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4話

ディアン「うわ!」

俺は驚き、勢いよく起き上がる。辺りを見回すと、そこは白い天井と壁に包まれたワンルームだった。

ディアン「ゆ、夢か…」

変な夢だった。でも、あの黒ローブ。ここに来る前に確か少し見たような…。いや、気のせいだったのかもしれない。あまり深く考えないでおこう…。

俺は机に置かれていた服に着替えることにした。赤いナポレオン風のロングジャケット。背中にはスペードに酷似したエンブレムがプリントされている。かなりお洒落な西洋風の衣装だが、もしかしてこれは、ロストの言っていた学校の制服かなにかなのだろうか。

俺は着替え終えて、自室を出た。自分の部屋の扉にはNo.8と記されている。俺の部屋は最も端だった。

長い螺旋階段を降りて、幾つか廊下を曲がって行き、ロストの居る場所へ向かう。おそらく昨日もいた玉座の部屋にいる筈だ。

廊下を行ったり来たりした先に、巨大な扉があった。

ディアン「『女帝の間』。ここだ、間違いない」

俺はノックをして、扉を開いた。

ロスト「あら、おはようディアン!」

ディアン「え?ディアン?あっ、そうか…!おはようございます!」

そうだった。今は赤石龍我ではなくなっていたのだった。

ロスト「どうでしたか?昨日はゆっくり眠れましたか?」

その質問で、昨日見た夢がフラッシュバックする。

ディアン「は、はい!もうぐっすりでしたよ!」

俺は曖昧な笑みを浮かべながらロストに答えた。そう。あれはただの夢だ。変な気を持たせるような発言は、なるべく避けた方がいい。

ロスト「そうですか?なんだか顔色が悪いですが…」

ロストは心配そうな表情で聞いた。

ディアン「いえ、大丈夫です…。それよりこの服は?部屋に置かれていたので早速着てみたのですが…」

ロスト「ああ!それは私が作った特製の#衣__ころも__#です。それは強い闇に対する防御の魔法が込められています。もちろん、ある程度という意味で、無敵の防御ではありませんが…。中々似合っていますね!」

ディアン「そ、そうですか?こういうの着たことないので…」

ロスト「ウフフ。時期に慣れますよ。さて、学校への手続きが終わりました!今日から学校へ通って貰いますよ」

ディアン「ああ!昨日言っていた、例のなんとか魔法学校ですよね?」

ロスト「オクタビア魔法魔術学校です!この世界では由緒正しい、歴史ある魔法学校なのですよ?」

ディアン「はぁ……。それって持ち物とか、制服とかはないんですか?」

ロスト「持ち物はあちらで配布されますし、制服などの規定もありません」

「ディアンそうなんですね。ロストさんもこの学校の出身なんですか?」

ロスト「はい。私もこの学校で魔術の基礎を教わりました。これでも成績優秀だったんですよ!」

魔法か…。前の世界では存在しなかった概念だ。なんだかワクワクしてきた。

ディアン「へぇー!それで、学校はいつごろから行くんですか?」

ロスト「今からです!」

ディアン「え?」

その瞬間だった。俺の体は一瞬にして、全く別の場所に瞬間移動していたのだ。

ディアン「…………え?」

あまりにも突然のことで状況が掴めない。さっきまでいた玉座の間も、城も、ロストもいない。これはどういうことだ?ここはどこだ?

ディアン「え?えぇ!!瞬間移動!?これもロストさんの魔法なのかな…」

見るからにここは廊下の様だ。全面石造りで、お城の城内のようにも見える。ロストのあの言いようからも、ここが例の学校なのか?

ディアン「て言うか、どうすりゃいいんだよ…。どこに行けば───」

???「初日からおサボりですか~?気が合いますね~♪」

ふと後ろから誰かの声がした。

ディアン「ん?」

振り返ると、そこには一人の少女が居た。非常に端正な顔立ちの少女だ。色白の肌に、大きな瞳に小さな口。髪はボブヘアーの銀髪で、前髪を髪留めで止めてある。白いシャツの上に黒いベストという、なんだか育ちのよさそうな服装だ。
少女は何故か棒付きのキャンディを食わえていた。

ディアン「えっと…?君は学校の人?俺、さっきここに来たんだけど、どこに行けば良いのかよく分からなくて……」

???「自分で来たのに、どこ行けばいいのか分からないんですか~?」

ディアン「やっぱりそう言うよね…。俺、今日から学校に通うことになってここに瞬間移動させられたんだけど、どこへ行ってどうすればいいのか分からないんだよね……」

???「あー、なるほど~♪」

少女はキャンディを舐めながら怪しい笑みを浮かべた。

ディアン「も、もしかして何か知ってるの?」

???「今日、ボクのクラスに転校生が来るって言ってました~。きっとキミのことですね~♪」

ディアン「ホントに!?じゃあ悪いけど、君のクラスまで案内してくれない?俺、初めてきたから分からないんだ」

???「いやです♪」

少女は満面の笑みを浮かべて答えた。

ディアン「えっ、えぇ~!?お願いだよ!そう言わずに連れてってくれよ!」

???「だって、ボクが連れていったらサボってることバレるじゃないですか~」

ディアン「そ、そんなぁ……」

少女は、俺の困った様子を見ながらクスクスと笑った。

???「ウソです。案内するです♪」

ディアン「ほ、ホントに?ありがとう!助かるよ!」

???「んっん~♪」

少女は長い廊下を歩き始めた。俺も少女の後を追った。

???「キミ、名前は?」

長い廊下を歩きながら、少女が俺に聞いた。

ディアン「えっと…、ディアン!ディアン・ワイバーン!君は?」

サヤ「サヤ。サヤ・ゲインです」

ディアン「サヤさんか…。えっと…、よろしく……」

サヤ「ん~♪」

長い廊下を行ったり来たりした先に、扉があった。サヤは「おはようございますです~♪」と言いながら躊躇いなく扉を開いた。

先生「サヤくん!授業はとっくに始まっていますよ!」

すると、先生らしき人物がサヤに向かって説教した。

サヤ「でも今日は二人で遅刻なんです♪」

先生「はぁ?二人……?」

先生と思わしき人物が、ゆっくりと視線を俺に向けた。

先生「あっ!君は!」

ディアン「す、すみません!遅刻するつもりは無かったんですけど!ちょっと道に迷ってしまって……」

俺は全力で謝罪をした。クラスにいる他の生徒の、クスクスと笑う声が聞こえてくる。

先生「いえいえ!転校初日だったから分からなかったでしょう!この学校は広いですからねぇ。じゃあ自己紹介していただけますか?」

ディアン「え?あっ、はい!」

俺はよそよそしく、クラスの前で自己紹介を始めた。

ディアン「えーっと…、ディアン・ワイバーンです。アルビオンと言う場所から来ました。これからよろしくお願いします!」

俺が自己紹介を終えるとクラス中から拍手が起こった。それと同時に「アルビオン?」と言う、小声がチラホラと聞こえてきた。なんだ?俺のいた場所ってアルビオンだったよな?何か変なんだろうか…。

サヤ「それじゃあボクは───」

先生「サヤくん!!」

教室を出ていこうとしたサヤの腕を先生が掴んだ。

先生「ディアン君はサヤ君の隣です。サヤ君、色々教えてあげなさい。いいですね?」

サヤ「ゲゲッ。は~い……」

観念したのか、サヤは自分の席に座った。俺もサヤに続いて指定された席に座った。

先生「では、教科書52ページを開いてください」

先生の指示に、クラスの皆が教科書を開きはじめる。机の中を見ると、俺の分の教科書がちゃんと用意されていた。

サヤ「こんなことなら、やっぱり案内しなかった方が良かったですね~…」

サヤは小声で愚痴をこぼした。

ディアン「ご、ごめんよ。俺のせいで……」

俺は小声でサヤに謝った。

学校生活初日から波乱万丈だ。これからどうなるのか、先が思いやられる。

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