バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

一章 異世界転生の解(三話)

落ちた俺はまた謎の空間に来ていた。何だろう、今まで感じた事のない・・・浮いている感覚だ。谷野は薄い意識の中で少しでも情報を得ようとした。でないと、この何も情報のない状況で分からないという恐怖に襲われるからだ。しかし、そんな余裕もなく谷野はまた意識を失った・・・。

現世界(こっち側)→→→異世界

起きたらそこはーーー。
「草原・・・。」
大きな草原が目の前に映っていた。少し岩肌も見えていているが本当に綺麗だった。谷野は泣きそうになった。谷野にはここまで来るまでの苦痛が大きく傷として残っていた。ただ、ここが何処か分からない以上余り長居する訳にもいかず、谷野はのろのろと少しずつ
足を進めた。
草原を結構進んだのだろう。村らしきものがあった。もう日が沈みかけていたので谷野はここで一晩を過ごそうと思った。あと、凄い空腹と眠気、頭痛に襲われていた。正直、息も切れている上、体力の限界だ。村の前に来た。村の名前らしき表札があったが読めないなかった。一体ここはどこなんだ?谷野が中に入って歩いていると村の噴水広場まで来た。すると村人らしき人がいた。村人らしき人もこちらが気になるようだったので話しかけた。
「すみません、ここは・・・。」
「・・・?」
首をかしげられた。もしかして日本語が通じないのか?どうしよう・・・。数秒黙り混んで考えた。そうだ、ジェスチャーならどうだ!谷野は下を指さして首をかしげた。それがなんとなく通じたのか手招きされたので着いていった。ジェスチャーはきちんと通じるようだった。手招きされ、着いていってる途中その人をよく見ると、若い女性で頭には猫耳・・・。
「猫耳!?」
びっくりしてつい声に出てしまった。猫耳の女性は気になってこちらを振り向いたが谷野は首を振った。猫耳の女性はまた前を向いて進み出した。よく見ると少し垂れているだけで尻尾もあるようだった。ここで谷野に1つの疑問が生じた。猫なら何故歩けるのだろう・・・。そんな考察をしていたら、猫耳の女性は急に止まった。考察をしている途中で下を向いていた谷野はぶつかりそうになったが足の爪先を使って止まった。向かった先は民家だった。どうやらその猫耳の女性の家らしい。猫耳の女性は鍵を開けて家に入ると、少し遠慮気味な谷野を見て、優しい笑顔で手招きをした。部屋に入ると猫耳の女性は、
「ごめん、ちょっと散らかっているね。」
と言って片付け始めた。谷野は遠慮気味に言った。
「そういうのはあまり気にしないので大丈夫ですよ。」
猫耳の女性は、
「気遣ってくれてありがとう。」
と言って片付けをやめて、椅子に座るように進めてくれた。谷野は椅子に腰掛けてあることが気になったので聞いた。
「あの、あなたの名前は?」
猫耳の女性は少し慌てた様子で答えた。
「あ、ごめんなさい!一応言っておきますね。私の名前は『アカネ・ハサナ』と言います。よろしくお願いします。」
谷野は自分だけ名乗らないのはいけないと思ったので名乗った。
「俺は『ヤノ タカシ』と言います。こちらこそよろしくお願いします。」
お互いの自己紹介を終えると、アカネは物入れから木のコップを出してバケツに汲んであった水を入れた。
「ヤノさんとりあえず水飲んでください。」
アカネは疲れているヤノを見てそう言った。その気遣いがとてもありがたかった。アカネは思いきった様子で言った。
「とりあえず落ち着くまでこの村にいてください。村長には私が言っておきますので。」
泊めて貰いたいのはあるが、このまで順調だと逆に怖かった。ただ、泊めて貰うほかないので今はそれに従った。ヤノはこの日、この国の言語について一通り教えてもらった。割と簡単で覚えられそうだ。
その日の夜の事だ。急に飛ばされまくった俺は、落ち着けず起きてしまった。落ち着く為に外の空気でも吸おうかと思って外に出た。すると、外にある長椅子にアカネが座っていた。俺は近づいてジェスチャーを混ぜながら言った。
「アカネ、隣座っていいか?」
アカネは座ったまま言った。
「なんだ、ヤノも眠れなかったのか。」
「まあな。」
とヤノは椅子に腰かけながら言った。ふとヤノは疑問になったので聞いた。
「アカネはなんでそんなに急に来た人に対して優しいのか?」
「あんたを見てるとなんか昔の仲間を思い出してさ、まあただの気まぐれだよ。」
アカネは意外な答えで返した。ヤノはなんだそれと思ったが、それが本当だとしても心配かけない様にする為なのかあるが、その優しい心がけに対しては関係なかった。まあ、こんなのを考えたのもただの気まぐれと変わらないのだが。アカネはヤノに質問した。
「ヤノ、この星綺麗でしょ。私は寝れない時とか、辛い事があった時とかにこうして座って見ているのだよ。ヤノは質問に答えた。
「それは羨ましいな。」
「あと、村長に相談したら今日どころか一年くらい居てもいいって言ってたよ。あの人お人好しだからそこら辺ほんとオーバーなんだよ。・・・ごめんなさいさっきからついタメ口になってしまいました。」
ヤノは慌てて答えた。
「あの、自分もタメ口にするからタメ口でいいよ。」
アカネは手を合わせて言った。
「ほんとありがとう!」
分からないことだらけだが、俺はアカネのお陰で一時の安心を得た。それでよかった。

続く

しおり