プレゼンチャーとの戦闘
出口の前で、貝殻をまとった得体のしれない生物を見つけた。このゾーンのボスだと思われる。
ボスのところだけ通路は狭くなっているだめ、素通りすることは不可能だ。仮にできたとしても、ボスを撃破しないと次に進めない仕様になっているため、どのみち倒さなくてはならない。
おなかメーターは30まで減少していた。早くダンジョンを抜けないと、腹ペコでまともに戦えなくなるのかな。体内で異変を感じていなくとも、流れている血液は早く食事をよこせと訴えかけているのかもしれない。
睡眠も4時間後に必要と書かれていた。ダンジョンを脱出できない場合、いつ襲われるのかわからない場所で眠らなくてはならない。
クスリは戦闘のための準備を整えたのち、顔を隠している敵に触れた。画面はすぐさま切り替わることとなった。
「プレゼンチャーが現れた」
「プレゼンチャー」はカタツムリさながらだった。どこかのゲームで見たような形を、そっくりそのまま再現している。
この敵に触れるまでは、穏やかな音楽が流れていたのに、緊張感のあるリズムへと変わっていた。心臓に響くような独特なテンポだった。
流れている音楽に変更があったとしても、やることは変わらないはず。敵を倒すことに、意識を集中させたい。
クスリは「プレゼンチャー」に攻撃した。
「プレゼンチャーに70のダメージを与えた」
ボスにしては守備力がそこまで高くない。「プレゼンチャー」のHPにもよるけど、さほど苦労せずに倒せるのではなかろうか。
余裕をもって倒せるかなと思っていると、「プレゼンチャー」は頭部の部分を隠した。
「ゴゴゴゴゴ」
どこかのRPGゲームで見たことのある演出をそっくりそのまま再現していた。一部においては、他のゲームをコピーしているのかもしれない。
頭の隠れているときに「こうげき」を加えると、電流を飛ばされることになるのかな。そこまで忠実に再現されているのだとすれば、頭部が出現するまで待機しなくてはならない。
頭部を隠したままかと思ったけど、すぐさま出現することとなった。
「ゴゴゴゴゴ」
一定間隔になっているのか、ランダムになのかをきっちりと見極めたい。ボスの攻略の秘訣はここにあるといっても過言ではない。
「プレゼンチャー」は口からミサイルを3発発射する。クスリの心臓を的確に捉えた。
「クスリに40のダメージを与えた」
一撃のダメージは無視できないものの、「ペータン」の自爆ほどではない。少しは気分を落ちつけて戦えそうだ。
クスリの心臓を刺激するかのように、ジャジャジャジャーン、ジャジャジャジャーン、ジャジャジャジャーンの高い音が鳴り響く。敵は強いという恐怖をあおるためにやっているものと思われる。
「プレゼンチャー」の頭が再び隠れた。コマンドの入力が遅れたことで、攻撃の機会を失ってしまうこととなった。
リスクはあるとわかっていても、攻撃してみたくなるのはプレイヤー心理。頭を引っ込ませた得体に、剣を振り下ろすのかを試してみたい。
「プレゼンチャーに700のダメージを与えた。プレゼンチャーを倒した」
ボスはあっけなく散っていった。クスリはあまりの弱さに拍子抜けしてしまった。最初のボスとはいえ、耐久力はあまりにもなさすぎる。これなら雑魚の方がよっぽど強い。
プレゼンチャーはプレイヤーの心理を逆手に取る仕組みだったのかな。固定概念にとらわれたために、一撃で倒す機会をみすみす逃してしまっていた。
最初のダンジョンをクリアしたと思っていると、どういうわけかプレゼンチャーは蘇ることとなった。
「プレゼンチャーは女神の祝福を受けて復活した」
頭部の隠れているときに撃破すると、復活する仕組みになっているのかな。簡単にはクリアさせてはくれないらしい。
女神の祝福を受けたプレゼンチャーが攻撃を仕掛けてきた。祝福を受ける前よりも、被ダメージは増えていた。
「クスリは55のダメージを受けた」
単純計算で攻撃力は1.4倍になっている。3回攻撃されたら、HPの9割程度を失う。
HPを15しか回復しない「やくそう」を使用しても焼け石に水の状態。クスリは「HPを100回復する」と書かれている、「きずぐすり」を使用する。16個残しているため、使い切る前には倒せるはず。最初のダンジョンで詰む仕様になっていないことを願いたい。
プレゼンチャーの頭が隠れた。プレイヤーはしばらくの間、攻撃することはできない。
他のシリーズみたいに、一定時間で相手ターンになるゲームではない。敵のターンにするためには、何らかの行動をとる必要がある。クスリはターンを消費するためだけに、「ぼうぎょ」を使用する。相手にターンを渡すのにもってこいの戦法といえる。
ターンを渡される格好となった、「プレゼンチャー」は、弾道ミサイルを飛ばしてきた。
「ぼうぎょ」を選択したためか、クスリの前にシールドを張られた。「プレゼンチャー」の飛ばした弾丸ミサイルは、薄い防御線に吸い込まれるかのように消えていった。
「クスリはダメージを受けなかった」
ボスからダメージを受けなかったことで、「ぼうぎょ」コマンドは敵の攻撃を無効化するのを確信。「ピータン」のときも同様の効果をもたらしていたと思われる。何もできないときは便利なコマンドだ。
プレゼンチャーの後頭部が現れると、すぐさま攻撃を仕掛ける。
「プレゼンチャーに40のダメージを与えた」
女神の祝福を受けたことで、防御力は格段に上昇している。骨の折れる戦いになりそうだ。
「プレゼンチャーはアイスの呪文を唱えた」と表示された。ボスだけあって攻撃は多彩なようだ。
ダメージを受けるかなと思っていると、シールドが再び出現した。「ぼうぎょ」を選んでいなかったのに、勝手に発動した。
「クスリはダメージを受けなかった」
「ぼうぎょ」は敵の次の攻撃を一定確率で無効にする。当初は何のために用意したのかわからなかったけど、充分に使えるコマンドであることを頭に叩き込ませた。
プレゼンチャーとの戦闘は続く。女神の祝福を受けたためか、かなり手強くなってしまった。好奇心のままに行動したことで、自滅するような格好となった。
回復アイテムである、「きずぐすり」の個数は3個となっていた。プレゼンチャーと対峙しただけで、10個以上も減ってしまった。一度の安易な行動によって、危機的な状況に陥った。
女神の祝福によって最大HPも増えたのか、1000以上のダメージを与えても倒れなかった。
プレゼンチャーは頭部を隠した。クスリは「ぼうぎょ」を選択して、敵の攻撃を誘うことにした。
「プレゼンチャーは弾丸ミサイルを放った」
シールドは敵の攻撃を完全に吸収したため、プレイヤーはダメージを受けなかった。
「クスリはダメージを受けなかった」
「プレゼンチャー」の頭部が出現すると同時に、「こうげき」コマンドを選択した。同時くらいに押さないと、間に合わないときもある。
クスリは剣を振り下ろすと、プレゼンチャーの身体は大きく揺れた。
「プレゼンチャーに40のダメージを与えた。プレゼンチャーを倒した」
復活するなと祈りをささげる。万が一にも蘇ったら、ゲームオーバー確定だ。「きずぐすり」の数からして、倒せる見込みは限りなく0に近い。
「プレゼンチャー」は復活することはなかった。クスリは最初のダンジョンをクリアすることに成功した。
ボスのドロップアイテムとして、「ちょっとだけ強い剣」を入手した。名前からして、さほど強くないと思われる。
「プレゼンチャー」一体と戦っただけなのに、おなかメーターは15まで減らされていた。ボスと戦うだけで15も減らされるのは相当厳しい。
ボスを倒した直後だった。身体はどこかに飛ばされる感覚があった。