一章 異世界転生の解(四話)
次の日
谷野は起きて朝日でも浴びようと思った。しかし、ツンっとする匂いで立ち止まった。まさか!?扉を開けるとまただ・・・。『燃えていた』
「はーはー。」
アカネがこちらに向かってくる。
「こっちにくるな!!」
谷野は必死の声で止めた。しかし、アカネはそれを聞かなかった。するとアカネはこう言った。
「やっとできた友達を死なすわけにはいかないからね。」
アカネの目を見ればその必死さがわかった。そう言えば俺がアカネと一緒にいる時に何故か村の人がアカネを睨んでいるような気がした。アカネ村の人に嫌われているのだろうか。しかし、聞けば傷つけてしまうだろう、谷野は聞くのを拒んだ。するとアカネが構えて・・・。
『アクアシスウェーブズ!』
アクアシスウェーブズ・・・前方を扇範囲に波攻撃(初級水魔術)
そうアカネが唱えると前方の火が一瞬にして消えた。
だが火は尽きない。アカネはまた構えて。
『オーシャンラーシャラッシュ!』
オーシャンラーシャラッシュ・・・自身中心に円状に中距離水攻撃(中級水魔術)
とアカネが唱えると周囲の火が一瞬にして消えた。同時に建物が少し剥がれた。どのくらい強いの!?俺も耐えきれず吹っ飛んだ。その勢いで村の門の前まで来た。(体力10→3)
(危なー!?)
本当に危ない、死ぬところだった。ところで何だ!この体力!10って明らかに少なくないか?ビックリして谷野は単調になった。そこにアカネが駆けつけて来た。
「よかったー生きてて!」
そう言うと右手を心臓部に当ててホッとした。そうすると谷野は言った。
「とりあえず火がこっちに来るまでに村を出るぞ!」
「わかった!」
アカネがそう言うと二人は村を出た。この火事で村長が命を落とした。俺とアカネが火事の片付けをしている途中、村の人のコショコショ話が聞こえた。
《あの二人最近よくいるわよね。》
《あの男の人、アカネさんがどんな人か知らないで過ごしているのかしらね。そう思うと可哀想になってくるわ。》
谷野にそれが聞こえていて拳を強く握っていた。そう、怒っているのだ。しかもアカネが怒らない事を良いことにわざわざ聞こえる所で噂している事も谷野の怒りを増幅させた。その二人は谷野のキレ具合を察したのかその場を去った。谷野は小声でアカネに注意した。
《少しは怒ったらどうだ。このままじゃ嘗められたままだぞ。》
《じゃあ谷野は注意しないの?》
そう言われると反論できなかった。注意すると俺までそう言われるのでは、と思ってしまっていた。なんで俺は活発的な性格をして臆病なんだ・・・。そう考えているとアカネが聞いてきた。
「ねえ谷野?私と一緒に新しい町で暮らさない?」
えっ。谷野はビックリして少し離れた。
「いいでしょ?」
そう言うアカネの笑顔が少し妖艶に見えた。なんだこれは・・・?
「・・・。少し考えさせてくれ。」
谷野はそう言ってその場を離れた。
(なんだったんだあれは!一回頭を冷やそう。)
そう頭の中で会議をさせ、谷野は考えた。すると村の男性が話してきた。村長が死んでしまい、その中で村のまとめ役になっている人だ。
「あの。」
「どうしたの?旅人さん。」
「アカネの事で聞きたいことが。」
「アカネさんの事か・・・。」
まとめ役の人は少し悩んでいる様子だった。
「知っているのですか!?」
谷野はそう言い返した。
「知っているけど知ってしまったらまた彼女が独りになってしまう可能性があるよ?」
「それを聞いても独りにしない自信があるので聞いているのです。」
そう自信あり気に言った。
「ほう、そう言って去った旅人もいるというのに。まあ言いましょう。彼女は・・・。」
まとめ役の人は続けて言った。
「『遊女』だったんだよ。まあこれ聞いてどうも思うか・・・。」
まとめ役の人はそう言った。
「昔の事だろ、そんなの。ならいいんじゃないかで他にあるのか?」
谷野がそう言うとまとめ役の人は、
「は?なんだお前。」
とビックリした様子だった。
「まあ、何もないのならいかせて貰うよ。」
そう言うと谷野は走ってその場からいなくなった。谷野はすぐさまアカネの所に行った。アカネはビックリした様子で走って向かってくる谷野を見た。
「どうしたの谷野!?」
「ゴメン!ついキレて次期村長敵に回したわ。」
谷野はそう言ってにやけた。
「なら10分で準備して!来てしまったら人溜まりもないから。」
アカネはそう言って笑い返した。谷野は、少量の食べ物と木の水筒を物置にあったリュックにしまった。するとアカネが訪ねてきた。
「武器とかいらないの?ここら辺はモンスターいないけど、もう少し行ったらウジャウジャいるよ!」
「えっ、ここモンスターいるの!?」
谷野がビックリした様子で言うとアカネは当然の様に頷いた。谷野はあることに気がついた。
『えー!?これまるで異世界転生モノじゃないか!(歓喜)』
谷野がそう言うとダッシュで村の柵まで行って越えた。するとアカネが走って来て、
「ヤノー!武器持ってかないのーー!?」
「アカネ、大丈夫大丈夫。」
と谷野が余裕の表情で答えた。不安そうな表情をするアカネに谷野は追加で言った。
「なんせ俺は最強なんだから!!」
とガッツポーズをした。
「体力10が?」
とアカネは当然のツッコミをした。
「・・・。うん!まあな!」
と谷野はゴリ押しで返した。
異世界の解?そんなの今は分からない。ただ、少しずつ感覚と記憶が戻ってきている予感がした。それでだけで一歩ずつ進んでいるような気がした。
『二章 異世界の中の甘味と苦味』に続く!