No.12 聞いてないぞ、ティナ
「なぁ、ルース。お前、妖精と会話できるのか??」
ルースの意識は一瞬停止していた。
彼はうちの話し方の変化ぶりには驚いていたがなんで、僕らの能力を知っているんだ?? とでも言いたげな驚きの表情を見せていた。
兄と同様に妹クリスタも動揺していた。
「あの、アメリア様。なぜ、そのことを……??」
クリスタがそう聞くと、彼らの警戒心を出来るだけなくすため微笑んだ。
「姉ちゃんから聞いた。お前たちはヴァンパイアのクォーターであり、妖精のクォーターであることをな」
毒にやられて目覚めてから、ヒラリー姉に詳しいことを聞いていた。
あ、説教の前にな。
その時、なぜクルス家が襲われたのかをしっかり教えてもらっており、それでルースとクリスタの血が特殊だと知った。
「でも……妖精のクォーターだからといって、妖精と話せるという確証はないはず。どうやって……??」
アメリアは考えながら、ソファに座った。
隣に座るテウタは衝撃過ぎて口をあんぐり開けていた。
「うーん、そうだな」
うち、ルースとクリスタに妖精と話せる能力、それがあることを知ったのは……。
知ったのは……??
「勘だ。勘」
勝手に頭に出てきたんだもん。
うん、これは勘だ。
「はぁ?? 勘??」
ルースは信じられないのか、眉間にしわを寄せていた。
「あー。もうそれはどうでもいいから、本題行くぞ。お前らは妖精と話せるが、うちらは話せない。何かを交渉することもできないんだ。そこで、お前たちが仲介人をしてもらいたい。
アメリアは心の中でニヤニヤしていた。
そうすれば、通常人間には手に入らない物も入手できるし、妖精との交流をしやすくなるじゃないかっ!!
「はぁ……なるほど。それなら一定の顧客はいるし、しかも王女直属海賊が顧客だから、僕らに手を出しにくくなる。そういうこと??」
ルースはもうアメリアに対して敬語を使う気はなくなっていた。
全然、タメで構わないんだがな。
クリスタも。
「そうだ」
「うーん。どうせ、断ったって王女様相手だからダメなんだよね…」
「あ゛あ?」
ルースは苦笑いをする。
「ああ、やるって。じゃあ、詳しいことが決まったら連絡して」
その後、アメリアたちは少し話をし、クルス家を出た。その時、クリスタが何度も「また、お越しくださいねっ!!」と言っていた。
いやでも、仕事だから行きますよー。
そして、アメリアはテウタを家に送ると、サンディとともに王城に向かった。
★★★★★★★★★★
「アメリア様!! お早くお着替えを!!」
「はぁ??」
帰ったとたん、専属メイドのティナがそう言って服を脱がせ、新しいドレスに着替えさせていた。
「ティナ、今日パーティーなんてないぞ」
「えっ。アメリア様、ヒラリー様からお聞きになってないのですか??」
髪を結うティナがうちの顔を覗きこむ。
「ああ。なんにも」
「じゃあ、何も知らなくて大丈夫ですね。ヒラリー様が何もおっしゃらなかったんだし」
「何があるかぐらい教えろよ」
「行ってからのお楽しみです」
ティナはとんでもなく笑顔だった。
ティナに何があったのかあるのかは知らんが、うちに何が起きるのか教えてほしいもんだ。
そう思いつつも尋ねることはなく、うちはティナに言われるままに身支度をし、案内された部屋に向かった。
★★★★★★★★★★
「やっと、来たか。アメリア」
「遅かったねぇ」
部屋に入ると、姉たち、
フレイ……??
部屋の入り口で立ち止まっていると、フレイが近づいてうちの前で立ち止まった。
フレイの表情は非常に真剣な顔をしており、こちらをじっと見つめていた。
彼の頬は赤く染まっている。
めっちゃおこじゃん。
なにかしたっけ??
コイツをぶったりしていないはずなんだが……。
フレイに対し何かしでかしてないか思い出していると、彼は跪き手を差し出した。
「アメリア王女。突然ではありますが、私との婚約お受けしていただけますでしょうか??」
ん??
ティナ、これは聞いてないぞ??