No.24 バイ〇ンマン社長みたいになるんだ
以前うちがプレイしたあの乙ゲーのシナリオを思い出す。
確か、フレイルートは基本悪役令嬢アメリアがエリカをいじめるというありきたりなものだった。
ゲームのアメリアはトッカータ王国の王女であった幼い頃にフレイと婚約をしていた。
しかし、アメリアが病弱と分かると親たちの判断により、破棄となった。
デブ王女アメリアはフレイ大好きっ子だったため、それはそれは悔しかった(らしい)。
なんとかして痩せ、スリムボディを手に入れたアメリアはフレイが通うことになると耳にする。
そして、彼を追いかけるようにウィスタリア王立学園に、自分の身分を詐称して入学。
でも、それは遅かったんだ。
入学前日の日に自分の寮に訪れたエリカは学園で迷子になっていたところ散歩していたフレイに出会う。
エリカは彼に案内してもらいつつ、話しているうちに楽しくなって、次の日また会う約束をする。
その時点でフレイも無邪気な彼女に少し惹かれていた(たぶん)。
入学の日、アメリアはエリカとフレイが仲良く話しているところを目撃し、エリカを目に付ける。
マジで、そっからのアメリアの行動がバカだったんだよな。
頭はいいのに。
アメリアはフレイや他の人たちに気づかれないよう初めは小さないじめからエリカにしていった。
しかし、とてつもない精神力を持つ主人公エリカはそんなこと気にすることはなく、大好きなフレイと距離を縮める。
アメリアは身分を隠しても公爵令嬢、エリカより身分は上である。
そこで、アメリアは元々なぜか仲が良かったウィンフィールド国国王に頼み込み、フレイと再び婚約。
しかし、エリカは一歩も引かず、フレイもアメリアには構わない。
そして、ある日、エリカに対し我慢できなくなったアメリアは海賊にエリカを
ああ、その海賊……女海賊がテウタだったな。
しかし、ゲームを進めていくうちに能力が高くなっているフレイ達(すでに友達になっていたルース、ルイ、ハオラン、クリスタ)はエリカを船で運ばれる前に助ける。
そして、フレイはテウタに主犯は誰か問いただし、アメリアと突き止める。
全てバレてしまったアメリアは奴隷制度を作っていたという理由もつけられてしまい、処刑となり死亡する。
無事邪魔婚約者が消えたエリカとフレイは婚約をし、そして、結婚。
うちは絶望を前に医務室のベットの上で頭を抱える。
これがフレイルートのトゥルーエンド。
バットエンドはエリカが奴隷になるか、死ぬかだ。
結局エリカが生きようが死のうが関係ない。
関係なしにアメリアは死ぬのだ。
しかも、それはフレイルートだけでなく、他の人のルートでもアメリアは死ぬ。
頭はいいのに、フレイという婚約者がいるのに、他のルートでエリカをいじめるってバカなの??
ゲームのアメリアはバカなの??
まるで、バイ〇ンマンじゃない。
頭のいいバイ〇ンマン。
しかし、頭にあんこがつまったあの妖精に喧嘩を売る。
バイ〇ンマン、あんなやつに構わず会社でも作ったら絶対リンゴ虫食いマークの会社と同レベにはなるのにな。
ゲームのアメリアも頭がいいから、そういう感じになれば良かったのに。
ん?
頭を抱えていたがちは顔を勢いよく上げる。
うちもそのバイ〇ンマン社長みたいになればいいんじゃないか??
絶対に主人公エリカたちに構わず、研究に専念すれば死なずに夢も叶えれるんじゃないか??
雲の隙間から光が見え希望を見つけたうちだが、ある人を思い出し顔が曇る。
悪役令嬢アメリアにはゲーム開始時点から近くに攻略対象者がいた。
義弟、ルイ。
アイツ、懐いたせいか何かとうちのところ来るんだよな。
それも嬉しそうに。
最近はルイに耳としっぽがあるという幻想がたまに見えていた。
ルイはうちに対して今は殺意があるとは思わないんだよな。
ゲーム内のルイは義姉アメリアといつも比べられ自信がなかった。
この時点で今の状況はだいぶ異なるがな。
義姉からいじめられ、彼は自分が生きている意味があるか分からなくなる。
そんなとき、主人公エリカに出会い、『誰にだって生きる価値はある』などと励ましの言葉を貰い、エリカに少し心を開く。
そして、エリカと関わるようになり次第に笑顔も取り戻し、ルイとエリカの距離は徐々に縮まってゆく。
やはり、悪役令嬢の役を持つアメリアは自分の義弟と庶民エリカが関わりを持つのが気に食わず、エリカをお茶に誘い、毒入り紅茶を飲ます。
エリカは毒に侵され一時期は意識を失っていたが、ルイが急ぎで作った解毒剤により、無事意識を取り戻す。
犯人が義姉と分かったルイはアメリアを山の中に呼び出し暗殺しようとする。
アメリアは抵抗したが、魔法能力では強いルイに殺されてしまう。
そして、数年後ルイはそのことを黙って、エリカと結婚する。
プレイヤーにとってはなんとも気持ちが晴れない。
しかし、公式ではこれがトゥルーエンドらしい。
めちゃくちゃだな。
でも、さっきも言ったが正直今の状況からこんな風になるとはとても思えん。
だって、ルイなんぞに負ける気がせんからな。
つまり、ルイとは関わっていい。
「よし、ルイ以外のメインキャラとは関わらない!!」
ギュッと握った拳を天井に向かってあげ、決意する。
「姉さん、僕がどうしたの??」
すると、いつの間にか医務室から退出していたルイがいた。
「なんでお前、勝手に入ってきてんだよ」
「え、姉さんが僕の名前を呼ぶのが聞こえたからさ」
この地獄耳。