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べいべぇ、べいべぇ その2

 と、いうわけで、スア第二子妊娠確定です。

 僕 大 感 激

 えぇ、もう最高です。
 なんかもう、魔王どころか神様だって怖くないですよ、今の僕は!

 ……なんて言ってたら、神様がマジでやってきたりしないだろうな、と、つい後ろを気にしてしまう小市民な僕ですけど、何か?

「いやぁ、主殿めでたいでござるなぁ」
 朝ご飯のテーブルで、イエロが満面の笑みでそう言ってくれました。
「ホントに、私達も自分達のことのように嬉しいですわ……ねぇ、シルメール」
「はい、シャルンエッセンスお嬢様」
 と、2号店店長シャルンエッセンスと、店員であり元シャルンエッセンスの館のメイドだったシルメールをはじめとする皆も笑顔で僕らを祝福してくれます。
「ダーリン、スア様が身重の最中は、アタシが夜の相手を仰せつかってもかまわ……」
 セーテンが、そう言いながら僕にすり寄ってきたのですが、そんなセーテンの姿は一瞬にして消え去りました。
 僕の横でスアが手をかざしていますが……まさか魔法でセーテンをどっかにふっとばしたとか……
 ……あ、なんか川の方からセーテンらしい声が聞こえてきますけど、そのうち戻ってくると思うので気にしないことにしようと思います。

「しかしあれだなぁ、パラナミオにまた弟か妹が出来るんだなぁ」
 僕がそう言うと、パラナミオはちくわパンを頬張りながら満面の笑顔を浮かべました。
「はい! パラナミオはお姉さんですから、リョータの面倒も、産まれてくる赤ちゃんの面倒もしっかりみます!」
 そう言って胸をドンと叩きました。
 そんなパラナミオに、食卓を囲んでいるタクラ家の面々と、コンビニおもてなし寮の皆が一斉に拍手をしていきました。
 パラナミオは、そんな拍手を浴びながら少し頬を赤らめています。
 なんか、そんな姿も可愛いんですよこれがまた。

 そんなパラナミオと僕の間で、スアは満面の笑顔でリョータを膝の上に乗せてミルクを飲ませています。
 まだ自力お座りに若干不安定なところのあるリョータですが、そこはスアが魔法で支えているものですから全然危なげないんですよね。
 で、スアは以前リョータを妊娠中にひどいつわりに襲われた時期もあったのですが、その際の自分の体を参考にして、つわり解消飲み薬を開発していますので、そっちの準備も万端です。
 ちなみに、この飲み薬なんですけどコンビニおもてなしで、成分を万人に効くタイプにしたものを販売しているのですが、よく売れているんですよ。
 まぁ、この薬が僕の元いた世界で販売されていたら、下手したらノーベル賞物じゃないかって思ってますしね……いや、マジで。

「そっかぁ、スアさんは次を身籠もったのかぁ」
 巨木の家へ、ビニーを抱っこしたルアが遊びに来ました。
 コンビニおもてなしにいつも納品している武具や弁当の入れ物なんかを納品したついでなんですけど、なんか2人ともいいママさんな笑顔なんですよね。
 初めてあった頃のルアは、かなり男勝りでしたし……まさかこんなママの表情をうかべた彼女を見る日がくるとはねぇ……
「あ? タクラ、アタシの顔になんかついてる?」
「いえいえ、ママが2人で良い光景だなぁって思ってさ」
 僕がそう言うと、ルアは頬を赤く染めながら
「よ、よせやい。アタシだってこんなの柄じゃないってわかってんだからさ」
 そう言って照れまくっているんですけど、
「……でもさぁ、好きな奴の子供を産めるのがさ、こんなに嬉しいこととは夢にもおもってなかったよ」
 そう言いながら、フロント抱っこしているビニーの頬をこちょこちょしています。
 うん、ルアってばホント、ママの顔です。

 で、ルアなんですけど……胸は大きいのですが、なんかおっぱいの出が悪いみたいで、今のところコンビニおもてなしで販売しているリョータミルクこと粉ミルクのお世話になっています。
 で、ルアですが、つつつ、と、スアに近寄ると
「あ、あのさ、スアさん……これってなんか原因わかったりしないかな? 魔法で……」
 そう聞いていました。
 スアは、そんなルアの言葉を効くと少し困った顔をして首をかしげました。
「……おっぱい、個人差ある、の……原因を特定しにくい、の」
 そう言うと、申し訳なさそうな表情をうかべるスア。
 するとルアは大慌てしながら、その顔に愛想笑いを浮かべました。
「あぁ、ゴメンゴメン、無理言っちゃってさ。あぁ、もしかして、って思っただけさからさ、気にしないでよね」

 まぁ、そうですよね。
 もし、おっぱいの出が悪いのをなんとか出来るのなら、スア自身も自分のおっぱいがほとんど出ないのを、なんとか出来てるはずですもん……いや、確かに見事にストーンで絶壁な胸ではありま……
「……旦那様、なにか変な事、思って、ない?」
 そんなことを考えていた僕の目の前に、目を見開いたスアがいつの間にか近寄っていました。
「いえいえ、そんなスアも愛おしいと思っただけだよ」
 僕がそう言うと、スアは頬を赤くそめながら
「……なら、いい」
 そう言いながら、照れり照れりと体をくねらせていきました。

 うん、この姿も可愛いんだよなぁ、スアってば。

 さてさて、そんな赤ちゃん向けの子供用品もばっちり取りそろえているコンビニおもてなしです。
 粉ミルクにほ乳瓶、抱っこひもや折りたたみ式ベビーカー、おしゃぶりや積み木、最近では離乳食の試験販売も初めていまして、どれも好調な売れ行きなんですよね。
 といいますのが、この世界って、赤ちゃん関連の品物ってのがびっくりするくらいなかったもんですから、そりゃ作れば売れるわけですよ。
 しかも、コンビニおもてなしの場合、僕が元いた世界で実際に見たり聞いたり使ったりした品物をあれこれ試作してみて、それを実際にスアに使ってもらった上で試験販売に望んでいますので、評判が悪かろうはずがありません。
 で、リョータも徐々に離乳食に移行しつつありますので、僕もそっちの料理の研究に余念がないわけです。
 幸いなことに、おもてなし紹介を発足させて、

 テトテ集落からは新鮮な野菜を
 ティーケー海岸商店街からは新鮮な魚介類を

 それぞれ仕入れることが出来る状況を構築したばかりだったもんですから、思う存分あれこれ試すことが出来るわけです。
 ありがたいことに、テトテ集落で栽培されている野菜って、ガタコンベやララコンベの市場に出回っていない、この世界では珍しい野菜が多いんですよ。
 あくまでも『この世界では珍しい』だけで、僕的には懐かしい野菜が多いんですけどね。

 例えばほうれん草もどき
 例えば落花生もどき

 そんな野菜が多いもんですから、離乳食だけじゃなくて弁当のおかずや、コンビニおもてなし食堂エンテン亭の新メニュー開発にもすごく役立っているんです。

 そして、今まで入手どころか見ることもなかった海の幸の山です。
 これらは早速、弁当や惣菜パンの材料としてすっごく役にたっています。

 なんかなし崩しで発足することになったおもてなし商会ですけど、そのおかげで仕入面ですごく助かり始めているんですよね。
 ただ、ガタコンベに本店がある以上、ガタコンベの市場もないがしろにすることなく、共存共栄出来るようにこれからもしっかり利用させてもらおうと思っています。
 もう少し仕入が安定してきたら、市場におもてなし商会として出荷してもいいかもな、と思ったりもしているんですよね。まぁ、その時はテトテ集落として出荷してもいいかな、と思ってますけど。

 とまぁ、そんなわけで、あれこれ動きやすくなり始めているコンビニおもてなしです。

 そんな中で、今日の僕は、まずは離乳食の試作品作りから始めることにしました。

 えぇ、なんのかんの言いましても、リョータのために至急準備しておかないと、ですからね。
 家族のためなら、え~んやこら、ですともさ。

 僕は、手に持った包丁をご機嫌な感じで握り直すと、まな板の上の魚をさばき始めました。

 そんな感じで厨房で頑張っている僕の後ろに、スアがテクテクと歩いてきました。
「スア、どうかしたのかい?」
 僕がそう言うと、スアはニッコリ笑って
「……あのね……頑張って、パパ」
 そう言ってくれました。
 すると、スアに抱っこされているリョータが
「ぱぁぱぁ!」
 そう言って嬉しそうに笑ってくれました。

 この2人のおかげで、この後僕がすごい量の離乳食の試作品を作り上げたのは、言うまでもなかったわけです、はい。

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