No.36 お前がイジメとんじゃ、ボケ
「明後日のデュエルで無くしてやるよ」
「どういうことですか??」
大体察しがついていたようなゾフィーだが、確認のためか尋ねてくる。
本来の役職が悪役令嬢のうちは悪魔の笑みのまま説明してやった。
「お前の婚約者のトマスとうちでデュエルをするだろ?? そのとき、うちが勝ったらお前とトマスの婚約をなくすというのを提案しようと思ってんだ」
「え?? それってアメリア様がトマス様に勝つ前提でおっしゃってんですか??」
「ああ」
うちが自信たっぷりに堂々と答えていると、彼女はあ゛あーとうなだれていた。
「アメリア様っ!! トマス様のことご存じですかっ!? あの方は非常に強いんですよっ」
「あー、そういや誰かも言ってたな。そんなこと」
誰が言ったか忘れていたが、トマスが強いということは覚えていた。
「アイツ、そんなに強いのか??」
「ええ。学園のトップクラスに入るかと……実際トマス様は強い6年生の方とも交流なさって腕を上げております」
「へぇ……」
トマスを頭に思い浮かべたが、あのビジュアルからは強さというものを想像できなかった。
見た目で判断するな……か。
なぜか胸が痛む。
?
なんじゃ、こら??
得体のしれない胸の痛みに首を傾げたが、一時すると消えたためしっかりと前を向いた。
「まぁ、トマスがどんなに強くてもうちは大丈夫だ。気にすんな」
安心させるためうちはゾフィーに笑顔を見せる。
しかし、彼女は「そうですか……」と言ってより一層心配そうな顔をしていた。
「そこで何してんですの?? ゾフィー。あ……」
廊下を歩いていたであろうあのやっかい王女はこちらに気づいたのか、速足でこちらに歩いてくる。
めんどくさいサイネリア国の王女アゼリアはこちらを見るなり、隠す気もなくストレートに嫌悪の目を向けた。
「何してんですのっ!! 無礼女!! 私のお友達をいじめないでくだいっ!!」
あー、もう。
コイツと関わるのマジめんどいわー。
うちは呆れて長いため息を出すだけでなく、ダルそうな目でアゼリアを見ていた。
「うちは誰もいじめてないわ、アホ。さ、どっか行け」
言うならお前がイジメとんじゃ、ボケ。
「まっ、失礼なっ!! あなたなんて不敬罪で死ねばいいわ」
お前こそ、頭イカれている罪で死ねばいいわっ!!
その時、一時眠っていたサンディが目を覚まし、アゼリアを見るなりとんでもなく吠えていた。
嫌っているかのように。
敵かのように。
殺したいかのように。
物騒なオーラを放つサンディの勢いのあまりうちはバリアを張って、サンディがアゼリアに近づかないようにした。
「まぁっ!! 飼い主も凶暴であれば、やはりペットも凶暴になるのね行きましょっ、ゾフィー。あの女に関わらない方がいいわ」
と厄介王女が言いたいだけ言うと、2人はサンディの小屋の前から去った。
(ちなみにゾフィーは強制連行)
ゾフィーが帰ろうとしているとき、うちは最近使えるようになった近距離のみのテレパシーをゾフィーのみ伝わるようにした。
『うちはお前が自由に生きることができるよう、努力を尽くす』
モブまでが幸せにならないのは気に食わない。
『だから、今の間はそのままでお前はアゼリアを監視しろ。そして、うちに情報をくれ』
アゼリアが余計なことしないようにな。
ゾフィーにそう伝えると、理解できたのかゾフィーは厄介王女に気づかれないようにコクっと頷いた。
あの2人が去ったあと、バリアを解き、突然暴れだしたサンディを見つめ優しく撫でていた。
サンディは撫でられると冷静さを取り戻し、甘えた声で鳴く。
さっきのは何だったんだ……??
サンディが以上に
頭の中で情報を整理していたうちはサンディを優しく撫で抱き寄せる。
もしかして、サンディと
さらに疑問が浮かぶ。
一体、どこで??
次から次へと出てくる疑問に悩まされていたうちは4日後にデュエルを控えていた。