秀長11
くノ一の手配で腰元の控室から床下に潜る。揚羽の住む部屋にはここから近いらしい。でも潜っていくと至る所に服部の気配がある。完全に気配を消して揚羽のいる部屋の下に来る。覗くと裸の揚羽が自分の膣に薬を擦り込んでいる。これは狐も使う媚薬だ。芥子の花からお婆が採っていたのを見たことがある。
確かにこちらを振り向いた顔は別人だ。だが狐もこのような変装を得意としている。だが体を変えるのは難しいと言う。この体は揚羽のものだ。
ゆっくり襖が開き秀次が入ってくる。狗は顔を見て驚いた。秀長と一緒に会った時より極端に痩せている。
「綾乃、お前の体が忘れられない」
と言うなり体の中に入っている。どうも始める前に迎え入れるようだ。
「待っていましたわ」
揚羽は体に手を回して何度も腰を動かす。秀次が体を離した途端驚くような突き立ったものが見えた。ペニスからアヘンを吸っているのだ。これはもう病人だ。半刻もすると秀次は泡を吹いて倒れた。それを待っていたように襖が開いた。これは服部のくノ一だ。どうも気づかれたのか。狗は地面を走り抜け庭に出る。
手裏剣が飛んでくる。前から迫ってくる下忍を2人切り伏せて塀に飛び乗る。そこからまだ工事中の現場に滑り降り水辺に入る。後ろから10人以上が追いかけてくるのが分かる。その中に恐ろしく早い男がいる。足では負けたことがない狗だが追い付かれている。
鋭い手裏剣が肩に刺さる。
「狗か?ここで討ち取ってやるわ」
これは半蔵のくぐもった声だ。同時に横に撥ねる。それを見越したように半蔵の剣が狗の覆面を切り取った。だが狗も持っている剣を投げつけた。瞬間半蔵は顔をよけた。その瞬間に湖に飛び込んだ。