ルアのが~~~~~~~~~~~い友達と…… その1
おでんが各地で好評です。
比較的人員が多いコンビニおもてなし2号店と、客の大半が立ち読み目的というコンビニおもてなし3号店では、僕が元いた世界でやっていたように、希望の品を希望の数取って容器に入れて販売する方式を導入しているのですが、どちらの店でも絶え間なくお客さんが並び続けているそうです。
おでんは、出汁を僕が作っておいて、それをそれぞれの店に大きな瓶に詰めて渡していまして、少なくなったらそれを継ぎ足して使用してもらっています。
で、具材も、加工した物を配布していますので、少なくなったら入れればいいだけになっていますので、誰でも簡単に作業出来るわけです。
で、そんなおでんの中でも特に人気なのは、海鮮を使用して作成している練り物です。
具体的には、ちくわ・はんぺん・ウインナ巻ですね。
で、これにゴボウもどきな野菜を巻いたゴボウもどき巻も追加したのですが、どれも人気で、だいたい最初に品切れになっている状態です。
その分、多めに作って配分しているんですけど、全然追っついていない状態です、はい。
で、ちくわの人気にあやかってちくわパンを各店で販売し始めたいなと思ってはいるのですが……今現在のコンビニおもてなしのパンを作成しているのはテンテンコウ♂1人の状態ですので、そんなに一気に生産数を増やせる状態ではないんですよね。
他の店舗で調理をしようにも、他の店舗には必要最低限の厨房しか備え付けられていないため、パン焼き用施設はないんですよね。
それに、パンを焼くとなると、それなりに手慣れてもらわないと……というのもあるわけです。
酵母を混ぜ合わせて粉を捏ねて、発酵させて……と、まぁ、色々な工程がありますんでねぇ……
まぁ、これに関してはすぐにどうこうなるわけでもありませんので、今後の課題かな、と思っています。
先日販売し始めた離乳食の方は、1食分の缶に入れる量が少ないおかげもありまして、すぐに全店舗で販売開始することが出来るようになりました。
3号店のある魔法使い集落なんですけど、ここに住んでいるのって魔法使いとその使い魔が99パーセントを占めているのですが……なかにいるんですよ、使い魔と仲良くなって、子供をもうけちゃう魔法使いさんが……
で、魔法使いの皆さんって、ほとんどの人達が魔法のことに没頭して生活していたせいで、子育てに関してはちんぷんかんぷんな人が非常に多いんですよね。
で、そんな皆さんに飛ぶように売れているのが、
魔女魔法出版発行『魔法使いの育児記録 著者ステルアム』
なんです。
スアが自分の子育ての記録を本にしているこれなんですけど、子供が出来ちゃった魔法使いさん達はこの本を参考というか、ほとんどバイブルにしながら頑張っているそうなんですよね。
で、この本の中には、
『つわりがひどいときは、コンビニおもてなしの『つわり軽減飲み薬』』
『体がだるいときは、コンビニおもてなしの『滋養強壮剤』』
とまぁ、いたるところでコンビニおもてなしの商品が紹介されてるもんですから、本を買っていった魔法使いさん達は超高確率で、後からそれらの品物を買いにやってきています。
先日発売されたばかりの離乳食の本や、離乳食缶もとてもよく売れているもんですから、僕も頑張って品切れしないように商品を作っていかないと、と、思っているわけです、はい。
◇◇
そんな感じで、相変わらずあれこれ忙しくしている僕のところにですね、
「店長さん、お久しぶりです~」
そう言いながら、ラミアのラテスさんがやって来ました。
ガタコンベの街からかなり北にある、オトの街に住んでいるラテスさんです。
「ラテスさんお久しぶり。今日は何か仕入に?」
僕がそう聞くと、ラテスさんは手の平を口元にあて、ニシシといやらしい笑いを浮かべました。
「いえいえ、風の噂にですね、親友で幼なじみのルアが子供を産んだって聞いたものですから、それを確かめにやって来たんですよぉ」
「あぁ、なるほど」
僕が納得して頷いていると、巨木の家につながっている廊下の方から
「なぁタクラ、悪いけど店のミルクを売ってくれないか?」
そう言いながら、ビニーを抱っこしたルアが歩いてやってきました。
最近のルアは、工房の作業の指示を一番弟子のパラランサに与えると、スアのいる巨木の家に遊びにくるのが日課になっています。
まさか、あの超絶対人恐怖症だったスアが、ルアとママ友になって子供を交えて時間を過ごす日がくるなんてねぇ……
てな具合で感傷に浸っている僕の目の前で、ルアは固まっていました。
「ら……ラテス……な、なんでいるのさ!?」
「そりゃ、ルアの赤ちゃんを見に来たからにきまってるでしょぉ」
ルアとは対象的に、満面笑顔のラテスさんは蛇の尻尾を素早く動かしてルアに歩みよっていき
「これが赤ちゃん? うわぁ、ルアそっくりねぇ、可愛いわぁ」
そう言いながら、その目をハート形にして見つめています。
その際に、ラミア特有の細い舌が何度も口元から出入りしているもんですから、なんかビニーがそのまま食べられてしまうんじゃないかっていう、別の心配をしてしまったり……なんてことを僕が思っているとですね、
「やぁだぁ、そんなことしませんよぉ」
ラテスさんはそう言って元気に笑いました。
いや、わかってはいるんですけどね……あはは……
そんなわけで、遊びにやってきたラテスさんは、リョータミルクを店で購入したルアと一緒に巨木の家へと向かっていきました。
今のルア工房はパラランサ中心にして作業の真っ最中ですし、その方がゆっくり話が出来るでしょうしね。
なんて僕が思っているとですね、よく見ると店の奥でヤルメキスがガタガタ震えながらすごい量の汗を流し続けていました。
……あぁ、そうでした……蛙人のヤルメキスは、ラミアのラテスさんが大の苦手なんですよねぇ……
で、ラテスさんも、悪気はないんですけど、ヤルメキスをいつもと違う目つきで見つめちゃうんですよね……いわゆる、捕食者の目とでもいいますか……
「て、て、て、店長さん。あ、あ、あ、あのラミアの方……い、い、い、いつまでおられるのでごじゃりましょうか……」
ヤルメキスは、ガタガタ震えながら僕にそう聞いてきたんですけど
「いやぁ……来たばっかだし、赤ちゃんが出来たお祝いに来てくれてるんだし……しばらくは滞在するんじゃないかなぁ」
僕がそう言うと、ヤルメキスはただでさえ青くなっていた顔をさらに青くしてですね、さらにガタガタ震え始めたのですが……すると、
「ヤルメキスちゃん、何かあったかい?」
そう言いながら、パラランサがすごい勢いで走ってやってきました。
僕はそんなパラランサを思わずびっくりした顔で見つめていきました。
「ぱ、パラランサ、いったいどうしたんだ?」
「い、いえ……なんか、ヤルメキスちゃんに何かよからぬことが起きたような気がしまして、いてもたってもいられなくなったんですよ」
パラランサは、真顔でそう言いながらヤルメキスに歩みよっていきました。
愛ですね、うん。
それ以外に説明出来る言葉がありません。
そんな事を思っている僕の目の前でヤルメキスは、真っ青な顔をしたまま
「ぱ、ぱ、ぱ。パラランサく~ん」
そう言いながら、その胸に飛び込んでいきまして、そのままガタガタ震えています。
「や、ヤルメキスちゃん……ぼ、僕が来たからもう大丈夫だから」
そう言いながら、パラランサってばヤルメキスをぎこちない手つきで抱きしめながら、顔を真っ赤にしていました。
なんていいますか、青春ですねぇ。
しばらく仕事になりそうにないヤルメキスを、パラランサに任せてルア工房へ一緒に行かせておきました。
最近のヤルメキスは、パラランサのところにしょっちゅう差し入れとしてお菓子を持っていってますので、工房の皆とも仲良しといいますか、公認といいますか……なので、まぁ大丈夫でしょう。
「あらあら、若いっていいですわねぇ」
そんな2人の後ろ姿を見つめながら、バイトの魔王ビナスさんは、その顔にうっとりした表情を浮かべていました。
「私も、旦那様と一緒にあんな風に……」
あ、なんか妄想入ったみたいで、魔王ビナスさんってば、頬を赤く染めながら天井を見上げ始めました。
……ビナスさんのすごいところは、こんな状態の時でも普通に接客出来ることなんですけどね。
さて、僕もお客さんが一段落したら、ルア達の様子を見に行ってみようかな。
僕がそんなことを考えていると、
「ここにルアがいるって聞いてきたんだけどさ」
そう言いながら、少し年配の猫人さんがコンビニおもてなしに入って来ました。