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びゅーてぃふるひゅーまんらいふでしたっけ その2

 翌日。
 いつもの朝のお弁当作成作業が終了したところで、僕は店の奥にある倉庫へと移動していきました。
 この中に保存してあるコンビニおもてなしの在庫の中に化粧品が残っていたはずなんですよ。
 で、探すことしばし……
 段ボールの山の中から、ようやく化粧品の入った段ボールを見つけ出すことが出来たんですけど、その中に入っていたのって

 メイク落としのクレンジングオイル
 保湿化粧液

 この2種類だけだったんです。
 もともとコンビニおもてなしは化粧品には力を入れていませんでしたから、まぁ、仕方が無いといえば仕方がないんですけどね。
 でもまぁ、こんな物でも、お化粧女子会で盛り上がっているクローコさん達の役に立てば良いなと思った僕は、今日の夕方頃に開催されるであろうクローコさんの女子会に差し入れてみようかなと思った次第です。

◇◇

 で、今日は学校がお休みの日なもんですから、パラナミオは赤ちゃん達の相手をしてくれていました。
 巨木の家のリビングの上に絨毯を敷いて、その上にみんな集合しています。
 ずっと眠っているムツキは、マルチクーハンの中でスヤスヤ寝息をたてています。

 ちなみに、このマルチクーハンですけど、倉庫の中にあった在庫の中から発見したんですよね。
 で、コンビニおもてなし本店で試験販売してみたところ、飛ぶように売れたんです。
 で、今はこれをテトテ集落のお婆さま方が手縫いで作成してくださっています。
 見本を1つお渡ししたらですね、それをお手本にしてちゃちゃっと作り上げてしまったんですよ。
「裁縫仕事はお手のものですわよ」
 そう言って頼もしく笑ってくださるテトテ集落のお婆さま方です、はい。
 布はこちらから提供しますので、完成品をおもてなし商会で買い取る際には布代を差し引いた金額で買い取りさせてもらっています。
 ちなみに、使用している布ですが、今はブラコンベの布市場で仕入れているんですけど、ひょっとしたらドンタコスゥコに頼んだらもう少し安く手に入るかも、と思ったりもしていますので、次回ドンタコスゥコがやって来たときに相談してみようかなと思っている次第です。

 で、ムツキが眠っている横で、パラナミオが座っていまして、その前にリョータとアルトが並んでいます。
「はい、2人とも、ここまで来てください!」
 パラナミオが笑顔で両手を差し出します。
 すると、リョータとアルトは笑顔で、その手にタッチしようと進んで行きます。
 リョータは、もうしっかりと歩けますので難なくパラナミオの手にタッチしていきます。
 アルトは、まだハイハイが出来始めたばかりですので、少し時間がかかってしまいます。
 脳内年齢はかなり高い2人ですけど、身体的な成長はゆっくりめのようですので、そのおかげで、こういった微笑ましい光景を見ることが出来るわけです。
 ただ、時折僕の脳内に漏れ伝わってくる思念波によりますと
「……も、もっとスムースに歩くためには、脚力の増強が必要だと……」
「いけませんわ……パラナミオお姉様をこんなにお待たせしてしまうなんて……」
 なんてことを思っているみたいなんですよね……
 まぁ、でも、そんな2人を相手にしているパラナミオは、常に笑顔で
「はい、今度はこっちですよ!」
 と、言いながら頑張っているわけです。
 そんな、お姉さんしているパラナミオ。
 そんなパラナミオを追いかけているリョータとアルト。
 うん、なんか微笑ましいな、と、思ったわけです、はい。

 で、お昼の休憩の際にそんな子供達の様子を見て元気をもらった僕は、いつも以上に元気にお仕事を頑張りました。

 で、夕方です。
 店の片付けを終わらせた頃合いに、
「店長ちゃん、ちーっす!」
 いつものように、舌だし横ピースをしながらダークエルフのクローコさんがやってきました。
 で、それを待ち構えていたかのように、コンビニおもてなし本店の向かいにありますルア工房からルアが駆けてきます。
 で、本店の中ではヤルメキスとテンテンコウ♀がお待ちかねです。
「ヤルちゃまいえ~い!」
「い、い、い、いえ~い、で、おじゃりまするぅ」
 と、ハイタッチを交わし合う女子会メンバー一同は、ハイタッチ交換が終わると、
「じゃ、今日もお店が始まるまでの時間で、女子会っちゃおうねぇ、キャハ!」
 クローコさんは、ご機嫌な様子で笑いながらおもてなし酒場へ向かっていきました、

 で、

「あ、クローコさん、ちょっと待って」
「ん? 何々、店長ちゃん?」
「これ、よかったら試して見てよ」
 そう言って僕は、朝のうちに見つけておいた化粧品をクローコさんに渡しました。
「……店長ちゃん、何これ?」
「一応、化粧落としと、化粧水らしいんだけど……」
「ふ~ん……入れ物、マジぱないね、これ」
 そう言いながら、僕が手渡した化粧品をマジマジと見つめていたクローコさんは、
「うん、お試しは大事っぽい。店長ちゃん、マジあり!」
 そう言って、再度舌だし横ピースを決めていきました。
 ……まぁ、あの挨拶は店員向けにしかしてないみたいだし、良いんですけどね。

 で、化粧品をクローコさんに渡した僕は、明日の弁当作成に使う材料の仕込みをしておこうと思って、厨房で作業を始めたのですが……程なくして、そこにクローコさんが駆け込んで来ました。
「店長ちゃん、何これ!?」
 そう言うクローコさんの手には、僕がさっき渡したばかりの化粧落としが握られています。
 
 で

 そんなクローコさんの顔を見た僕は、思わず噴き出してしまいました。
 店にやって来たときはですね、ばっちりヤマンバメイクでキメてたクローコさんなんですけど、


 その顔の右半分の化粧だけがごっそりなくなっているんです。


 で、そんなすごい顔をしているクローコさんなんですけど、
「店長ちゃん、何これ、パナ過ぎ、マジパナ過ぎ」
 そう言いながら、僕に詰め寄ってくるわけです。
 で、あまりにもクローコさんが真剣な顔をして僕に詰め寄ってくるもんですから、何かまずかったのかな、と考えた僕は、
「な、なんか合わなかった? だったらごめん」
 って言いながら謝ったんですけど、そんな僕にクローコさんはいいました。
「逆だし、これ、パナ過ぎでチョー最高……もっとない?」
「へ?」

 で、落ちついて、クローコさんの話をよく聞いてみますと……
 化粧落としのクレンジングオイルを試して見たところ、化粧があっさり取れたもんだから、びっくりするやら唖然とするやら感動するやら……だったそうなんですよ。
 ちなみに、この世界にある化粧落としって、粉状なんですよね。
 で、それをお湯で溶かしてから、それを化粧を施している場所にすり込んでいきそのままゴシゴシと強くこするそうなんです。
 ところが、僕が渡した化粧落としって、ポンプ状になっている容器を押して取り出した液体を化粧を施している場所にぬりそれを拭き取るだけで、ごそっと化粧が取れちゃうわけですよ。

 化粧落としの在庫を確認してみましたらあと20本ほどあったんで、クローコさんにそれを渡したところ、
「店長ちゃん、クローコってばマジ感激ぃ!」
 って言いながら僕に抱きついて来たんですけど、感激のあまりそのまま僕の頬にキスを……

 どっぽ~ん……

 ……しようとした瞬間にですね、僕の後方に転移してきたスアの転移魔法によって裏の川に放り込まれていったわけです、はい。

 で、びしょ濡れで戻って来たクローコさん、
「お風呂入らないと死ぬしぃ」
 って言いながら泣きそうな顔をしていました。
 仕方ないので、おもてなし酒場に併設している温泉風呂を使わせてあげることにしました。

 しかしまぁ、この化粧落としってそんなにすごい物なんだなぁ……この世界のお化粧事情に精通しているクローコさんがあんなに感動するくらいだし……
 で、ひょっとしたら、これを量産出来れば、コンビニおもてなしで販売出来るかも……
 そんなことを思っていると、何やら誰かが走ってくる気配が……
「て、店長ちゃん!」
 そう言って、姿を現したのは、素っ裸のクローコさんでした。
「て、店長ちゃん、これ、何!?」
 血相を変えているクローコさんが手に持って……

 どっぽ~ん……

 ……いる物を、僕に見せようとしたクローコさんなんですが、僕の横にいたスアの転移魔法によって、再び裏の川に放り込まれていったわけです、はい……
 いきなり目の前から消えちゃったもんだから、クローコさんが何に興奮していたのかわかりませんが……はてさて……

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