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No.29 またかよ??

「イベント見に行きたいんですけど、いいすか??」

うちは国王(おっさん)に日付を聞いた瞬間、今日のこの時間に本来のゲームでは何があるか鮮明に思い出した。
それはイベント。
乙ゲーをプレイする者にとって気が高まる重要な部分である。
確か……13時からあのイベントが始まるはずだ。
今日のイベントはフレイルートのやつ。
庶民出身のエリカは貴族ばかりで友達作りがうまくいかず、また、自分から積極的に話しかけようとするが、少人数しかいない主魔法を光魔法とする者であるため同級生から距離を置かれる。
その状況にエリカは心が沈み、中庭にある椅子に座り1人黄昏ていた。
そんなところにフレイが現れ、机を挟むエリカの向かいの椅子に座る。
フレイはあまりにもどんよりオーラを放っていたエリカのことが心配になり声をかけたのだ。
彼女はフレイと話していると、徐々に元気になっていく。
でも、周りで他の令嬢も見てんだよな。
例えば、悪役令嬢アメリアとか悪役王女アゼリアとか。
2人が楽しそうにしているところ、その様子が気に食わないどこぞの令嬢が2階からなぜか植木鉢を落とす。
謎過ぎる展開。
公式、無理矢理すぎるぞ。
植木鉢が落ちていく下には仕組まれたかのようにエリカが座っていた。
彼女が気づいたときにはもう植木鉢が落ち、思わず目を瞑る。
しかし、エリカがあたると思ったが何も当たらない。
痛みも感じない。
ゆっくりと瞼を開けると、目の前には植木鉢を受け止める氷が。
その氷はエリカをかばうように抱くフレイが生成したものだった。
そこから主人公エリカとフレイとの関わりが増えていくのだが、そのことは悪役のアメリアたちの怒りに触れた。
そして、アメリアのいじめは過激化するのだけれど。
ちなみに植木鉢を落とした令嬢はアゼリアの取り巻きであったが、最終的にこの主犯もアメリアにされる。
なんで全部アメリア(うち)に押し付けてくるんだよ、公式。
一回、公式をぶっ叩きたいな。
悪役令嬢アメリアにとっては最悪のイベントとなるが、エリカを守るフレイは(ゲームでは)かっこいい。
そのシーンを生で見てみたかったんだよな。
ん??
キャラに合わないって??
うるせぇ。
見たいものは見たいんだよ。

「ん?? イベントって?」
「あー気にすんな。ちょっと用事があるんだよ」
「行く前にちょっと待って。君に頼みがあるんだ」

その国王の一言でうちの心は快晴だったのに急に曇り始める。

「あ?? 何?? 早くして」
「えーと、君というかアメリア・トッカータがうちの息子フレイと婚約していて嫌だから仮病を理由に使って断ったのは知っているけれど……」
「けれど??」

さらに心の中は風が吹き荒れる。
嵐の前のような。
そんなうちの嫌々オーラを醸し出していると、ウィンフィールド国国王の苦笑いも酷くなっていた。
早く言えよ、もう。

「あの……もう一回というかアメリア・ホワードにフレイと婚約してほしいんだけど……」
「またかよ、バカ国王。当然やだわ」
「バカ国王って!!」

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