もう一人の秀長1
秀長が大和の城内で倒れた。狗はすべてを封鎖して一室の周りを蝙蝠達に警備させた。
「狗、予てからの段取りをしてくれ」
「はい」
その夜城内の蔵から呼び寄せた。頭巾を被った男が蝙蝠に連れられて入ってきた。秀長は起き上がって背もたれにもたれる。
「そっくりだ」
これは1年も前からこの男を探してきて教育をしてきたのだ。
「秀長でござる」
「声色もそっくりだよく真似たな?」
これはお婆からくノ一に伝授された術だ。このくノ一もすでに大年増になっている。
「いえ、本人は秀長殿と思っております。だからこんなにも似るのです」
「なれば暴走しないのか?」
「私の操り人です」
現在戻ったそろりは狗の命で今の隠れ家を迷いの道に作り替えている。獣道を渦巻のようにして決してたどり着かないようにしている。秀長が亡くなったらすべてから攻撃されると予想している。だから秀長の考えに進んで従ったのだ。時間がいるのだ。
「殿下からお呼びが掛かったらこの男を出すのだ?」
「はい」
「狗はどうする?」
「私は行方不明のまま影になります。でもこれからどうしますか?」
「利休の次は秀次の仕置きだ。今のままでは秀次は黒田と家康の思いのままになる。止める方に回るわけにもいかぬな。天海はまた茶々を使うだろうな?」
「また子供を?」
「あり得る。茶々を見張るのだ」
これからは寝ながら秀長が指示をすることになる。