃないか」
 ってなわけですよ。
 そんな僕の一言に、スアは真っ赤になりながらも笑顔になって、体をくねりくねりさせていきました。

 そんなわけで、この夜はいつもの五割増しくらいで、激しかったわけでして……

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