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もう一人の秀長2

「秀長、もう大丈夫か?」
「ええ、もうすっかり」
 秀長が半月寝込んだ時に秀吉からお呼びがかかった。本人の秀長はまだ寝たきりだ。その間に服部が何人も忍びを送ってきた。蝙蝠が下忍を10人集めて警護している。影武者のために秀長の部屋を内密に隣の壁の奥に作った。ここは天井裏も床もない。ただ風通しだけはよい。
 ひと時挨拶を済ませ部屋に戻る。この秀長のために鼠を腰元として付けた。この部屋にも下忍を天井裏と床下に潜ませている。狗はふわりと床に降りた。秀長は見えぬように目を瞑ったままだ。
「胡蝶が動いている」
 狐の声だ。
「まだ懐妊の祈祷を始めてる」
「今度は誰だ?」
「大野治長と言う侍。最近茶々が秀吉を誘っている。これも胡蝶の仕業よ。秀吉を誘った後は必ず治長に抱かれる。それと天海が戻ってきている。京之助も一緒よ」
「天海が戻ってきたとなると秀次はもうすっかりはめられたと言うことだな?」
「秀長殿の様子が?」
「分かるか?影武者だ。まだ生きておられるが長くない」
 狐は黙っているがこれからのことを考えているに違いない。狗は狐は妹として育てられたが、もうすでに妻の様な関係になっている。
「最後の孝を尽くし山に戻ろうと考えている」
「元々山に捨てられた子だものね?」
 それだけ言うと気配が消えた。鼠が入ってきて秀長に、
「寧々殿のお呼びですが?」
と声をかける。秀長は目を開くと、
「疲れたので休んでいると伝えてくれ」
と言う。これは狗の意志だ。今は寧々は危ない。


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