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No.37 あなた、本当に令嬢ですか??

「うーん、また失敗か……」
「姉さん、上手くいかないね……」
「ああ……」

デュエル当日の朝、厄介な死神メインキャラに気づかれないようにうちは義弟ルイと仲良く研究室(差し歯教室)で実験をしていた。
前世の知識をもとにアルミニウムを生成できないかと考え実際に行っていた。
前世で使われていたバイヤー法でアルミナを生成し、そのアルミナをホール・エルー法でアルミニウムを生産する。
要するに、採取してきたボーキサイトを処理し、アルミナという物質に変え、電気分解でアルミニウムを作り出すというものだった。
でも、それがなぜかこの世界(ここ)では出来ない。
失敗するばかりだ。
この方法を20回していたが成功することは1回なかった。
前世の知識をもとに作成したノートを開き、もう1度考え直す。
なぜだ……間違ったところは1つもない。

「姉さん、そろそろ準備しなきゃ。デュエルに遅れちゃうよ」

あまりにも集中していたため、時間を気にしていたルイが親切にも声を掛けてくれた。
何という優秀な助手。

「ああ、分かってる」

次こそは絶対成功するという自信があったが、感情は抑えて実験を中断しルイとともに自室へ戻った。



★★★★★★★★★★



約束の午前11時。
の30分前。
自室で着替えたうちはルイとメイドのティナとデュエルが行われる会場に来ていた。
その会場は前世の学校の体育館の形はあまり変わらず、2階には観客席があった。
強いて違いを述べるとしたら、基本的にデザインが西洋なところだった。
細部にまで装飾が施され、美しいデザインだった。
さすが王立学園と言うかな……。
その生徒専用訓練場を見渡していると、背後からコツコツという足音が聞こえた。

「どうも、アメリア嬢。今日は君との戦いがとても楽しみだよ」

クルリと振り返ると、めんどくさい今日の対戦相手、トマスがいた。

「あ、そ」
「君がまともに戦えるのか楽しみだよ」
「黙れ、ガキ」
「おいっ!!」

トマスが言いあっていると、ルイに腕を掴まれ引っ張られた。

「姉さん、さぁ、こっちに来て」

ルイはトマスのことは気にせず、アリーナを離れうちをある一室を連れていく。
仕方なくうちは大人しくしてルイの案内に従い、その部屋に入る。
その部屋にはパソコンが置かれたデスクとシングルベットがあった。
その部屋に入るなりルイはうちの腕を解放し、その代わり?? としてかうちの手を握っていた。

「ルイ、ここはなんだ?? 休憩室か??」

体育館をよく理解していないため問うと、ルイは迷いながら頷いた。

「それもあるけど……主は姉さんのデュエル会場。姉さんはこのベッドに寝転がり……戦うんだ」
「ああ、そうだったな」

あの乙ゲーの設定を思い出す。
乙ゲーの世界(この世界)の学園でデュエルを行う場合、実際の体を使って戦わず、魔力によって作り出された自分そっくりな魔体に意識・感覚だけを飛ばし戦うというものだった。
そして、意識がない自分の体はこの専用の部屋で寝かしておく。
おい、こんだけ魔法技術が進んでいるのならボーキサイトを簡単にアルミニウムに変えてくれよ。
朝の実験がうまくいかなかったことに腹立たしい感情を抱いていたうちは軽い舌打ちをする。

「姉さん、どうしたの??」
「ああ、なんでもない。ここに寝ればいいんだな」
「うん。目を瞑ったら僕に言って。アリーナの方に魔体を作って意識をそっちに飛ばすから」
「ああ、よろしく」

ベッドに寝転がり、目を瞑る。
すると聞こえていた音が変化し、先ほどいたアリーナにいるような感覚になる音が聞こえていた。
目を開けると、そこは観客席がいっぱいになっていたアリーナだった。
転送した後、正面にトマスが現れた。
彼は何度か行っているのか慣れているようで、冷静な様子だった。
身体に少々違和感があり、感覚を確かめるため自分の手を握る。
これ、スゲーな。
ほぼ一緒の感覚だ。
手をグーパーと動かし体の動かし方に慣れてきたうちは正面にいる対戦相手に目を向ける。

「さぁーてぇ、トマス。()り合おうか」

剣を握っているトマスはなぜかうちを訝し気に見ていた。
なんだよ、その目は。

「あなた、本当に令嬢ですか??」

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