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チャペルの柱と柱の間には純白のカーテンがかけられ、所々置かれた台座にはピンクの花が飾られている。
ガラスアーチの天井から注がれる陽の光は、純白のドレスに身を包んだ花嫁を一層引き立たせてくれる。
両手でピンクと白のブーケを持ちながら、ピンクの花びらが散りばめられたバージンロードを私はゆっくりと歩く。その先にはタキシードを着た新郎が待っている。優しく微笑んで、決して私を急かしたりしないで。
バージンロードの左右にはガラスでできたイスに座る参列者が新婦を見守る。財閥の結婚式に比べたら規模の小さい、参列者の少ない式だけど、顔を知らない人間は一人もいない。上司や潮見などの会社の同僚、高校時代の友人、優磨くんと新郎の家族に、私の母。
ハンカチを目に当てる母の姿を見て、新郎の横に立った時には私も涙で目が潤んでいた。

祭壇に立つ神父が誓いのキスを促すと向かい合った。新郎は私の手をぎゅっと握った。その顔は笑っているように見えて目の奥はどこか不安を感じているようだ。この日ばかりはメガネを外した目を邪魔するものはなく正面から見据えた。長いまつ毛が下瞼に影を落とし、瞬きと共に揺れる。
私は新郎の手を優しく握り返した。そうして「大丈夫です」と囁いた。

不安に思わなくたっていい。私は消えたりしない。誰かが邪魔しに来ても守ってみせる。もう誰にもあなたを傷つけさせたりしないから。

永遠を誓い、二人は深いキスを交わした。唇が離れても私の顔を見つめ続ける新郎に私は言葉をかける。

「ずっとあなたのそばから離れません」

そう微笑んで言った。



END

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