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エクセレントですわよね? えぇそうですわ その2

 巨木の家の横に設置した巨木の実の作業所でクローコさんを中心にした化粧品作りが始まって数日経ちました。
 おもてなし商会ティーケー海岸店のファラさんのおかげで、化粧品作りに必要な素材は無事入手出来ていまして、クローコさんとキョルンさんとミュカンさんによる作業も順調に進んでいます。
 化粧品と言いましても、僕が元いた世界に存在している化粧品と同等の品は、プラントの実で生成されている化粧落としのクレンジングオイルと保湿化粧液くらいな物でして、それ以外の化粧品……口紅や頬紅、アイシャドーみたいなものは、すべてこの世界で流通している品物を、クローコさん達が生成しているもんですから当然、僕が元いた世界の化粧品に比べて、かなり質が悪い感じなんですよね。
 僕自身が化粧品に関する知識がないからそう思っているわけですけど……ただ、口紅にしても、粉状の物を水に溶かして使用する形式になっていますし、他の化粧品も軒並みそんな感じでことごとく粉を水に溶かしてから使用する物ばかりなんですよ。
 とはいえ、クローコさんはですね、自分で使用する化粧品を自分で作成し、ヤマンバメイクを開発実践しているだけありまして化粧品作成の知識もかなり豊富なんです。
 キョルンさんとミュカンさんのお2人も、若い頃から化粧をしていただけありましてそういう知識に非常に精通しているもんですから、この3人がお互いに知恵を出し合って生産している化粧品はこの世界レベルでいえばかなりハイレベルな物が出来上がっているみたいなんです。
 で、その試作品を使用させてもらっているルアやヤルメキス達も
「こんなに色合いのいい口紅始めてだよ」
「こ、こ、こ、このアイシャドー、素敵でごじゃりまするぅ」
 って、感動することしきりでした。
 で、この試作品ですが、クローコさんのお友達のダークエルフの皆様にも試してもらいましたところ、
「何これ、マジやばいって!」
「チョーすご!」
「マジぱないよ!」
「やっべ、これ、やっべ!」
 と、まぁ、四号店の前に集まってもらったダークエルフの皆さんはですね感動しまくりながら、我先にと試作品に群がっていきました。

 これなら販売しても大丈夫でしょう。

 と、言うわけで、コンビニおもてなしで新たに化粧品コーナーが新設されました。
 せっかくですし、この化粧品シリーズになんか名前を付けたらどうかな、と思ってクローコさんに聞いてみたんですけど、
「そう言うの、店長ちゃんにお願い、みたいな?」
 と、僕に丸投げされてしまいました。
 で、まぁ、僕的にいろいろ思考錯誤しまくった結果ですね

『クキミ』

 と名付けました。

 クローコさんの『ク』
 キョルンさんの『キ』
 ミュカンさんの『ミ』
 と、3人の頭文字から命名してみたんですけど、
「ふーん、結構いけてる、みたいな?」
 クローコさんはそう言って喜んでくれてまして、キョルンさんとミュカンさんも
「そうね、いいと思うわ、ねぇ、ミュカンさん」
「はい、私もそう思いますわ、キョルンお姉様」
 優雅に微笑みながら、そう言ってくれた次第です。
 と言うわけで、ルア工房で作成してもらっている化粧品を入れるための容器にも『クキミ』の文字を入れてもらうことにしました。

 いよいよ販売開始です。

 販売初日は、予想どおり4号店での売り上げがすごいことになりました。
 例のクローコさんのお友達のダークエルフ達がクキミ化粧品を求めて4号店に殺到しまして、準備していた化粧品は4号店開店と同時にほぼ売り切れてしまいました。
 4号店以外では、この一帯では都市人口が一番多いブラコンベにある2号店の売り上げが好調でした。
 2号店では、化粧落としのクレンジングオイルや保湿化粧液、それにリンスインシャンプーの売り上げも徐々に上向いていますので、そっちも期待出来そうです。
 本店での売り上げですが、それなりには売れたんですけど、その大半はルアとヤルメキス、それにブリリアンが購入したもんですから……こっちはまだまだこれからかな、といった感じです。
 なお、魔法使い集落にある3号店ではクキミ化粧品はほとんど売れていません……スア曰く、
「……魔法使いは……身なりには、だいたい無頓着、よ」
 だそうですのでねぇ……

◇◇

 どうにか軌道に乗り始めた化粧品販売なんですけど、その裏で困っているのがおもてなし酒場の方なんですよね……
 この間までは、クローコさんがおもてなし酒場の調理担当兼看板娘をしてくれていたんですけど、今のクローコさんは4号店のお仕事が済んだ後は、巨木の実の化粧品製造室にこもっているためお願いすることが出来ません。
 求人を出してはいるんですけど、夜のお仕事な上に酔っ払いの相手をしないといけないからかなかなか応募がないんですよね。
 で、今のところ僕が代役を務めているんですけど……僕もですね、夜明前に起きて調理を開始してその後一日中働き続けているもんですから、その上に深夜過ぎまでのおもてなし酒場勤務が加わるとかなりキツかったわけです、はい。
「あれ? 店長さん、なんかお疲れですか?」
 僕がおもてなし酒場勤務を始めて数日後。
 オトの街から転移ドアをくぐってやってきたラミアのラテスさんが、僕の顔を見て心配そうに声をかけてくれました。
 ちなみに、この日のラテスさんは、幼なじみで親友のルアから
『コンビニおもてなしですっごくいい化粧品が販売されはじめたんだぜ!』
 そう聞かされて、早速購入し来たところでした。
「いやぁ……実はちょっと困ってましてね……」
 以前、スポンジケーキの作成なんかでお世話になったことのあるラテスさんが相手だったもんですから、僕はついついおもてなし酒場の件をお話したわけなんですけど、それを聞いたラテスさん、
「あらあら店長さん! ちょうどいい人がいるんですよ!」
 ラテスさんは、目を輝かせながら両手を叩くと一度オトの街へ戻っていきました。
 で、待つことしばし。
 戻って来たラテスさんは、1人の人猫(ワーキャット)の女性を連れていました。
「ネプラナっていうんです。いつもは家の雑貨屋の手伝いをしているんですけど、都市での仕事がないか探していたところなんですよ」
 そう言ってラテスさんは、人猫の女性~ネプラナさんを紹介してくれました。
 で、このネプラナさん、
「あ、あの……姉のルアがいっつもお世話になってます」
 と言いながら頭を下げました。

 ……はい、ルアの実の妹さんだったんですよ。

 今まで、ずっとオトの街で暮らしていたネプラナは、あれこれ経験してみたいと思っていたそうで、
「あ~、どっかの都市で働けないかなぁ」
 って、最近よく言っていたそうなんですよ。
 確かに、ラテスさんやネプラナが済んでいる街に比べれば、ガタコンベは賑わってはいますけど、そうは言っても田舎は田舎です。
「こんな田舎都市の酒場の仕事だけど、やってもらえる?」
 おそるおそる聞く僕に、ネプラナは
「ぜひお願いします! ぜひやらせてください!」
 そう言って、深々と頭を下げてくれました。
 ……と、いうのもですね……
 どこかの都市で働きたいって言うネプラナなんですけど、お母さんのネリメリアさんがですね、
「あんた見たいな世間知らずの田舎者が街へ出たってろくなことがないよ。よっぽど信頼出来る人がいるとこでないと、許可しないからね」
 そう言われていたそうなんですよ。
 その点、ここコンビニおもてなし酒場なら、すぐ脇にお姉さんのルアが居ますし、転移ドアでオトの街ともつながっていますしね。
 ネリメリアさんが出していた条件もしっかりクリアしているわけです、はい。
 で、一応、僕は転移ドアをくぐってオトの街へ行きまして、ネリメリアさんに直接ネプラナの件をお願いに行ったんですが、
「まぁ、あんたの店なら大丈夫だろうし、ルアもいるから許可しようかね」
 そう言ってくれた次第です。

 と、言うわけで、早速この日からネプラナがおもてなし酒場の調理担当として加わることになりました。
 ラテスさんの食堂の手伝いをよくしていたと聞いていたのですが、そのおかげでかネプラナの料理の腕はなかなかのものでして、初日からばっちりオーダーをこなせていました。
 初日ということで、僕がサポートに入っていたんですけど、最初に手順を教えてあげて何度か料理を一緒に作って以後はネプラナ一人で十分な感じでした。
 で、店にはいつもイエロとセーテンもいますしね。
 酔客がネプラナに絡んでいっても、2人が上手く対処してくれていた次第です。

 こうして、おもてなし酒場の一件も無事解決しました。

◇◇

 ネプラナのおかげで、今日は早めに巨木の家に戻ることが出来た僕は久しぶりにパラナミオと一緒にお風呂に入っていました。
 で、最近のパラナミオは、クローコさん達が作っている化粧品に結構興味津々な様子だったんですよね。
「パラナミオもお化粧とかしてみたいと思うのかい?」
 僕がそう聞くと、パラナミオは少し考えた後に、
「パパは、お化粧する人は好きですか?」
 逆に僕にそう聞いて来たんです。
 で、今度は僕がしばらく考えていきまして、
「そうだなぁ……パパは別にどっちでもいいかな……ママなんてさ、お化粧しなくてもあんなに綺麗で可愛いじゃないか」
 そう答えました。
 すると、パラナミオは笑って
「じゃあパラナミオも、お化粧しません!」
 そう言いました。

 今はそう言っているパラナミオですけど……でも、ホント、今後どう成長していくのかな……
 色んな意味で楽しみです、はい。

 で、そのうち「パパと一緒のお風呂なんてイヤ」とか言い出して……僕が大ダメージを受ける日も、そう遠くないのかも……

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