べにさし

(ベニサシ)

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    べにさし

     ――旅人は、過去の『災い』を背負っていた。
     正体不明のその重荷をあきらかにするために、賢者と言われた魔法使いの名を求め、遠く、旅立ったのだった。

     山麓の南にひろがる森には、魔法使いが住んでいる。
     そんな噂の立つ森に、もっとも近い宿場町に到着した旅人は、曰くありげな一本の杖を手に入れる。
     不穏な杖を道連れに、はるばるのぞんだ噂の森へついに足を踏み入れ、道中、理解しがたい珍事にたびたび遭遇し、戸惑いながら、命からがら前進する。
     やがて、鬱蒼たる森の夜。
     夢に語りかけてくる、少女の声。

    「それはなんだ? おまえはなにを持っているのだ?」

     重荷の力に興味をいだいた幼い声が言った。

    「案内する」

     夢から覚めた旅人は、声のぬしの姿を知り、困惑しつつも従って、あとを追う。
     そうして森の深みへと、導かれ。
     人里離れた木々の狭間に、唐突に現れたのは一人の男。
     ひたいに異能のしるしを示す、魔法使いだった――。



    【※】物語全体の構成を書いたものが活動報告にあります。そちらはネタバレを含みます。
    【※】更新日のお知らせは活動報告で行ってます。

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