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びゅーてぃふるひゅーまんらいふでしたっけ その3

 で、再度川に叩き落とされてしまったクローコさんは、ガタガタ震えながら再度お風呂につかってですね、しっかり落ちついてから巨木の家に戻って来ました。
 大丈夫、今度はちゃんと着ていました。
「でね、店長ちゃん、これなのよ、これ」
 そう言ってクローコさんが持って来たのは、お風呂に常備しているリンスインシャンプーでした。

 ボトルタイプのこれですけど、これ、我が家では普通に使用している品物です。
 商品ではなく生活必需品としてですね、元の世界にいたときにホームセンターのダイキンのポイント5倍デーの日にまとめ買いして保存していた品物です。
 で、このリンスインシャンプーですけど、無添加商品だったおかげでかプラントの木で増産することが出来たもんですから、あくまでも家庭用消耗品として増やして保管・使用しているんです。
 ちなみに、このリンスインシャンプーは、おもてなし寮の共同浴場には同じ物を置いていますが、おもてなし酒場に併設されている宿屋の共同風呂には置いていません。
 最初、リンスインシャンプーを置いていたら全部持ち逃げされちゃったもんですから、共同風呂にはこの世界で一般的な石けんを置いているんですよね。
 あ、ちなみに持ち逃げ犯は、スアの追跡魔法でしっかり見つけ出して辺境駐屯地のゴルアに引き渡しておきましたけどね。

 で、話が戻りますが、リンスインシャンプーを手にしたクローコさんが、非常に興奮しているわけです。
「店長ちゃん、あの化粧落としといい、この髪の毛を洗うための液体といい、チョベリグだよ!チョベリグ!絶対売るべきだってば!」
 僕的に、妙に懐かしい単語を合間に挟みながら熱弁を振るうクローコさん。
 そう言えば、このリンスインシャンプーを始めて使用したシャルンエッセンス達が
「なんてすごいのでしょう、これ」
 とか言ってた気がしないでもないんですけど、僕的にはこれ、普通に使用している物って感覚が強かったのと、あとスアが全然興味を示していなかったもんですから、販売するほどの物じゃないんだろうなぁ、って思ってたんですけど……よく考えたら、スアって家電製品とか薬品類にはすごい勢いで食いついてくるんですけど、化粧品や洗剤、シャンプーなんかのことで僕に何か言ってきたことって、あんまりなかったなぁ、と……あれって、ただ単にスアの感心がない分野だったってことだったのかも……
 で、まぁ、クローコさんがですね、
「超売ろう!超買うし!」
 って、猛プッシュしてくるもんですから、
「じゃあ、商品化を検討してみようか」
 ってなったわけです。

 で、メイク落としのクレンジングオイルですけど……もう、これはいちかばちかで、プラントの木にぶち込んでみるしかありません。
 一応無添加の製品なんで、うまくいってくれるといいなぁ……と、思いながら翌朝を迎えましたところ……

 無事、クレンジングオイルの実がなっていました。

 朝、プラントの木の一角に新たに出来上がっていた実をですね、牙目クモに収穫してもらってそれを割ってみますと、中にオイルがしっかり詰まっていたわけです、はい。
 ついでに保湿化粧液もプラントの木にぶち込んでおいたのですが、こちらも無事保湿化粧液の実が出来上がっていました。
 この保湿化粧液の方もですね、風呂上がりのクローコさんが
「何これ!?パナイわ!パナイよ!店長チャン!お肌がしっとりすべすべっぽい!」
 って、感動仕切りだったんですよね。

 こうして中身は無事に出来上がったわけですが、今度はそれを入れて売るための容器が必要になるわけです。
 で、ポンプ式の入れ物を作成するとこの世界ではコスト的に高くなってしまいますので、すべて普通のガラスの入れ物に入れることにしました。
 ガラスと言えば、発注するのはブラコンベのペリクドさんところなわけです。ペリクドガラス工房です。
 で、早速僕は転移ドアをくぐってブラコンベのペリクドさんの所へ見本を持って行きました。
「あぁ、これならそんなに難しくないな」
 僕が持って来た保湿化粧液が入っていたガラス瓶の様子を確認しながらペリクドさんは、これの量産をすんなり承諾してくれました。
 で、この容器にですね、保湿化粧液とメイク落としのクレンジングオイルとリンスインシャンプーを入れて販売することにしました。
 ただ、入れ物がまったく同じだと混乱してしまいますので、何か区別しやすくしておかないとなぁ……
 僕がそんなことを考えていると、ペリクドさんが
「なら、色をつけるか」
 そう言ってくれました。

 その結果、

 保湿化粧液の入れ物は青色のガラス
 化粧落としのクレンジングオイルの入れ物は赤色のガラス、
 リンスインシャンプーは黄色のガラス、と、それぞれ異なった色をしたガラスで生成してくれることになりました。
 いやぁ、しかし、ガラスにこうして色を付けることまで出来るなんて、さすがはペリクドさんだなぁ、と感嘆しきりだった僕です。
 王都でも人気のあるガラス工芸作家なのも、ほんと頷けます。

 で、瓶を使い捨てにしてしまうのはもったいないので、それぞれの実をですね「詰め替え用」として販売することにしました。
 詰め替え用の実には、荷札を付けておきまして、それに中身を記載して販売することにします。

 ちなみに、この実をプラントの木から収穫してくれる牙目クモ達なんですけど、
「ここに出来た実は、この籠にいれてね」
 と、リーダーの牙目クモに伝えておけば、きちんとそのとおりに分けて入れてくれますので、収穫した実がどれが何の実だかさっぱりわからないという事態は避けられている次第です。

 そんなわけで、どうにか初日に販売するための商品の準備が出来上がったのですが、その品をコンビニおもてなし各支店用に仕分けしようとしていた僕のところにですね、
「店長ちゃん、ちょ、まぁてよ!だってば」
 って言いながら、クローコさんがすさまじい勢いで転移ドアをくぐって駆け込んで来ました。
 よく見ると、手には大きながま口の財布を握りしめています。
 で、そんなクローコさんなんですが、僕の前に駆け寄ってくると、
「店長ちゃん、クローコ一生のお願い!今日の商品、全部買うし!売ってだし!」
 って言いながら、ヤルメキスばりの土下座をしていたんですよ。
 よく聞いて見ると、クローコさんってば、お化粧仲間が結構多いそうでして、みんなに是非とも勧めたいそうなんですよ。
「みんなにね、メッチャ勧めるし!絶対また買わせるし!」
 必死に頼みこんでくるクローコさん。
 まぁ、初回の販売数は少なめだし、それにクローコさんの知り合いに勧めてもらえれば、お化粧とかに興味のある皆さんが愛用してくれてリピーターになってくれるかもしれませんしね。
「今回のは社員価格……から、もう少し安くして売って上げてもいいかな。みんなに宣伝してくれるわけだしね」
 僕がそう言うと、クローコさんはパァっと笑顔を浮かべまして
「店長ちゃん!だから好き!」
 って言いながら、僕の頬にブチュ~っとキッスを……


 どっぼ~~~~~~ん


 ……しようとしたところで、転移して駆けつけて来たスアによってですね、またぞろ裏の川に放りこまれて……

 ってなわけで、化粧落としのクレンジングオイルや保湿化粧液、リンスインシャンプーは、翌日から店舗売りが始まりました。
 で、最初はやはり馴染みがない品なもんですから動きは鈍かったんですよね。
 まぁ、徐々に浸透して言ってくれればいいか……僕がそんなことを思っていると、
「店長ちゃん!マジやばいし!品物足りないし!」
 って、クローコさんがすごい勢いで本店に駆け込んできました。
 何事だ!?って思いながら、僕はクローコさんに続いて4号店に行ってみますと……なんということでしょう……

 4号店の中には、クローコさんのクローンみたいな、ヤマンバメイクをしているダークエルフ達が山のように押し寄せているではありませんか……
「おいおい、クローコみたいなのがこんなに居るのって、アタシも長いこと存在してるけど始めて見たぞ」
 いつものように温泉饅頭を店頭で製造販売しているララデンテさんも呆れ笑いをしながら言っています。
 で、皆さんですね、
「あの化粧落とし超欲しいし!」
「ってか、もっとないとかありえな~い」
「マジ、やばいんだって、あれ」
 と、まぁ、レジに殺到して一昔前のギャル言葉を連発しているわけです。
 これにはレジ作業をしているクマンコさんやツメバもお手上げ状態なわけです、はい。
 僕はすぐに他の店舗を駆け回ってですね、保湿化粧液ら3商品の店頭在庫をすべて回収し、魔法袋にいれて4号店へと持って行きました。
 ……で、まぁ、当然それでも足りないわけです。
 ヤマンバメイクなダークエルフの皆さんは、これにはやはりブーイングの嵐だったんですけど、クローコさんがですね、
「そんな態度してると、もう売らないし!」
 って、逆ギレしたんですよね……するとダークエルフの皆さんはですね、
「……ちょっとやり過ぎたし」
「……ゴメンだし」
「……悪かったし」
 一転して謝ってくれたわけです。

 ……ただ、お客さんにあの口の利き方はちょっとねぇ……
 事態が収まった後で、僕はそのことに関してクローコさんに少し注意しておきました。
 で、クローコさんも
「それは、マジ悪かったし……ごめんだし」
 って、わかってくれました。

 と、いうわけで、新製品の保湿化粧液ら3商品は、しばらく4号店に品物を集中させて対応しないといけないな、と、思った次第ですはい。

◇◇

 で、その夜、スアにですね
「スアはこの化粧品には興味がないの?」
 って聞いて見たところ、
「……私は、あんまり必要性を感じない、かな」
 って言いました。
 言われて見れば、確かにスアってばお肌がすっごくぴっちぴちなんですよね。
 見た目が幼いうえに、お肌まで見た目相応って……ある意味すごいよな、と思った僕だったわけです。
 そんな僕に、スアはニッコリ笑って
「……まだ若いから、ね」
 そう言いました。
 確かに、二百才を越えていたとしても、エルフのスアは……
「……二百才違う、の」
「で? でも……」
「……違う、の!もっと若い、の!」
 僕に、必死に異議を申し立てるスア。
 そう言いながら、僕をポカポカと叩いてきます。
 でもまぁ、そんなスアもとっても可愛いわけです、はい。

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