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お持ち帰り

「起きた?アクトくん」

次の日の朝起きると賢者の塔にはアンが居た。

「あ、あれ?」

寝ぼけ眼で起きる僕にアンは

「朝食、作ったよ?」

と当たり前のように言った。



し、幸せすぎて不安になるんだが、昨日僕はアンちゃんを塔に連れ帰ったのか?

そのあと、まさか手を出してたりして。

「昨日のアクト君は素敵だったよ?」

え。

「僕何かしたかな?酔ってたせいか思い出せないのだけど」

「ふーん、アクト君はあれをなかったことにしたいんだ?」

と機嫌が悪くなるアンちゃん。

「い、いや。そういうわけじゃなくて」

僕はアンちゃんに何をしたんだ?



「そのぉ。また昨日の夜みたいなことしても怒らない?」

とビビりながら探りを入れてみる。

「へんな人」

と言ったあとアンは。

「エッチ」と言った。



え、エッチ?僕まさかアンちゃんと最終段階まで行っちゃったわけ?

僕は布団から飛び起きたせいで下半身の健康さをアンに誇示していることに気づいていなかった。



テンパった頭で言い訳を探す。

「ご、ごめん」

とりあえず謝ることしかできない僕。

「コラ、謝るな!……男の子なんだから、男らしく自分のしたことを認めなさい」

叱られてしまった。これは僕「したんだな」アンちゃんと。



「ごめん責任はとるから」

「ふーん、じゃ指輪頂戴」

指輪、指輪といえば、あれだ。ネクロマンシーの指輪がいいかな?あれは5千万グレアはくだらない魔法の品のはず。おまけに死者の霊と話せるという曰く付きの能力がある。



「かしこまりました、こちらで如何でしょう?」

とドクロマークがあちこちについたキモい魔法の指輪を差し出す僕。



「5千万グレアをくだらない魔法の指輪でございます!」



なんだか知らないけど、彼女の機嫌が悪くなったのはわかった。

しばらくの沈黙のあと。

「はぁ。これだからなぁ……」

と嘆くアン。

「死者と話せる魔法の指輪ではお気に召しませんか?」

と尋ねる僕。

「からかっているの?バカ」

「だ、だって。僕が持っている中で最高のマジックアイテムなのにっ」

「あのねぇ……」

「だって僕、アンちゃんに迷惑をかけたみたいだし」

「迷惑だなんておもってないよ?素敵だった、っていったんだけど。今朝のアクト君は最悪」

「じゃ、これもつけるから!」

と言って差し出したのは花束。この花は薬草で煎じて飲めばどんな病気でも治るんだ。

「え、素敵!見たこともない綺麗な花。キラキラ光っている!」

「うん、しかも、この花は枯れることはないんだよ。永遠の愛という花言葉なんだ」

永遠の愛による看病は病を治すって意味でね。



「ごめんね、アクトくん。ちょっとズレているけど、誠意は伝わったよ」

しばらくの沈黙のあと彼女は

「プロポーズありがとう。花束受け取らせていただくね」

と続けた。

「ど、どういたしまして」

僕の頭は完全に混乱していた。プロポーズなんて恐れ多いことをするつもりはなかったのだ。



「そ、その、もう一度言ってくれるかな?」

彼女の言葉は衝撃的すぎて、僕の脳は意味を処理することができなかった。



「結婚しても良いっていったのよ?バカ」

「!!」

結婚!僕がアンちゃんと結婚。

「昨日、酔っ払って。散々私にずーっと好きだと思ってたことを白状してたじゃん」

とアンは言う。

「そ、その心の準備が……」

まさか酔ったのに任せて「世界一のビッチ」のくだり言ってないよな?



「もうお嫁にいけない体にされたんだから、責任とってよね?」

やっと状況を理解した僕。

「ありがとう!本当にありがとう!」と言って僕はアンちゃんの手を取って喜んだ。

十年越しの再会でまさかいきなり恋が実るとは思わなかったな。



で、青ざめる。まさか嫁をあいつら勇者と聖女の御一行に納品するわけにはいかないだろう。新たに候補を探さないとだめだろうか?

とりあえずアンを聖女として紹介するのは止めよう。



「まずはブレイに会いに行こうか?」

「賛成!でも結婚指輪がコレじゃ、楽しみ半減だから。もっと夢のある指輪欲しいな?」

アンはニッコリと微笑み。

「アイツに見せつけてやろうねー」

と言った。



僕は旧友に事情だけでも聞きたいと思ったのだ。なぜ、ブレイはアンちゃんと付き合っていたのに浮気なんてしたんだろうか?

なぜ、アンはこんなにあっさり僕との結婚を認めたのか?

僕はわからない事だらけだった。

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