びゅーてぃふるひゅーまんらいふでしたっけ その1
どうにか神界問題も解決したコンビニおもてなしです。
「でも、スア。あの薬全部渡しちゃってもよかったの? 研究とかのために残しておきたかったりしなかったのかい?」
僕がそう聞くと、スアはニッコリ笑っていいました。
「……渡したのは厄災魔獣のだけ、よ」
と
……うん?
どういうことだ?
僕が怪訝そうな表情を浮かべている僕に、スアは言いました。
「……厄災魔獣、の、使役魔獣から作った薬、は全部残ってる、よ」
「へ? そうなの?」
スアの言葉に、僕は思わず目が点になりました。
ただ、スアの話によりますと、使役魔獣の肉は素材としては、厄災魔獣の肉に比べて相当劣っているらしく、厄災魔獣の粉薬ほどの効能はないそうなんですよね。
とはいえ、この世界に存在している素材よりは相当優秀な素材であるのには代わりないみたいです。
ですので、かなり高性能な薬を生成することが出来るそうなんですよ。
で、スアは
「……この薬を研究して、もっとすごい薬を精製する、の」
そう言うと、気合い満々の様子で研究室へ向かって行きました。
当然、抱っこひもで前にムツキ、後ろにアルトをくくりつけた状態で向かって行くわけです。
ムツキはグッスリ眠っていますけど、アルトは興味津々な様子で目を輝かせています。
……こうしてアルトの規格外度がさらに増加していくんだろうなぁ……ははは。
◇◇
そんなコンビニおもてなし本店ですが、本店の営業が終了した後、面白い光景が繰り広げられています。
コンビニおもてなしの営業が終了しますと、併設されていますおもてなし酒場がほどなくして開店します。
で、そのおもてなし酒場の店員はですね、四号店で働いているダークエルフのクローコさんを責任者として、イエロとセーテンが酒を飲みながらそのお手伝いをしています。
で、開店前のおもてなし酒場の店内でですね、最近、クローコさんを中心にしてその周囲をヤルメキスやルア、テンテンコウ♀が取り囲んでいるんです。
「ヤルちゃん、顔の作りイケてんだから、こうしたらマジパナイって」
クローコさんはそんな事を言いながらヤルメキスの顔に何か塗っています。
どうやらヤルメキスの顔にお化粧を施しているようです。
私服のクローコさんは、僕が元いた世界で言うところのヤマンバ風のすっごいど派手な化粧をしています。アクセサリーもじゃらじゃらつけてて、着てる服もどこかジュリアナなボディコン風なんです。
でも、そんなクローコさんですけど、人にお化粧をしてあげるときはですね、自分がしているお化粧を押しつけるのではなくて、その人にあったお化粧を施してあげたり、お化粧を提案してあげているんです。
そんなクローコさんの元にはですね、
出産したけど、まだまだ綺麗でいたいと思っているルア
新婚の旦那さんのためにもっと綺麗になりたいと思っているヤルメキス
とにかく、綺麗になりたいテンテンコウ♀
この3人が集合していてですね、酒場が始まるまでの間、店内のテーブルの一角を使ってお化粧トークをメインにした女子会を繰り広げているんです。
クローコさんが使用している化粧品は、すべてこの世界の物です。
植物から抽出した色素を使用した物や、岩石をすり潰した物など、この世界で販売されている化粧品のほぼ全てを網羅しているんじゃないかってくらい、すごい数の化粧品を所持しているクローコさんでして、それを駆使しながらあれこれみんなにしてあげているんです。
「に、に、に、似合っているでごじゃりますか……こ、この、お化粧」
そう言って、皆の方を見ていくヤルメキス。
で、僕もその時、たまたま食材を持って来てたもんですから、そのヤルメキスの顔を拝見しちゃったんですけど……えぇ、すごく良い感じにまとまっていると思います。
童顔なヤルメキスのアイラインを際立たせて、目尻を少しシャープにした印象のお化粧なんですけど、ヤルメキスがどこか艶っぽく見えています。
「うわぁ、いいじゃないか! こ、今度にお願い出来るかな?」
そんなヤルメキスの顔を確認したルアが、興奮した様子でクローコさんににじり寄っています。
しかし、この世界でもお化粧って結構流行っているんだろうか……
僕の周りでお化粧らしいお化粧をしているのって、クローコさんに出会う前だと、今は辺境駐屯地の隊長をやっているゴルアと、副隊長のメルアくらいしか記憶に……おっと、まだ実態をもってた頃のダマリナッセも結構きつめな化粧をしてたっけな。
バトコンベって辺境都市に行ったときには、女性の人が化粧をしていたような気がしないでもないんですけど、このガタコンベの女性はほぼすっぴんなんですよ。
スアも当然お化粧はまったくしません。
純和装の魔王ビナスさんは化粧してそうなんですけど、
「私、くっきりとした顔立ちですので」
そう言ってニッコリ微笑んでいたっけ……
元貴族のシャルンエッセンスと、そのメイド達も化粧はしてないんですよね……いつも身ぎれいにはしているんですけど、
「まだ、お化粧に気を使う年齢ではございませんですわ」
なんだそうです、はい。
と、まぁ、そんな感じで、おもてなし酒場が開店するまでの時間のお化粧女子会を満喫しているクローコさん達なわけです。
(……そう言えば、コンビニおもてなしの在庫の中に化粧品も少しあったっけ)
僕は、そんなことを思い出しまして、今度それを探し出して女子会に差し入れして上げようかな、なんて思った次第です、はい。
◇◇
で、そんな女子会を見届けた後巨木の家に戻った僕は、みんな一緒に夕食を終えまして、いつものようお風呂に入っていました。
すると、
「パパ、一緒にはいります!」
そう言って、パラナミオが笑顔でお風呂に駆け込んできました。
すでに素っ裸のパラナミオは、体を洗うとすぐに湯船に浸かってですね、僕の横に寄り添ってきました。
その時、お風呂の脱衣所に人の気配がしました。
この感じはあれです……セーテンに間違いありません。
いつも僕がお風呂に入っていると
「だ~り~ん、一緒にはいらせて~キ!」
って言いながら湯船に向かってルパンダイブしてきて、その後転移してきたスアによって外の川に放る込まれるのが定番のセーテンです。
でもですね、最近わかったのですが、セーテンは僕がパラナミオと2人でお風呂に入っていると邪魔をしにこないんですよ。
で、今回もですね、一度お風呂に乱入して来かけはしたんですけど、僕の隣にいるのがパラナミオだとわかったのか、セーテンはそそくさと出て行ってしまいました。
さすがのセーテンも、パラナミオには嫌われたくない……そんなとこでしょうかねぇ。
で、パラナミオは僕を見上げると、
「パパ、パラナミオはですね、もっともっと頑張っていっぱいいっぱい色んな事が出来るようになりますからね!」
元気にそう言ってくれまして、
「うん、頑張るんだよ。パパも応援してるからね」
僕がそう言葉をかけると、パラナミオは元気に頷きました。
で、その跡はいつものように、スアの真似をして僕に向かって目を閉じてきたパラナミオ。
ホント、おませさんですよねぇ。
まぁ、ちゃんといつものようにほっぺにチュってしてあげましたけどね。
そしたらですね、そんな僕の脳内に
「お父様、今度はアルトにもほっぺにチュをしていただきたいですわ」
と、アルトの思念波が届いてきまして……
いやはや、ホントおませさんが多いですね、僕のお子様達には。
しかし……パラナミオあたりがお化粧したらどんなになるんだろう……
ちょっとそんな事を考えた僕ですけど……やっぱりパラナミオは今のままがいいかな、と思ったわけです、はい。