秀長10
北条があっけなく敗れた。この頃から石田三成一派と武闘派の加藤清正らと揉め事が絶えなかった。
「狗入れ」
秀長が秀吉のところから戻ってきて声をかけた。
「なぜあんなに揉めるのか?」
これはつぶやきだ。
「三成は漠然と茶々の子が自分の子であると思っています。これは胡蝶が敢えて吹き込んだものと」
「どうしてまた?」
「これは天海の作戦かと思われます。これからは秀吉殿は外敵ではなく内紛だろうと」
「そうだな。それと気にしていたことが起こりそうだ。秀次の悪い噂が殿下の耳に入った。本当のところを調べるのだ」
八幡山城の秀次にすでにくノ一と年寄りを入れている。狗は夜のうちに走った。すでに年寄りには繋ぎを入れていて旅籠でくノ一と会うことになっている。城下に入るところで8人の服部に襲われた。明らかに狗だと分かって切りつけてきた。
「騒がしいな?」
くノ一が旅籠の天井裏から話す。
「服部が少なくとも50人ほど入っています。秀次の乱心は服部が仕掛け噂を振りまいています」
家康は秀次を担ぐ方だが?
「それがくノ一として揚羽が入っているのです。巧妙な変装で初め揚羽とは分からなかったのですが。先日黒田の軍師が来て会ったのです」
黒田が揚羽を送ってきたと言うのは家康と裏で手を結んだか。黒田も最近は秀吉から遠ざけられている。今はほとんど秀長と千利休が相談相手だ。今は息子黒田長政の方が前面に出ている。
「揚羽はすでに寝たのか?」
「はい。連日秀次が忍んできています」
秀次も終わりか。