Indicato de trabajadores
労働組合。働く場所を決めた時に見るべき条件の一つ。組合がなければ、多少の保証は見出されない。もちろん、社会保険も必要ではあるが。
ここからは"ある人"の評論を引用して、組合の定義を考えていこう。
ファンタジーでは基本、組合は"冒険者"という多様な職人が集団で依頼をこなしたり、難関ダンジョンをクリアしたりと"現実では存在し難い"出来事に遭遇する。
しかし、この世界では"そんじょそこらの幻想"では通用しない。
ここで言う"組合"は前文に書かれた概要とは違い、【ひとまとまりの会社】である。
簡単に言えば、一般人も依頼をこなせる。いや、もう少し詳らかに言えば、"現実と似ている"。
例えば、冒険者は基本的には受付や組合内の業務に就かず、レベル関係なく"好きなだけ"依頼を受けたり「よっす!!ライバル会社に潜入だぜ!!」と"仕事の内容と関係ない"ラスボスを倒す。現実味帯びていない"バイキング・ディナー"戦争か。(この評論の筆者はそう表現している)
だが、この世界では組合自体が大企業を指しており、組合でアルバイト・パート、派遣、契約、正社員になることが可能。また、採用する人材は差別なく種族全員。
しかし、組合の専門業務に就きたいのであればそう簡単にはいかない。"一定の学力"がなければ採用されない。また、二次審査に面接も兼ねてある。
だからほとんどの人は依頼用の派遣や契約で我慢しているわけだが。(給料はそれなりに出る、正社員と違って低いわりには食券や交通費支給されるというメリット)
結論に至ると、この世界の労働組合は現実の企業に近い仕組みである。
キャメロン一行はノーチェ村を出た後、行く先をマニャーナ村に決定した。まだ何をするかは決めてはいないが、林で彷徨って迷子になるよりも宿を借りて泊まる方がマシである。
キャメロンは歩きながら、あることを考えていた。
(あの時、ヒジリのポケットに入っていた物は何だ?赤い硝子のような物に見えたが………)
「ちょっと!!下を向いて何考えているのですの!?ぶつかったら危ないですわよ!!」
「貴様はお節介な奴だな。それと何故付いて来たのか。」
「別にいいじゃないですの!!私は付いて行きたいですの!!」
「はあ………勝手にしろ。」
村まではそう遠くはない。30分あればもう村の前だ。それに焦る必要もない。あの事件は解決した、と言うよりも"他人に任せた"。
「ねえ……キャメロン………村に…着いたら………何するの…………?」
「宿を探す。それ以外は何も決めていないが。」
「せや!また美味しいデザートでも食おうや!!」
「オハナ………昨日……食べたばかり…………でしょ……食べ過ぎ………」
「貴様のせいで俺の懐が空になるのだが。」
「で、でしたら私がご馳走しますわ!キャメロンとは違って十分に持ってますもの!!」
水蓮が手を合わせて、ニコニコと"自分は余裕ですわよ"オーラを醸し出す。
「一言余計だな。」
はあ、とキャメロンはため息を吐いていると、前方からはあのエマヌエル一行が現れた。
「よっ!!どうだったか、ノーチェ村の方は?」
「事件は解決したと言っておこうか。」
「と言うと何だ?」
「端的に言うと事件の真相を掴めたが、当の戦争の発端となった人物は逃げ隠れしている状態だ。」
「そうか………」
すると、エマヌエルは右手の親指をグッと見せて、
「兄ちゃんは"探偵"みてえでカッコイイな!!ははっ!!」
高笑いしてキャメロンを褒めた。
「ところで兄ちゃん、マニャーナ村には何しに行くんだ?」
「宿を探すつもりだが。」
「働き口は探さないのか?」
「………働く?どうしてだ。」
だってよ、とエマヌエルが右手人差し指を挙げて説明し始める。
「自給自足するためにはまずは金を貯めねえといけねえからな!!兄ちゃんなら害獣駆除を余裕でこなしそうだな!!」
「ほう………考えておこう。」
「詳しいことは組合の受付で聞いてみな!べっぴんな姉ちゃんが答えてくれるぜ!!」
じゃあな!とエマヌエルは元気よく挨拶をし、一行を引き連れてどこかへ去ってしまった。
すると、水蓮は目をキラキラさせて鼻息をふんすとさせる。
「ねえ!キャメロン!!仕事をしましょうよ!!お金があれば好きなことを好きなだけできますわよ!!」
「駄目だ。」
彼はすぐに却下した。
「な"っ!何でですの!!さっきは考えておくと言っていましたのに!」
「だが"働いてやる"とは言っていない。依頼を遂行し金を稼ぐよりも、自ら赴いて食料を"好きな分だけ"得れば効率的だろう。」
「ほんっとに頭が古いですわね!!何時代の話をしているんですの!!お金があれば、旅行にも行けるんですのよ!!」
「何を勝手に働く前提で話を進めているのだ。」
口論している間に村に着いてしまった。それでもまだ話は続いていく。花菜とオハナは二人の話には追いつかずに頭に「?」と浮かんだような表情を見せる。
「自給自足では時間がかかるんですの!失敗すれば、食料もないのですのよ!!一か八かじゃないですの!!そんな危険な選択は絶対ダメですの!!」
「だとしても、自分達で独立して生きるべきだ。」
(キャメロンと水蓮が難しい話をしているな………どういう内容か分からないよ………)
(話が飛びすぎて、よう追いつけんがな。働くとかどうのこうのは組合に着いてから決めたらええやんけ。)
「な、なあ!お二人さん!!そん話は組合に着いてから話し合おうや。ここやったら周りの人がいるから、なんやろうし………」
「「そうするか。/そうですわね。」」
水蓮とキャメロンはオハナの提案通り、組合で詳しく仕事の内容を聞くことにした。
エマヌエルと闘った組合に入った。前とは変わらずに多くの職人が出入りしたり、何かを話し合ったりと賑やかであった。
早速、受付嬢に話しかけようとする。前に話した人と同じようだ。
「あっ、いらっしゃいm………あの時のイケメンと少年君!?どうしたの!?」
彼らがまたこちらに来たことに驚いたのか、丁寧な対応が乱れる。
「あの時は世話になったな。少しお願いがあるが。」
「ああ!!構いませんよ!!どうぞ仰ってください!!」
「ここではもちろん働き口はあるのだな?」
「ええ、ありますよ。今、書類をお持ちしますね。」
と、受付嬢がよいしょと下の棚から組合に関する書類を取り出す。
「これですね。テーブルにお掛けしてゆっくり読んでいただければ。何かご不明点がありましたらお声かけください。」
四人は受付側に空いていた席に座って、その書類を眺めた。もちろん制度や概要に関して理解できるのは水蓮とキャメロンの二人である。書類には以下の通りの内容が書かれていた。
【組合での業務に関する概要】
~目次~
1.組合内での業務について
2.組合外での業務について
3.非正規雇用と正規雇用について
4.収入とその所得税について
5.交通費や休暇について
6.その他(お問い合わせ、よくある質問)
最初の内容は次のページに書かれていた。書類はそこまで深い内容、というよりも簡単に箇条書きで載せられていた。
1.組合での業務について
基本的には組合内での受付や清掃、書類処理などの作業を行なってもらいます。ただし、担当は年に二回変わります。各組合に異動有り。
・入社試験:①学力(国学・語学・数学・魔法学・物理学・生物学・化学・経済学)。ただし、国学と経済学、魔法学と物理学、生物学と化学は選択科目とする。
②面接(学力試験の通過によって実施する)。
・必要資格:簿記検定一級、古異種語検定二級以上など。
・開催日:常時受付中
・試験会場:①と②は共に組合本部(コー・エクシステンシア大陸カピタル地域)
※種族関係なく入社できます。お気軽にお声かけください。
「すまないが、この【古異種語】とは何だ。」
キャメロンが先程の受付嬢に声をかける。どうやら会計処理をしていたようだ。
「【古異種語】というのは、この地に最初に存在していた人類の言語らしいですよ。まあ………言語とは言いましても百を超える数なのですが、主に組合の試験に出題されるのは【英語】・【中国語】・【フランス語】などの《旧主要国言語》と【ラテン語】・【ヘブライ語】などの《古代主要言語》になりますが。」
「なるほど、それらの言語が試験に出るのか。"意外"だな。」
キャメロンは確かに"それらの言語を理解している"が、まさか"それら自体"が"統一言語を使用している"異種族であれども、理解せねばならないとは思ってもいなかった。
「キャメロンはこれがいいですの?」
「……………いや。」
彼は水蓮の言葉に気にかけず、次のページへと進む。
2.組合外での業務について
基本的には組合から要請された依頼を引き受けてもらいます。また、こちらでは異動ありません。所属は本部となります。
・入社試験:なし。
※年齢や種族など関係なくどなたでも依頼を引き受けることができます。
「ほう………」
「まさか………こっちの方がいいですの?」
「まあ、最終的にはそういうことになるが。」
次のページをめくると文章が少々長く書かれているが、こちらの箇条書きである。
3.非正規雇用と正規雇用について
組合では【非正規雇用】と【正規雇用】の制度を取り入れています。ただし、組合内外の業務内容によっては【正規雇用】のみが適用される場合がございます。
~組合内での業務の場合~
・会計処理:正社員
・受付:非正規・正規のどちらも可能。
・組合内の清掃:非正規雇用者
・書類処理:非正規・正規のどちらも可能。
~組合外での業務の場合~
・本部からの難関依頼:正社員
・害獣駆除依頼:非正規・正規のどちらも可能。
・農村部への派遣:非正規雇用
・災害時派遣:非正規・正規のどちらも可能。
「正直に言うと、気になるのは収入だが。」
(ケチな男ですわね………キャメロンは………)
次のページに進むと、数字が点々と載せられている。
4.収入とその所得税について
~組合内での収入~
【正規雇用】:正社員→月給40万円
【非正規雇用】:パート・アルバイト・派遣・契約→時給1600円
~組合外での収入~
【正規雇用】:正社員→依頼に応じて。
【非正規雇用】:パート・アルバイト・派遣・契約→依頼に応じて。
※所得税に関しては組合内では【正規雇用】は6%、【非正規雇用】は3%。組合外ではかかりません。
「ほう、"意外と"非正規雇用に気を使っているのだな。」
「そうですね。短期間契約でも時間を割いてまで依頼をこなしている方が多くいますからね。特に組合外では事故や災害が起きやすい地域に派遣されるので全組合には非課税対象にさせていただいています。」
「なるほど、"快適な労働環境"を提供か………」
また次のページを開く。
5.交通費や休暇について
交通費に関しては組合が全額負担させていただきます。業務用車両に関しましても、こちらが手配させていただきます。
組合では基本的に最高一年の有給休暇を取ることが可能です。(※基準は5年勤務)
「へえ………乗り物は組合が用意してくれるのですのね………」
「左様です。実はその所得税で賄っているのですよ。」
「結構、徹底的しているのですのね!!感心しましたわ!!」
水蓮の目がキラキラと輝き、受付嬢がにっこりと微笑む。そんな二人をよそにキャメロンは最後のページを眺めている。
「ふむ………」
顎に指を当てて、何かを考えているようだ。その傍で花菜が彼を見つめている。
「………よし、やるぞ。」
「えっ?何がですの?」
「害獣駆除依頼と災害派遣依頼を引き受けるぞ。」
彼の周りではしばらく沈黙が漂った。水蓮が目をギョッとさせている。すると、彼女はキャメロンの方へ指を差す。
「な、なっ、何勝手に決めているんですのぉおおお!?私を除いて!?」
「貴様がよそ見をするから勝手に話が進むのだが。」
「ぐぬぬぅ………!!ま、まあ、良いですわよ!!お金があれば、それで食費が賄えますし!?」
「なら、それで決まりだな。」
キャメロンは受付嬢に契約書を寄越すように言った。すると、受付嬢は契約書を三部と万年筆を一本持ってきた。
それぞれ自分の名前を筆記体で書くが、キャメロンに関しては、
「書き方も堅いですわね………」
「それが何だ。悪いことなのか。」
「別に悪いことだとは言ってませんわよ!!被害妄想が酷いですわね!!」
(うちの分はどこなん………?)
契約書を受付嬢に渡し、記入漏れがないかを確認してもらい、数十分はテーブル席で待たされた。
その間はキャメロンがこの村にある宿の予約をしに行った。
彼が戻ってきたそのちょうどに受付嬢が水蓮のいるテーブル席で彼女に何かを見せていた。
「あっ!キャメロン!!本人確認証明書ができましたわよ!!」
「そうか、俺に見せろ。」
キャメロンがテーブルの上に置いてあるカードに手をとった。
そのカードは特殊な硝子でできているようで、表には名前と業務担当、裏側には自由に何かを記入できる欄が載せられている。その裏側右端には回路のような小さなチップが埋め込まれている。紛失時用なのかは分からない。
「これはどういう仕組みのものだ?」
キャメロンは先程のチップの部分に指を差して質問する。
「ああ、これですか!これはですね………ちょっとした仕掛けがあるんですよ!!使ってからのお楽しみです!!」
(説明しないのか………)
「それでは最初の依頼をお渡ししますね!」
受付嬢から赤色のシーリングワックスの付いた封筒を受け取る。封筒にはどうやら引っ掻き傷が付いていて、開けられた形跡は見当たらない。
何か板のようなものが入っているせいか、封筒が少々分厚くなっている。
「こちらの依頼では船を利用する必要があります。ご依頼人は離島在住ですので、組合から港に直接連絡を入れて出航手配します。先程の説明で申し上げました通り、交通費は組合の方で負担します。」
「最初の依頼は……島とか………運悪い……のかな………?」
「そ、そそ、そんなわけないと思いますわ!!きっと援助ですわよ!!きっと!!」
花菜がいきなりフラグを立てるので、水蓮が楽観的な発言をする。それでも彼女はまさかとは考えていた。そんな気がしていたのである。
「それでは組合員(しゃいん)の皆さん、良い仕事(たび)を。」
受付嬢がキャメロン一行を組合の玄関外まで見送り、お辞儀をした。
「うちの分がないやんけ………」
「仕方ないよ………オハナ……その姿じゃ…………数には……入らないよ…………」
「せめて元の姿に戻れたんならええけどな………」
夕日が傾いて、空を綺麗に橙色で染め上げていた。少しだけ肌寒い感じがする。
村の宿の二階奥。四人では物足りない程の大部屋で、質素な家具と二つの大きなベッド。
彼らは明日の準備をしていた。買い物や夕食は夕方に済ませて(もちろん奢りは全て水蓮である)、早めに宿の方へ手続きを取り繕った。
明日の朝一番にこの土地から出て行かないといけない。
「確か、その島は昼でも気温がマイナスを維持しているそうですわね?」
「ああ、この手紙にはそう書いてあった。………何故、俺の分の上着も買ってきたのだ。」
「だって寒いですわよ!!まさか寒くないとでも言いたいですの!?」
「そうだとは言っていない。」
「じゃあ、当日は着てくださいな!!」
そう言って、彼女は白のダウンジャケットをキャメロンにポイっと渡した。
「ねえ………水蓮さん……一緒に…寝よう…………?」
「良いですわよ!!もしかして幽霊が怖いんですの………!?」
「ちゃうんやで!!花菜は誰かと一緒に居らな、安心できへんからなんやで!!」
「そうですのね………じゃあ寝ましょうか!!」
「うん………!!」
「ほな、寝るで〜!!お先に!!」
三人はそう言って、傍に置いてあったランプを消して寝てしまった。相当疲れているのだろう。
キャメロンはまだ起きていた。ランプの光を調節して、彼女達の眠りを妨げないように少し暗くした。
「……………」
手紙の内容をもう一度確認しようと、封筒を袖から取り出した。
手紙は禁索語で書かれている。
【Buenas tardes miembros del sindicato de trabajadores.
Mi nombre es Setuzoku, vengo de la isla "Frio" a solicitar su colaboracion para resolver el problema que se esta suscitando con relacion a los osos salvajes que ultimamente han empezado a entrar en la ciudad, y destruyen las cosechas, entran en las casas y se comen lo que encuentran a su paso.
En algunos casos los habitantes de la isla que portan rifles, les han disparado, pero sin ningun resultado, ya que estos animales son muy fuertes y no
les danian las balas disparadas en su cuerpo, por lo que dichos habitantes han sido atacados por los osos, siendo que unas 7 personas han muerto a consecuencia del ataque de estos animales.
Para proteger a los habitantes de la isla y evitar que los osos entren, se ha construido una pared que circunda la isla y se ha colocado un fuerte porton, pero se teme que en cualquier momento los osos destruyan la pared o el porton e ingresen a la isla; en consecuencia, los habitantes viven en constante angustia y miedo a ser atacados por los osos por lo que hay algunos duenios de negocios que no pueden conciliar el suenio por la noche.
Lo que ha provocado que los comercios dejen de trabajar y producir en favor de la prosperidad de la isla.
Si aluguno de ustedes, miembros del Sindicato desea colarar con este proyecto, ofrezco vivienda y alimentacion gratis en mi casa durante el tiempo que dire el proyecto.
Solo deseo y advertir que la temperatura ambiente en la isla se mantiene a grados bajo cero, por lo que es necesario venir preparados con ropa adecuada para el frio y de ser posible traer parches calentadores para combatir el frio.
*Nota: Por ser necesario un permiso para ingresar al bosque, me permiti adjuntarlo a la presente carta.】
彼は小さなため息を吐いてから、ランプを消して就寝に入った。
………何か悪いことが起きなければいいが。