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洞窟内

 洞窟内ではこうもりが羽をパタパタとさせていた。撃破すると真っ暗闇になってしまうため、素通りしたいところ。身動きの取れない恐怖は絶対に避けたい。

 こうもりは羽をはばたかせながら、こちらに近づいてきた。クスリは間一髪のタイミングで回
避することに成功した。

 安堵の息をつく暇もなく、こうもりはクスリの方に向かってくる。暗闇の状況を作り出そうと必死になっているようだ。

 一直線だったルートで分岐点を見つけた。奥には宝箱らしきものを置かれている。

 こういうところに配置されている宝箱は得てして、強力な武器、防具などを置く傾向にある。最初のエリアにもかかわらず、バランスブレイカーのレベルかもしれない。

 超低確率でトラップを仕掛けるというタイプもあるものの、取りにくい場所に設置するのはセオリーとはいえない。宝箱の中身をトラップにしていたら、開発した人間の神経を疑う。(宝箱の中身はレベルアップ時に各ステータスを20パーセントの確率でさらに+1するアイテム。ゲームをクリアするために必須クラスといえるレベル)

 宝箱の中身に気を取られていたら、こうもりと対峙することになる。どんなアイテムなのかはおおいに気にかかるところだけど、暗闇になるリスク回避を優先したい。こうもりを倒してしまったら、次の明かりはいつになるのかわからない。室内を照らすこうもりは一度きりで、復活しないというのもありえる。

 暗闇で対峙した敵は「ピータン」だったので命とりにならなかったけど、強敵と対峙したら一巻の終わりとなる。復活するための薬を所持していないので、一度やられたらゲームエンドだ。
 
 クスリのおなかメーターは80まで減っていた。探索時間は短いにもかかわらず、確実に減少している。一日に一回はご飯を食べる設定で、ゲームプログラムを組んでいると思われる。

 RPGの世界なのだから、おなかの減り具合をもっと遅くしてもよいのではなかろうか。ご飯を食べられるところを見つけられなかったら、手詰まりになってしまいかねない。

 ごはんにありつけるのかなという不安に駆られながらも、前に進むことにした。クヨクヨしていたとしても、プラスになることは何もない。

 こうもりゾーンを抜けた直後だった。戦闘画面に切り替わることとなった

「プータンが3体現れた」

「ピータン」のきょうだい的存在といったところかな。外見の色は変わっているものの、あとはほとんど同じだった。枝の生え方はそっくりそのままコピーしたかのようだった。 

「プータン」に戦闘を仕掛けていく。「ピータン」と比べてどれくらい強くなっているのか。

「プータンに40のダメージを与えた」

 レベルアップによる攻撃力上昇はすごい。最初の戦闘で、15しかダメージを与えられなかったのは嘘のようだ。

「プータン1」は木の枝を飛ばしてきた。「ピータン」と形は似ているだけで、別の生き物のようだ。

「クスリは12のダメージを受けた」

 無視できない数値だ。何発も攻撃を受けると、瀕死の状態に陥ることとなる。

 レベルアップをしていなければどうなっていただろうか。「プータン」3体の攻撃であの世逝きになっていても不思議はない。

「プータン2」はてっぺんに生えている木で殴りつけてきた。「ピータン」よりも数倍の痛みがあった。

「クスリは8のダメージを受けた」

「ピータン」より攻撃力は高めだ。同じ洞窟であるにもかかわらず、前半、後半で
敵の強さは大きく異なる。

「プータン3」は眠っていた。こちらは起きる様子はなかった。

「プータン3は心地よさそうに眠っていて、プレイヤーと戦う意思を見せなかった」

 ターンをパスしたということか。プレイヤーにとってはラッキーといえる。「プータン」は強敵で、3体とまともに対峙するのは難しい。

 一体でも早く倒さないと、こちらの生命は危ない。クスリは「プータン1」を攻撃対象に選んだ。「プータン1」に45のダメージを与え、撃破することに成功した。

 物音に気付いたのか、「プータン3」にあったはずの鼻ちょうちんはなくなっていた。目を醒ましてしまったのだとすれば、残念な展開といえる。永久的に眠り続けてほしかった。

 敵のターン、「プータン2は必殺技である三段切りを行った」と表示された。

 三段切りとは何なのかと思っていると、頬を木の枝によって3回連続で殴られることとなった。

 最初のダンジョンの敵なのに、必殺技を所持しているのか。難易度は鬼畜仕様といえそうだ。

 三段切りを行ったばかりの「プータン2」は、眠りこけてしまった。必殺技を使用すると、一定確率もしくは確定で休むように設定されているのかな。

 ゆっくりと休んでいた「プータン3」は、大量の木の枝を飛ばしてきた。

「プータン3の捨て身こうげき。クスリに30のダメージを与え、自身は60のダメージを受けた」

 自らの生命を犠牲にして、敵をやっつけようということか。いろいろと考えこまれたシステムを採用している。

 主人公のHPの残りはわずか15。次の攻撃を受けたらあの世送りとなる。クスリは「きずぐすり」を使用すると、HPは105まで回復。レベル3に上がったことで、最大HPは少しだけ上昇していた。

 三段攻撃で疲弊してしまった、「プータン2」は起きる気配を見せなかった。 

「プータン2は次の戦闘のために体力を回復している」

 捨て身でこちらをやっつけにきた「プータン3」は、先ほどの三倍の量の木の枝を飛ばしてきた。自らの命を犠牲にして、プレイヤーをあの世送りにしようとしている。

「クスリは40のダメージを受けた。プータン3は80のダメージを受け絶命した」

「プータン」に「捨て身こうげき」を連発されたら、痛み分けの状態になる。敵を倒せたとしても、プレイヤーの命は尽きることとなる。現実世界への復帰は不可能になる。

「プータン2」は目を醒ます。じっくりと休養を取ったからか、木の枝は太くなったように見えた。   

「プータン2」を倒せば、次に進める。クスリは気合を入れることにした。

「クスリの攻撃はクリティカルヒット、プータン2に90のダメージを与えた」

 100の経験点を得て、レベル5に上昇することとなった。手ごわい敵とあって、得られる経験値も上昇している。

 戦闘後のドロップアイテムとして「きずぐすり」を2つ入手した。どれくらいの確率なのかはわからないけど、戦闘後にアイテムをゲットできるようだ。

「こうげき」などのステータスは2~3上昇。レベルアップさせたことで、「プータン」にも対応できると思われる。

「やくそう」でこまめにHPを回復すると、最大HPは135まで上昇することとなった。

 洞窟内で再びこうもりと遭遇。クスリはぶつからないよう、慎重に道を進んでいく。さきほどの暗闇の恐怖は未だに消えていない。

 お腹メーターは65まで減少。洞窟を早くクリアしないと、0を切ってしまいかねない。敵との闘いだけでなく、時間にも追われる冒険になりそうだ。

 進路方向に向かって進んでいると、左、右のどちらにも進める分岐点を発見した。一方はあたり、もう片方は外れであると思われる。

 インターネットに接続していれば、どちらに進めばいいのかを事前に調べられる。近年では一日としないうちにアップされることも多くなった。

 RPGでは間違えた方向を進んだとしても、戻ってくればいいだけの話。クスリは大して考えることもなく、右に進むことにした。じっとしていたらお腹メーターがつきてしまう。

 右の進路に足を踏み入れた瞬間だった。左の道はどういうわけか閉じられることとなった。一度しか選べないタイプのルートだったようだ。

 ルートを慎重に進んでいくと、戦闘画面に切り替わることとなった。

「ペータン2体が現れた」

「ピータン」、「プータン」と続き、今度は「ペータン」か。製作時間の省略のために、似たよ
うな名前の敵を準備したと思われる。

「ペータン」の形は違っていた。プヨプヨさながらの柔らかそうな身体から、木の枝を一本だけ生やしている。地面のぬかるんだ、運動場から生えたかのような不安定さだった。 

 敵の強さはどれくらいなのかな。「プータン」より格段に強くなっていれば、苦戦するのは確実だ。

 クスリは「ペータン1」に戦闘を仕掛ける。 

「クリティカルヒット。ペータン1に180のダメージを与えた」

 180のダメージを受けたにもかかわらず、「ペータン1」は生き残っていた。「ピータン」、

「プータン」よりも格段に耐久力は高い。つかみどころのない形で、ダメージを吸収しているのかな。

「ペータン1」は空を舞った。どのようなことをするのかと思っていると、プレイヤーを踏んづけてきた。体内にねちゃっとしたものがくっついた。

「クスリは27のダメージを受けた」

 レベルアップしても被ダメージは受けている。レベル1の状態なら、半分以上持っていかれたと思われる。

「ペータン2」は「プータン」と類似した方法を取った。

「ペータン2の捨て身こうげき。プレイヤーは65のダメージを受けた。ペータン2は250のダメージを受け絶命した」

 自らの命を犠牲にして、プレイヤーを闇に葬ろうとする。なりふり構わない姿勢に感動すら覚えた。普通は己の身を一番大切にする。

 HPの残りは43、次の攻撃でおそらく倒せるのではなかろうか

 クスリは思い直して、「きずぐすり」を使用することにした。全滅させられなかった場合、自滅攻撃でHPは0になる。一度の死でゲームオーバーだけに慎重に行動しよう。ドロップアイテムで入手したことも背中を後押しした。

「ペータン1」は自爆攻撃を行ってきた。

「クスリに120のダメージを与えた。自身は500のダメージを受けて息絶えた」

 9割近くのHPを減らす自爆攻撃。クスリの背筋はブルブルと震えていた。最初のダンジョンなのに、高難易度に設定されている。

 クスリは300の経験値を得て、レベル7となった。ドロップアイテムとして「やくそう」を5個入手した。

「やくそう」5個よりも、「きずぐすり」1個でよかったかな。「きずぐすり」は「やくそう」6~7個分の価値を持つ。 

「やくそう」、「きずぐすり」でHPを回復させると、165まで上昇した。レベルアップすることに、上昇HPは少しずつ増えている。  

 ステータスもきっちりと上昇していた。これからの冒険の役に立つといいな。

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