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効き過ぎちゃって…… その3

 スアが厄災魔獣の肉を使用して作成した天界人にもよく効く粉薬をですね、神界人のマルンが購入したいと申し出てきたのに対して、コンビニおもてなしの卸売り担当であるおもてなし商会のファラが結構な額を言ったみたいなんですよね。
「ファラ、一応相手は神様みたいな人なんだろ? あんなに強気なことを言っちゃってもよかったのかな?」
 僕は、ちょっと心配になってファラに聞いたんですけど、そしたらファラは楽しそうに笑い出しまして
「タクラ店長、ご心配なさらなくても大丈夫ですわよ。あの者達は神界という、この世界よりも上位の世界に生まれ住んでいるだけで偉そうにしてるだけなんですから。なんか文句を言ってきましたら、私がまた神界で一暴れして思い知らせてやりますわ」
 そう言い終えると、なんかまた楽しそうに笑いだしたんですよ。
 で、僕的に引っかかったのは「また神界で一暴れ」の「また」の部分です。
 これって、リピート? アゲイン? と、とにかく以前にも神界で暴れたことがあるって事ですよね?
 僕が目を丸くしながら聞くとですね、ファラさんはクスクス笑いながら、
「うふふ……それに関しては黙秘させていただきますわ」
 って……どこかで聞いたような言葉を口にしたわけです、はい。

 で、翌日再びマルンがやってきたんですが、
「……ふ、ファラさんの条件で、上司から許可を取り付けてきましたので……」
 って、憔悴仕切った様子でそう言ってきました。
 僕の横で、そんなマルンと相対峙しているファラさんはですね、こっそり僕に向かって
『ほらね』
 とばかりにウインクしてきました。
 
 ……なんといいますか、最強のネゴシエーターとでもいいましょうか……とにもかくにも、ファラさんが味方でよかったとつくづく思ったわけです、はい。

◇◇

 というわけで、スアが厄災魔獣の肉から作成した粉薬をすべてマルンに引き渡し、その代金を受け取りました。
 で、神界のお金をもらっても、この世界で使えるのかな……とか、そもそも神界にお金なんてあるのかな? なんてあれこれ考えていたんですけど、ファラさん曰く、
「宝珠で支払わせましたわ」
 とのことでした。
 で、ファラさんから代金としてマルンが置いて行った宝珠を受け取ったんですけど……
「え? これ?」
 それが僕の第一声でした。
 ……確かに綺麗な宝石みたいな石なんですけど……思ったよりもすっごい小さいんです。
 テニスボールくらいの大きさなんですよね。
 だって、神界のマルンが一度神界に戻って上司の許可を得てようやく持って来た品物なんですよ?
 それこそ、浦島太郎の大きなつづらじゃありませんけど、結構な量を想像するのが普通じゃないですか?
 で、ですね、ファラさんが言うには、
「これ1個を本気で売却しようとしたら、王都の国家予算10年分じゃあたりませんわよ」
 だそうなんですよね……
 その言葉に僕が唖然としていると、僕の横に立っているスアがですね、
「旦那様……あの、よかったらこの宝珠、もらってもいい?」
 なんか、おずおずとしながらそう聞いてきました。
 で、スアがそう言うのなら、僕も拒否するわけがありません。
 何しろあの粉薬はスアでなければ作れなかったわけですしね。
 それにスアは、普段からコンビニおもてなしで販売する薬をせっせせっせと作成してくれてもいますしね。
 お金で買う必要がある材料はすべてファラさんを通して仕入として購入していますけど、それ以外にもスアはちょくちょく薬草や薬品の材料を入手するためにあちこち出かけて行ってくれてもいますから。

 で、スアは、その宝珠を僕から受け取ると研究室に戻って自分の杖を持って来ました。
 スアの杖って、水晶樹っていう特殊な樹の枝を軽く加工して使用しているそうなんですよね。
 なんかウネウネと枝が絡み合った本体の上部から水晶がニョキッと頭を出している形をしているのですが、スアは受け取った宝珠をその水晶に押し当てると詠唱し始めました。
 すると、宝珠は水晶の中にみるみる吸い込まれていきまして、気がつけば水晶の中で綺麗に輝いているではありませんか。
 その出来上がりを確認していたスアは
「……うん、いい感じ、ね」
 そう言って、嬉しそうに微笑みました。
「へぇ、その水晶の中に宝珠を入れると何か効果があるのかい?」
「……うん、あのね、魔力をとっても増幅させることが出来る、の」
 僕の質問に、スアは嬉しそうに微笑みながらそう言いました。
 って、いうか、今のスアの魔法がさらに増幅されるっていわれても……元がすごすぎますので、どれくらいすごいのかちょっと想像がつかないわけですよ。
 すると、スアは、
「……具体的に言うと、ね……ドゴログマに侵入しても、神界にバレなくなるくらい、なの」
 そう言って、ニッコリ笑いました。

 ……って、

「ちょっとまって、スア……今回、マルンに約束したんじゃなかったっけ? ドゴログマに行く時は必ず事前に許可をとるって……」
 僕がそう言うと、スアは
「……ばれなきゃいいんで、しょ?」
 そう言って、再びニッコリ笑いました。

 ……うん、これ以上何を言っても駄目なようです。
「とりあえず気をつけて……絶対に無理はしないでよ。心配だからさ」
 半ば諦めながらそう行った僕。
 そんな僕にスアは、
「……心配してくれてありがと旦那様……愛してる」
 そう言いながら僕に向かって目を閉じました。
 はいはい、おねだりですね。
 僕は、ファラさんが気を聞かせて書類を見るフリをしてくれているのを確認してから、そっとスアに口づけていきました。

◇◇

 で、スアによるとですね……
 今まで、ドゴログマってとこに行ったときはですね、神界にバレないように必要最低限の活動だけして、そそくさと帰ってきていたそうなんですけど、
「……この宝珠入りの杖があれば、侵入がばれなくなるから、色んな事が出来る、よ」
 そう言いました。
 で、スアはですね
「……期待してて、ね」
 そう言って再び笑ったわけです、はい。
 ……スアが何を持って帰ってくるのか、今からドキドキな僕だったりします、はい。

 ただ、今は産まれて間もないアルトとムツキのお世話をしないといけないので、滅多にお出かけしないスアです。
 しても、こないだのようにちょっと行ってすぐに帰ってくるのがいつもなんですよね。
 で、以前、リョータがまだ赤ん坊だった頃のように、抱っこひもを使っているスア。
 基本は、ムツキを抱っこして、アルトをおんぶしています。
 スアのミニマムボディが、2人の赤ん坊を抱えているとすごく大変そうに見えるんですけど、なんでも重力軽減魔法を常時発動させているので、重くはないそうなんですよ。
 なので最近のスアは、2人を前後に抱えながら

 薬を作ったり
 洗濯したり
 掃除をしたり
 コンビニおもてなし本店が忙しい時には、僕がお願いする前に、アナザーボディを店内に派遣してくれたりもするわけです。

 ホント、良妻賢母の鏡ですね。
 さすがスアです。
 スア、最高です。
 スア、ラブリーです。
 スア、キュートです。
 スア、愛してます。

 と、僕が脳内でスアのことを褒めまくっていると、スアってば顔を真っ赤にしながら
「……もう、旦那様ったら……恥ずかしい、よ……嬉しいけど、さ」
 そう言いながら照れり照れりと体をくねらせていきました。
 でもまぁ、事実ですしね。

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